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もの憂いげな純情 21

でも、怖さが残る。いや、恐怖しかない。 試してみて駄目だったら? 本当の自分を知られて、そしてゲイの世界を知り進んでいけば、和臣は離れてしまうんじゃないかって思うからだ。 やっぱり男だから無理と言われて、それを受け入れられる自信がない。 でも長年見続けてきた夢が目の前にあって、手を伸ばさない人もいないと思う。 顔を上げてまっすぐに和臣を見た。 沈黙は肯定と受け取った和臣が、にっこりと笑ってゆっくりと俺の体を引き寄せる。 「陽斗。目、閉じて……」 心地よく響く声に促され、そのまま従うのも恥ずかしくて、堪えかねて俯きながら目を伏せた。 「陽斗って睫毛長いね」 いちいち言葉にするのはやめてくれ。 それだけでさっきから心臓がバクバクと音をたて苦しくてたまらない。 すると和臣は、俯く俺の両頬に手を当てて俺の顔をあげさせた。 そして目を細め優しく微笑みながら、ゆっくりと引き寄せられて……目を閉じた。 そっと唇が触れてきて、温もりと同時に痺れたような快感が駆け抜け思わずびくりと肩が跳ねる。 初めて感じる柔らかい感触と人肌のぬくもりが温かい。 もっといやらしいことだって沢山してきたし沢山知っているのに、ただ触れるだけの唇がどうしてこんなに気持ち良いのだろう。 泣きたくなるくらいの幸せって、あるんだな。 そして柔らかい感触を感じながら和臣の唇が軽く開いて俺のを吸い、啄むようにして離れた。 目が合った瞬間。 和臣以外の全ての世界は透明に見えた気がした。

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