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もの憂いげな純情 46
俺は、はぁっと大きなため息をついた。
そのため息にびくっとしながら俺の様子を窺っている和臣は、不安げにこちらをチラチラと見てくる。
そんな姿に弱い俺は、もっと問題だ。
怒っている素振りは見せたものの、本当はさほど怒ってはいない。
リスクなんていうのも、俺だって医療従事者なんだからよくわかっている。
けど、和臣の熱を知ってしまった。
力強さも、肌の温もりも。他にもたくさん。
体の奥からマーキングされるみたいな行為は今まで体験した何よりも強烈で、より和臣が特別だってより感じてしまったんだ。
すると、また和臣が「ごめん」と謝ってきた。
「和臣だけなんだからな……」
「え?」
ぼそっと呟くと和臣が驚いた顔をして顔をあげる。
「……和臣しか、許さないから」
言ってる傍から恥ずかしくなって俯くと、ふわっと和臣の手が俺の頭を撫で、そして抱きしめられた。
「俺だけ?」
「…………」
恥ずかしくて何も言えない。
「俺だけってことは、またしてもいいの?」
「…………」
俯いたままの俺をみて和臣がクスクスと笑った。
さっきまで落ち込んでたくせに変わり身の早いやつだ。
「陽斗。いいの? 俺、つけあがるけど」
「…………」
「陽斗の方こそ医療従事者と思えない発言だな」
「……うるさいな」
ちらっと顔をあげると、和臣は目を細めながらこっちを見ていた。
体はまだ熱が残っているけど、なんだか夢みたいでやっぱり信じられない。
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