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第18話 ファーストキス
俺は今更ながら心臓がバクバク破裂しそうになっていた。
剣と繋いでいる手が汗ばみ、彼に不快に思われていないかと心配になって来る。
正直俺はパニック状態の極限にあった。
この前、おでこや頬にキスをされたときもパニックになったが、今はそれ以上だ。
だって、唇へのキスはやっぱり俺にとっては本当に特別なものだし。それにこんなふうに二人手を繋いで歩くなんてまるで恋人同士みたいで。
そんなの俺の妄想で、願望にすぎないのにね……。
部屋へと入り、勉強が始まると、剣は甘い雰囲気を消し、いつものごとく厳しい秘書の顔になった。
それでもパニックの残滓に捕らわれたままだった俺は、久しぶりに数学の問題を三つ続けて間違えた。
剣に厳しく注意されても、俺の感情は中々平常運転には戻ってくれない。
「信一、その問題、その公式使うんじゃないだろ」
「あ……」
剣の指摘に、進めていたシャーペンが止まる。
また叱責されるだろうと首を縮こませていると、フッと剣の雰囲気が甘く和らぐ。
「まだ照れてんの? 信一?」
「な、何、何が?」
「ファーストキス、だろ? おまえの」
「……っ……」
思わず口籠ってしまう。
そんな態度を見せればそれが図星だと言ってるようなものなのに。でもここで自分も甘い雰囲気を作れるほど、俺には恋愛経験がない。
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