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純情オレンジ 10
結局、肝心なことは何も聞けないまま河北さんは仕事に行った。
俺は少しそのまま中庭で呆然としていたけど、ぼんやりしていても落ち着かないので、休憩時間はまだ残っていたけどそのまま戻ることにした。
実習現場である内科病棟に戻るまでの間、考えてしまうのは陽斗のことばかりで。
思った以上にショックだった。
陽斗がどうこうということより、自分にだけ淡白な態度だったということが。
飽きられた? 愛想を尽かされてしまったんだろうか?
思い当たる節がないわけでもないのも確かで。
俺は昔から何かを真剣に取り組めば取り組むほどに誰かといることが煩わしくなってしまうところがある。
それで今までの彼女とは別れる原因にもなっていたんだけど、陽斗だけはどんな時も近くにいてくれたし、俺自身も陽斗が近くにいることは煩わしさも感じず、むしろ落ち着いていて。
だからこそ、俺と陽斗はうまくいくって思っていたんだけど。
それは独りよがりだったということか?
『やっぱりいざ付き合ってみると、なんか違ったんだ』
思わずそんな想像までしてしまい、かぶりを振る。
陽斗にも俺、愛想を尽かされちゃったのかな。
あのセックス好きだし発言は本当で、原因は俺?
考えれば考えるほどに深い闇に落ちていくような不安な気持ちが広がる。
初めて、勉強に手が付きそうにない状況に対面し、頭を抱えながらもなんとかその週の実習を終えた。
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