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純情オレンジ 17
あまりにも大きな声を出したことで驚いたのか、陽斗は目を丸くして俺のことを見ていた。
その瞬間、一気に熱が冷めていく。
「大きな声出してごめん……」
陽斗はゆっくりと頷くと顔を上げた。
真っ直ぐに俺を見る目をみて、やっぱり綺麗だなぁって思う。それと同時に、やっぱ好きだなぁとも思った。
失いたくないなぁ。
「確かに、俺は切羽詰まると周りがみえなくなるとこがある。今だって毎日大変だし、たまに辛いときもある」
陽斗は目を逸らすことなく俺のことをじっと見ている。
「でも、俺が頑張れるのは陽斗との約束のおかげだし。前にも言ったけど、どんなに忙しくても陽斗だけは特別だったって。抱きしめるだけでも、いや少し触れるだけでも、俺の疲れなんて吹っ飛ぶんだ。だから俺は陽斗に会いに来てるんだよ」
俺が言い終わると陽斗は少し恥じらうように俯いた。
こんな控えめでいじらしい態度だって大好きだ。
「陽斗、抱きしめたいし、キスしたい。俺だってこんな気持ち初めてなんだ」
俯いたままの陽斗は俺のシャツを握りながらもそのまま動こうとしない。
「陽斗? やっぱ、俺うざい?」
あまりにも何も言わない陽斗に、今度こそ愛想尽かされてしまっただろうかと、少し青ざめていると陽斗がぼそっと呟いた。
「……俺、和臣が思っているように綺麗じゃないよ」
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