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純情オレンジ 4
夕焼けが鮮やかで、またそのオレンジ色の中で陽斗が蛇口の下に頭を入れて水浴びしていた。
そして頭を振って水を払い、今度は上向きにした蛇口から水を飲む。
弧を描いて流れる水にゆっくりと顔を近付けて、陽斗の赤い唇が少しだけ開いて舌が見えた。
そして、前かがみになった部活のユニホームであるランニングシャツの脇の隙間からちらっと胸が見えた時……。
思わずドキッとして立ち止まってしまった。
初めて色気というものを感じたような。それでいて、見てはいけない秘密の部分を見てしまったような、とにかくドキドキしていた。
中学1年だった俺にはただ単純にエロいって頭によぎったけど、これから友達になりたいって思っている相手にそんな想像してしまったことに罪悪感に似た感情が芽生えてかぶりを振った。
ただ水を飲んでるだけだし、相手は男なのにこんなに綺麗なんてどういうことだって。
すると俺に気付いた陽斗は、立ち尽くす俺をただ睨むだけで立ち去ってしまった。
きっと陽斗は覚えてもいないと思うけど。
あの時、陽斗がこれだけ綺麗だったら、もし陽斗に姉か妹がいたらものすごい美人だろうと思って2年で同じクラスになったときに速攻で聞いたのを覚えてる。
あいにく、一人っ子だという答えに撃沈することになったんだけど。
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