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純情オレンジ 19
「それなら俺だってやらしいよ。陽斗のせいで欲求不満なんだから」
すると悲痛な面持ちの陽斗は目を伏せた。
「それだけじゃない。ノーマルなお前をこっちの世界に引き込んだんじゃないかって負い目もある」
「俺が陽斗といることを選んだのに?」
陽斗は力なく頷いた。
「人に言えないし、結婚も出来ない。俺は和臣に社会的な信用を何もあげられない。……そのせいで、仕事や生活に支障を与えるんじゃないかって不安なんだ」
陽斗の肩が小刻みに震えていたから、手を引きながら体を起こしてそのまま力強く抱き締めた。
「俺は医者になるんだ。腕一本で食べていける。そうなるように絶対に努力する! それは陽斗も同じだろ? それに俺はしがらみの中で生きていくつもりはないし、陽斗さえ良ければどんな小さな医院でも構わない。陽斗と作れたらそれがいいんだ」
俺の背中に回された手に力が入り陽斗がゆっくり顔を上げた。
「……ほんとに、いいの?」
「陽斗と一緒にいれたらいい」
その瞬間、腕の中にいる陽斗の表情が解れていく。
俺たちは、変なところですれ違って、お互いに臆病になっていたんだな。
お互いに失いたくない一心だけで。
陽斗の頬を撫でると、陽斗は俺の手を取って優しく口づけた。
「和臣……」
妖艶な眼差し、掠れた声。
言いたいことはたくさんあったのに、もう何もかも飛んでしまう。
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