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第12話 寂しい?

「な、な、な、ななにを急に」  俺が突然の剣の言動にパニクっていると、優しい瞳に微かな影が差す。 「信一の寂しい気持ち、俺も分かるから」 「え?」 「俺、小さいときに事故で両親を失くしていて、親戚の家で育ったんだ」 「え?」 「あ、言っとくけど、親戚の家で邪険にされたとかそんなんじゃないからな。……けど、それでもやっぱり寂しかったには違いない」 「…………」  剣、両親を失くしていたんだ……。  俺は母さんを失ったときすごく悲しくて……寂しくて。でも、剣は二親を失くして。  どれだけ悲しかっただろう?  俺は剣の着ているスーツの裾をつかんでうつむいた。 「……ごめんなさい」  小さな声に剣が首を傾げる。 「え? 何で信一が謝るんだ?」 「……なんとなく……」  俺も何で謝っているのか自分でも分からない。  けどなんか謝らなきゃいけないような気がしてならなかったんだ。  そんな俺の表情をのぞき込むようにして剣が見て来る。 「なんて顔してんだよ、信一。参ったな……どうしてそんな唐突にすごく可愛くなるかな。……萌えるじゃん」 「な、何言って、変態っ……わっ……何するっ!?」  剣が急に俺の体をギュッと抱きしめて来たのだ。 「離せ、離せってば」  俺が体をジタバタさせても抱きしめて来る腕の力は緩まない。  幼い子をあやすように背中をポンポンと優しく叩かれ、妙な気分になってしまう……言葉で形容すれば切ないというか。  その感情を認めたくなくって剣の長い脚を蹴っ飛ばしてやろうとしたがうまくかわされてしまった。 「最初はクソ生意気なガキなだけと思ってたけど、おまえって結構ツボる」 「ツボらなくていい!!」 「信一の我儘だけど可愛いところが沼」 「人の話を聞けよ!」 「大丈夫……俺がいるから。もう寂しくないから」 「さ、寂しくなんかないっ」  父さんとレイナさんの関係なんて紹介されたときからピンと来ていたし、近い将来再婚するだろうこともとっくに分かってる。  確かに寂しかった時期もあったけど、俺はそれを乗り越えたはずなのに、動揺したみたいに声が上擦ってしまう。

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