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純情オレンジ 36
「俺、陽斗に我儘言われたら何でも聞いちゃうと思うけど」
「急に言われても困る」
「そうか? 何でもいいんだぞ? もっとセックス上手くなれとかでもいい」
「な、なんだよそれ!」
焦る陽斗を見てると楽しくなった。
「ま、セックスはもっと上手くなるように努力するから」
「な、ならなくていいから!」
「なんで? 気持ちいいの好きなんだろ?」
「今でも充分……なんだ、から……これ以上、上手くなっ、たら……死ぬ」
俯いてみるみる赤くなっていく陽斗を見てまた心がくすぐったくなっていくようだ。
「え、俺って上手いの?」
茶化すように聞くと手にした枕を投げつけられたけど、今までに見えなかった陽斗の内側に触れられていると思うと愛おしい。
「ばかなこと言ってないで寝ろ!」
「うん。一緒に寝よう」
色々と文句は言いたげな表情をしてる割には、ぎこちなくも腕に収まってくれる陽斗の体温を感じながら目を閉じた。
目を閉じてゆっくり深呼吸して、またそっと目を開けた。
「俺、外科に進むよ。広く学ぶつもりだけど、消化器外科医を目指そうと思う。俺も頑張るから、陽斗は少なくとも腹部と心臓のエコーはマスターしておいてくれ」
すると背を向けるように寝ていた陽斗が寝返りをうってこちらを向いた。
「わかってる。腹部と心臓だけでなく、全領域マスターしてみせるよ。エコー以外にだって一人で検査室回せるくらいになるつもりだから任せとけ。和臣は安心して自分のことに集中しろ」
「頼もしいな」
笑いながら抱き締める力を強めると、今度は陽斗が控え目な声で聞いてきた。
「……なぁ。一緒に住むなら、もう少し大きいベッド買う?」
さっきまで威勢よく任せとけ。とか男らしく言ってたくせに眉尻を下げて上目遣いに聞いてくる姿にまた胸を掴まれる。
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