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偏愛ロジック 6

言っている意味がよくわからなかった。 感じないって、何? 先輩は人とは違う哲学的な考えや感性を持っていて、たまに理解が難しいこともあった。 オレはいつもそれが新鮮に思えて楽しい。 でも、面と向かって楽しいことがわからないと言われると、沸き起こって来たのは言い様のないジレンマで、ひどく裏切られた気がした。 「オレと話すの……嫌ってこと?」 「そんなこと言ってない」 「でも、楽しくないって言ったじゃんか! それってオレといても楽しくないってことだろ!」 沸き上がってきた感情まるごとの怒声をぶつけるだけぶつけて、その日はそのまま逃げるように走り帰ってしまった。 ひどくショックだったんだ。 先輩と仲良くなっていると思っていたのに、独特な考えを持っていたり、考え付かない発想ができる先輩と話が出来て仲良くなれてオレはこんなにも楽しかったのに。 先輩にとっては何も感じない時間だったのだと言われた気がして。 無性に腹が立って枕を壁に投げ付けて、ため息と共に涙が零れた。 溢れる涙を乱暴に拭いながら、胸が苦しくてたまらなくて。 でも世界が終わって見えると言っている先輩の目があまりにも綺麗で、裏切られたって思っているにも関わらず思い出す度に胸がドキドキしてて……。 そのとき、“あぁ。先輩のことが好きになってるんだ”って自覚した。 自覚すれば、また更に涙が溢れて、その日はよく眠れなかった。

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