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純情オレンジ 34
はぁーっと軽くため息をついた。
本当は一人前になってから格好付けたいとこだけど……先立つものが何もないから、格好もつかないけど。
でも、俺だって少しでも早く一緒に過ごしたい気持ちは同じだから。
「まだ学生なのに同棲始めても生意気とか思わない?」
陽斗の髪をすきながら言うと、陽斗は少し首を傾げた。
「え?」
「親の脛かじりだし、国家試験も受かってないし、受かっても研修医ってそんな給料良くないし……」
「和臣?」
「一人前になったらちゃんと返すから」
「何の話?」
不思議そうに俺の顔を覗き込む陽斗がおかしくて笑いながら引き寄せて抱きしめた。
ふわっと香るシャンプーの香り。
きっと俺からも同じ香りがしている。
こんな幸せで穏やかな日が続けばいいなって思うんだ。
いいよなぁ、こんな日常。早く欲しいなぁ。
「陽斗……。中途半端な俺でも良かったら、一緒に住んでくれませんか?」
すると引き寄せられるままだらんとしていた陽斗の腕に、ゆっくりと力が入っていくのがわかった。
そして俺のシャツをぎゅっと掴んだ手は少し震えているようにも感じて。
「え、本当に?」
すごく小さな声で陽斗がつぶやくように言ったんだ。
「うん。本当に。俺が一緒に住みたい。迷惑かけるかもしれないけど」
「迷惑なんてないけど」
「家事とか下手だよ? それに忙しくなったらまた気を使わせるかも。俺、鈍感だし。がっかりさせないようには頑張るけど」
「そんなこと思うわけないだろ」
陽斗はどうして俺のことをそんなにも無償で好きでいてくれるんだろう。
俺は今まで、その気持ちに気付かずにたくさん傷つけてしまっただろうに。
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