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第16話 感情の爆発
それからも三人の勉強会は続いた。
自分の気持ちに気づいてしまった俺は、意識してしまって以前のように剣とは話ができなくなくなってて。剣と義がどんどん親しくなって行くのをただ見ているばかりだった。
そんなある日、義が家の用事で勉強会に来れなくなった。
「ただいま……」
俺は久しぶりの剣との二人きりの時間に、ドキドキする胸を抑えきれない。
「おかえりなさいませ。今日はお一人でいらっしゃいますか?」
「うん……義は家の用事」
「そうですか」
剣がミルクティとおやつのチョコレートケーキを用意してくれる。それを食べながら、いつものように小さなノートパソコンに何かを打ち込んでいる剣をそっと盗み見る。
すると、視線に気づいた剣が顔を上げ、目と目が合う。
「何か?」
やっぱり剣の言葉遣いは敬語バージョンのまま変わらず、どこか余所余所しいままだ。
「……何で?」
言葉が勝手に口から飛び出した。
「は?」
剣が不思議そうな顔でこちらを見て来る。
「信一様?」
「……なんでもない」
「何か私に失礼がございましたか?」
どこまでも『年上の部下』というスタンスで、余所余所しい剣に俺の心がとうとう耐え切れなくなる。
「それはこっちの台詞だよっ」
「え?」
「どうして……どうしてそんなに余所余所しいんだよっ!? 俺、剣の気に食わないこと何かした?」
爆発してしまえば言葉は次から次へと溢れ出し、情けないことにじんわりと目元に涙さえ滲む。
剣はそんな俺の様子を束の間呆気にとられたように見ていたが、やがてクスクスと笑い出した。そして。
「ヤバい。マジ可愛い、おまえって」
唐突に剣が素に戻る。
俺はもう何が何だか訳が分からなかった。
「な、なんだよ? 急に」
半ベソになってる俺に、剣はテーブルを挟んで身を乗り出し、おもむろにその手を伸ばして来ると、頭を優しく撫でてくれる。
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