「どうしよう。どうしよう」と独り言を言いながらオロオロしている真壁を見ていると、どうしようもなく苛めたくなってきた。 「行かないのか？ じゃあ、やめるか」 「い、い、行きます！ お酒弱いんですけど行きます！」 ふせぎ込んでいたけど、少しだけ気分が軽くなって浮上していた。 それどころか面白そうな玩具を見つけて良い気分だ。 「オレ、酔うとキス魔だよ」 酒に強いから酔っぱらうとかないけど、また焦って更にどもったりするのかなって思いながら言ってみると。 今度は「…………キス」と、思い詰めたような表情になるから、真に受けるなよと思う。 「キスくらいしたことあるだろ？」 すると、静かに「ないです」と答えが返ってきた。 「恋人とかいなかったのか？」 「……はい」 まじかよ。年齢の割になかなか初々しい反応だとは思ったけど、ここまでテンプレだとは。 「お前さ、オレのこと好きって言ったじゃん」 「はい」 「男が好きなの？」 「わかりません。男性で気になったのは河北さんだけなんで」 「なんでオレなの？」 すると真壁は俯いたまま呟くように言ったんだ。 「河北さんはキラキラ輝いてるのに、寂しそうで不思議でした」