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純情オレンジ 33

今まで見逃していた仕草や表情も、もっと知りたい。 それにこれからも余すとこなく、全部知りたいと思う。 もっと一緒にいたいなぁ。 「あー、陽斗と一緒に住みたいなぁ」 無意識に本音がぽろっとこぼれ、陽斗の方に視線を向けると。 「……うちに……住む?」 すぐに顔を上げて振り返った陽斗がほんのり上目遣いで言ってきたからドキッとした。 「え、いいの?」 「……ここ、手続きしたらもう一人住めるし。病院近いし、いいんじゃないか? 今も半分そんな感じじゃん」 「今とは違うよ。同棲なんだから」 「ど、同棲!?」 ほんのりと顔を赤らめながらまた俯いた陽斗を見ていて本当に一緒に住みたいと思った。 でもなぁ、片や社会人相手に自分がまだ学生ってことが気が引ける。 「でも、俺学生だし家賃とか払えないし卒業してからかな」 そう言うとまた陽斗が心なしか残念そうな顔をしていて、それも俺の心を煽るのだ。 「すぐじゃないのか」 「すぐでもいいけど、なんかヒモみたいじゃない?」 「……気にしないけど。家賃とかいいのに」 なんだよ。そんなに住んで欲しいのかよ。 それなりに長い付き合いだけど、もじもじしながらボソボソ言う陽斗は本当に新鮮だった。 初めて会ったときから陽斗はなんでも決める時は即決で迷いなんて感じさせなかったし、去るものは追わずといった感じもあって常にドライだと感じていたからだ。 それだけ俺と一緒に過ごすことを望んでいるんだろうと思うと嬉しくてたまらない。 でも、嫌なら別にいいよって、俺に逃げ道を残してくれているような控え目な態度もいじらしい。 もっと我儘言ってくれてもいいのに。

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