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第6話 そして日曜日
そんなこんなで、ようやく日曜日がやって来た。
俺が唯一一日自由に遊べる日だ。
毎日俺はほんとによく頑張ってると思う。
おやつの時間以外は学校の勉強と会社経営の勉強をたっぷり叩き込まれている。
剣はかなりのスパルタで、ときにクソ丁寧な言葉づかいで、ときに罵詈雑言を俺に浴びせかけ、社会人としてのマナーやルールや会社経営のイロハを教えられている。
俺が父さんの会社に入るまであと一年ちょっとあるというのに、こんなに急いで詰め込まなくてもいいと思うんだけど。
剣の容姿端麗ぶりさえ見飽きてしまったくらいだ。
「はあー、義(ただし)のフツメン見ると、なんか癒されるなー」
俺が隣を歩く親友の顔を見上げて言うと、義は不貞腐れたように言葉を返して来た。
「なんだよ? それ。いくら自分がイケメンだからって、失礼じゃないか? 信一」
「へ? イケメン? 俺が?」
自分の顔を客観的に見るのは難しい。
確かに周りからは『いい顔してるね』とよく褒められるが、正直自分の顔面偏差値がどれくらいなのか分からない。
「嫌味だな。この前も信一、女の子のグループに逆ナンされてたくせに。……でも、まあ、おまえの場合、正確に言うとイケメンっていうより、美少女っぽいというか、女装したら超似合いそうなところがこえーんだけど」
「似合いませんー」
俺が女装しても気持ち悪いだけだと思う。そしてふと剣の顔を思い浮かべる。
剣なら女装しても似合いそうだな。
切れ長の目と形のいい高い鼻、薄い唇はメイクアップすればさぞ映えるだろう。
まあ、百八十センチ以上もある身長と俗にいうやせマッチョな体形がなければ、だけど。
そんなふうに剣のことを考えていた所為か、偶然にも通りを挟んだ向こう側に当の本人の姿を見つけた。
声をかけようかどうしようか迷ったがやめておいた。
なぜなら剣は一人ではなくて女連れだったからだ。
剣は結婚はしていないから、彼女だろう。
並んで歩く剣と彼女はとてもお似合いだった。
……似合いすげて嫌味なほどだな。
清楚な感じでいて、ちゃんと大人の女性の色気も兼ね備えている美女は、どこかレイナさんとイメージが重なる。
父さんと言い、剣と言い、どうしてああいうタイプの女に弱いんだろうか?
はっきり言って俺はああいう女は大嫌いだ。
絶対腹に何か企みみたいなものを持っているに違いない。
俺は女性団体が聞いたら猛攻撃を受けそうなことを考えてしまう。
続けてモデルのような二人を観察していると、剣がタクシーを止め、美女を乗り込ませた。
どうやら今日のデートはおしまいみたいで、剣はタクシーを見送っている。
その表情はとても明るく爽やかさ百パーセントっていう感じで。
……俺にはあんな顔、見せてくれたことないくせに。
何となく面白くない。
剣が俺に見せる表情と言えば意地悪そうなS丸出しの笑みがほとんどだ。
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