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第9話 日曜日の出来事3

「じゃあ、あの人は信一の将来の秘書、ってわけか?」 「……うん。まあ、そういうことになるかな」  これから用事があるという剣と別れ、俺と義はファミレスでハンバーグセットを食べていた。 「なのに何で知らないなんて言ったんだよ?」  義が話を蒸し返す。 「それは……なんとなく」 「何だよ、それ。まあ、いいや。それより秘書さんの名前なんて言うの? やっぱりあれだけイケメンだと彼女とかいるのかな?」  義が剣についてあれやこれや探りを入れて来て、俺は嫌な予感がした。 「なんでそんなこと聞くんだよ?」 「いや。いいなーって思って」  やっぱり。  普段は忘れてしまいがちなのだが、義はバイセクシャルだ。  どちらかと言うと女の子の方が好きなバイらしいけど、とにかく面食いなのだ。  それに年上好きの綺麗系好き。そう考えてみると、剣はまさしく義のどストライクだ。  あ、言っておくけど、俺と義は純粋な友人同士だから。  義いわく「信一みたいなガキっぽいのはタイプじゃない」らしい。  勿論タイプだと言われても困るけど。こんなふうに親友同士でいられないわけだしね。  それはさておき、俺は先ほど見た剣と美女のツーショットを思い浮かべながら、義に教えてやった。 「剣には彼女いるよ」 「剣って言うのか、あの人。いい名前だな。……うん。まあ、あれだけのイケメンだから彼女がいない方がおかしいよな」 「ショックじゃないのかよ?」 「それくらいでショック受けるほど俺はやわじゃない。まあ結婚してるって言うなら考えるけど。え? もしかして結婚してる?」 「してない」 「じゃあ、まだ俺にも可能性はあるんじゃね?」  たくましいというか、図太いというか……でも、こんなふうに真っ直ぐに言い切れるところうらやましくないこともないかな。あれ? でも、だったら。 「……なあ、義。おまえってさ、その、攻めの人なの? 受の人なの?」  何聞いてるんだろ、俺。  でも気になるんだから仕方ない。  俺の遠慮がちの質問に、ハンバーグの最後の一欠けらを飲み込んだ義が堂々と言ってのける。 「俺が受に見えるか?」  マジッと親友を見上げる。  剣よりは低いが百八十センチ近い身長、それに子供の頃から水泳を習っているらしく広い肩幅……。 「…………じゃ、じゃあ、剣のこと……」 「勿論、あの人のこと抱きたい。今流行りの年下攻めっていうやつだな」  義と剣、濡れ場……、義が剣を押し倒して……。  俺は一瞬浮かびかけた絵面をシャットアウトする。  剣は綺麗だが、ガタイはしっかり大人の男だし、義も貧弱な体の俺と違ってたくましい。  そんな二人のエロいシーンなんて絶対R18だ。  俺の内心なんか知ったこっちゃないとばかりに義の目が獲物を狙う捕獲者のようにきらりと光る。  それがちょっぴり怖くて俺は小さく体を震わせた。

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