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もの憂いげな純情 30

「まっ平らな胸見たってどうってことないだろ? 同じ男なんだからさ」 「…………」 上半身なんて普通に着替えでも見ることがある場所だ。 しかし、視線をそらしたまま和臣は何も言わない。 何も言わずにチラチラとこっちを見るだけで基本俯いて苦い表情を浮かべる和臣を見て、予想した通りだという思いと、落胆する気持ちが混在した。 やっぱり、想像と現実は違うだろ。 男なんだと改めて理解すれば、気の迷いだったと思うはずだ。 さっきまで熱いくらいに熱を帯びていた頬が一気に冷めるのがわかった。 結局は何をどう調べたところで本物を見たらその気すら失うんだ。 胸でこの態度なんだから、ズボンを脱げば……完全に萎えるんだろう。 「わかっただろ? 想像と現実は違うんだよ」 それでもなお沈黙を続ける和臣に、もう完全に終わりだと思いながら立ち上がる。 服を着ようと和臣に背を向け、床に落ちたシャツに手をかけたその瞬間……。 ──その腕を掴まれた。 和臣の爪が皮膚にめり込むのが痛みとして伝わる前に、視界がぐるりと反転する。 「痛ッ……」 勢いのまま後ろのベッドに倒れ込み、何事かと見上げた和臣の顔は……。 見たことないくらい男の色香を帯びていた。

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