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偏愛ロジック 5
それからオレは時間ができると屋上に行くようになった。
先輩は大概いつもそこにいて、いろんな話をした。
先輩は独特な感性を持っていて、それはオレが思いも付かないことばかりで、先輩と喋ることにいつの間にか夢中になっていた。
「先輩の頭の中ってどうなってんの? オレは今までそんな風に考えたことなんてなかった」
いつものようにキラキラと目を輝かせて話を聞く俺に、先輩は微笑んでいたけど何故か寂寥感を漂わせながら言ったんだ。
「河北。俺にはさ、世界は終わって見えるんだよ」
「……え? どういうこと?」
すると先輩は遠くを見ながらうら悲しげに呟くように言う。
「色がないんだ」
「色が……ない?」
「楽しいと思うことや、悲しいと思うことも実際はよくわからない」
「でも、先輩は笑ったりするじゃん。確かに微笑む程度だけど、それでも笑うじゃん。それに今は悲しそうにしてるよね。表情と感情は繋がってるものだろ?」
先輩は静かにかぶりを振った。
「俺にとって表情に出るような気持ちの変化って僅かなことで。今までに心から楽しいと思ったこともないし、河北は今俺が悲しそうだと言うけどさ。実際そうなのかもしれないけど俺自身は何も感じないんだ」
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