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純情オレンジ 7
ポリクリも終盤。
少し遅い昼休みにコーヒーでも買おうと思って院内に併設されているコンビニに向かった。
その帰りに今はあまり会いたくない男に声をかけられる。
「あ、千葉くん。久しぶりだね」
そう言って声をかけてきたのは、MRの河北さんだった。
「こんにちは」
「あれ? 元気ないね。陽斗に振られたの?」
「振られてません」
「なになに? 悩みならお兄さんが聞いてあげるけど」
いらないと言ったにも関わらず、河北さんは上機嫌で俺の手を引いて病院の中庭の方へと向かう。
そして、人もまばらな午後の中庭の日当たりのいいベンチにコーヒー片手に座った。
「……河北さん、よくうちの病院に来てるんですか?」
「営業先だからね。まずまずの頻度で来てるとは思うけど、陽斗には会ってないから安心して」
「別にそういうことを気にしてるわけではないんですけど」
すると河北さんはクスクスと笑いながらコーヒーを一口飲んだ。
この人に初めて会ったときはすごく喋りやすい人だと思った。
薬の営業だということもあって興味深い話も聞けたし、印象は凄く良かったんだけど。
高校時代から陽斗とは知り合いで、しかも深い関係だったことも知っている今は複雑でもある。
すると河北さんはコーヒーを飲みながら俺に視線を向け、目が合うなり何故かあからさまなため息をついた。
「なんだよー。千葉くんさー、陽斗と付き合ってるんだろ? 今が一番ラブラブな時期だと思って冷やかしてやろうって思ってるのに、なんでそんな湿気た面してんの?」
「湿気た面なんてしてないです」
核心をつかれたような気がして一瞬ドキッとしたが、顔に出さないように気を付けながら言い返すと河北さんは含みのある笑い方をした。
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