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偏愛ロジック 3

営業の成績はいつものように順調だし、同僚との関係も良好だ。 趣味にいそしむ時間だってある充実した毎日。 弱ってるなんてオレらしくないなと思いながら屋上のフェンスを背にして空を仰いだ。 「先輩……オレ寂しいよ」 少し前の失恋を引きずるくらいに寂しいと正直に口に出してしまえば、少しだけすっきりする。 そして、軽く目を閉じて心の中でつぶやいた。 “好きだった人はね、先輩と同じ目をしてたよ” 世界が終わったような、悲しい瞳。 それがもの凄く綺麗だと思ったんだ。 ───…先輩と出会ったのは、14歳の時。中学2年の夏の終わり頃だったと思う。 あの頃、オレはゲイであることを自覚したばかりだった。 自分は人と違うことを誰にも言えず、それでも普通の顔をしながら生活しなければならなくて。とても息苦しくてたまらなかった。 ある日それは今にも爆発してしまいそうなほどオレを圧迫して、どうにか新鮮な空気が吸いたい一心で無意識に向かった屋上は、いつもは開いていないドアの鍵が開いていた。 恐る恐る開けて外に出てみると、そこには誰もいなくて広い空だけがどこまでも広がっていた。

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