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偏愛ロジック 10
事故のような形で気持ちを伝えることにはなったけど、それからも先輩は変わらずに接してくれていた。
返事とかはなかったけど、それでも先輩と過ごせるだけで満足で、近付く先輩の誕生日を楽しみにしていた。
でも、そんな幸せに見えた日々は突然終わりを告げられることになる。
──先輩の誕生日前日。
いつものように屋上に行った。
「先輩、明日誕生日でしょ? お祝いしようよ」
でも先輩はかぶりを振った。
「なんで? あ、家族と用事あるとか?」
色々聞いても先輩は何も言わない。
そして、ぽつりと言った。
「明日からは屋上に来ない」
抑揚のあまりない声、表情が乏しい先輩から真意を読み取るのは難しく、いきなりの宣言にとまどってしまう。
「どうして!? もう来ないの?」
「来ない。だからここに来ても、もう俺はいないよ」
「オレ、何か怒らせるようなことした?」
「違うよ。ただ、もうここには来ないんだ」
「じゃあ、今度はどこで先輩と話したらいいんだよ」
するとにっこりと先輩が微笑んでオレのことを抱き寄せた。
びっくりして、思わず体が強ばると耳元に先輩の息が吹きかかる。
「河北。これは決めてたことなんだ」
「な、なんで?」
目が合うと、先輩は目を細めた。
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