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恋しく慕わしい 19
優しい表情とは裏腹に否定的な言葉で、拒否されたのかと少し眉を寄せると和臣は違うと言う。
「俺は、俺だけ幸せならいいとか嫌なの。今まで俺は陽斗の優しさに気付かずに頼ってばっかだったからさ。今度は陽斗と一緒に幸せになりたいの」
だから、そうなろうね。って呟きながらまた俺の唇を塞いだ。
今度は、返事をしたいのにできないくらいの深いキスで。
「んっ……ッ……」
身体中の力が抜けていって、逃げようとしても和臣の舌が絡まり吐息が漏れる。
「……ッ……ふっ…」
絡み合った舌が糸を引きながら唇が離れれば和臣が笑みを浮かべた。
「やっぱキスすると可愛くなるな」
「……それ、恥ずかしいから言うなって」
口の端から垂れた唾液を手で拭っていると、その手を掴みながら和臣は「ごめんね」って笑い、また啄むようなキスを落とす。
そして悪戯っぽく笑う和臣は俺を抱きすくめるようにして、俺の肩に顎を乗せながら言った。
「陽斗。気付くの遅くなっちゃったけどさ。本当に今、陽斗が腕の中にいることが自然だって思えるんだ」
「俺は、この状況にまだついていけてないけど」
「そうなのか? 俺は、この上なくしっくりきてるのに?」
和臣は少しむくれながら笑うけど、しょうがないじゃないか。
俺は今までの人生の大半を不幸だと思って生きていたんだ。
いきなり幸せを感じたとしても、その幸せに慣れるのにだって時間がかかる。
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