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第19話 キス、それ以上?
クスリと小さく笑いを零した剣は、綺麗な長い人差し指でそっと俺の唇に触れる。
「唇、震えてるよ……可愛い。何だか信一見てたら、いじめたくなっちゃうな」
甘い言葉とともに指先が唇の輪郭をなぞっていき、端整な顔が少しずつ近づいて来た。
目を閉じる暇もなく唇が重なる。
最初のキスより強く押し付けられる唇。
何度も啄むようにされ、熱い舌が俺の唇を舐める。
長いキスに下腹部がジン……と疼き、頭がボーッとしてくる。
俺は無意識に息を止めていたようで、段々苦しくなってきて、酸素を求めて唇が自然に開いて行く。
その隙を狙っていたかのようにぬるりと剣の舌が俺の口内に入って来る。
俺はまたパニックになった。
だって、こんなの、こんなの……。
剣の胸元を叩いて体を離そうとしたが、しっかりと筋肉のついた体はビクともしない。
そうこうしているあいだにも剣の舌は自由に俺の口内を蹂躙して行く。
徐々に俺の抵抗は弱々しいものになっていって、気づけば剣のスーツをギュッと握りしめ、俺は彼から与えられる深いキスを甘受していた。
「……ん……ふ……」
「信一……」
煌めく糸を引いて一旦離れていく唇。
だけどすぐにまた剣はキスを再開する。それと同時に俺の衣服の上から体をまさぐる剣の綺麗な、でも大人の手。
やがてその手は服の裾から中へと入り込み、素肌に触れた。
「ひゃっ……」
思わず高い声が漏れた。
剣の手は俺の脇腹の辺りを這っていて、くすぐったいのだが、それだけじゃなくて……。
「け、剣、も、やめて……」
キスの合間に俺が必死で訴えても、
「気持ち、良くない?」
剣は色気たっぷりのまなざしで見つめて来て、そんな言葉を放つだけだ。
「く、くすぐったい」
「それだけじゃないくせに……」
さわさわと剣の手は肌を這い続け、もう少しで胸の突起に触れるというとき、ドアがノックされた。
「はっはいっ!」
俺は剣の体を突き飛ばし、混じり合った二人の唾液で濡れた唇を拭いながら、裏返った声で返事をした。
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