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もの憂いげな純情 31
でもその声はなぜか不安定に掠れていて、震えながら俺の名前を呼ぶ。
「陽斗……」
和臣はそっと手のひらを俺の胸に這わせ、肌の感触を確かめる様になぞってきた。
そんな予想外の展開に慌てたのは、今度は俺の方だ。
「ちょ、ちょっと、和臣」
「陽斗の肌、気持ちいい……」
「いや、そうじゃなくて」
混乱しながら胸を押し返すと、俺を見下ろす和臣と目があった。
その視線が絡み合った瞬間、何か逃げられないような感覚に陥る。
蛇に睨まれたカエルってこんな気分か?
まるで金縛りにでもあったみたいに体が動かず、雄々しい眼差しに生唾を飲み込む俺に、和臣は「もっと触りたい……」と言った。
「ちょっ……待ッ……んッ……」
俺の返事も聞かぬまま、両腕を掴んでしつこいキスをしてくる。
唇をこじ開けるように和臣の舌が咥内に侵入し、顔を背けて逃げようとするも許されず。
貪るかのように吸われ、噛まれて、舐め回され、それはすこし乱暴だったが体の中心から痺れるようなキスだった。
「ん……ッ……」
やがて舌が銀色の糸を引き、息も絶え絶えでやっと解放されたかと思っても、和臣の眼差しはまだ熱っぽいままで。
「なぁ、他も触っていい?」
そう俺に許可を求めるくせに、その返事を聞くまでもなく、また体に手を這わせていった。
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