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第23話 親友の疑心
「おい、信一、おまえ剣さんと何かあった?」
翌日の勉強会のとき、剣が電話で部屋を出た瞬間、義にそんなふうに問い詰められた。
「な、何で?」
「おまえと剣さんのあいだを漂う空気が一昨日までと、全く違うし、それに信一は分かりやすいからな。ずっと剣さんのこと見てるの自分で気づいてる?」
「…………」
俺は何も言えなかった。
「黙っているってことは図星なんだな?」
義の声が険しくなる。
俺は小さくうなずいて謝った。
「……ごめん……」
「別に謝って欲しいわけじゃない」
「でも、義が剣のこと好きなこと知ってて、俺も剣のこと、その、……好きになっちゃって……」
何となく義に対して罪悪感を持ってしまってる俺は遠慮がちに本音を告白した。
「やっぱり剣さんのこと好きなんだな、信一も」
「……うん」
「それで、剣さんとは付き合ってるのか?」
義のこの問いかけには、俺は力なく首を横に振った。
「それはない。だって知ってるだろ……剣には彼女がいるんだから……」
「それでも剣さんとの間に何かあったんだろ?」
「…………」
俺はまたしても何も答えられなかった。
確かに剣とはキスもした……それ以上も少ししてしまった……けど。
俺が黙りこくっていると、義が鋭く突っ込んでくる。
「それってもう付き合ってるってことじゃんか」
「違うって――」
俺たちが言い合っているとき、剣が電話を終えて部屋へ戻って来た。
「おまたせ……って、どうしたの? 二人とも」
俺と義の間に漂う剣呑な空気に気づいた剣が怪訝な顔で聞いて来る。
その場の雰囲気に耐えられなくて、俺は情けなくもその場から逃げ出すことを選んだ。
「ちょっと俺、トイレ」
「信一? おい――」
剣の困惑したような声をあとに俺は部屋を飛び出した。
本当はトイレなど行きたくなかった俺は下に降りると、無駄に広い庭に出て深く溜息をついた。
一体何でこんなややこしいことになっちゃったんだろう?
親友と同じ、それも同性を好きになっちゃうなんて。
その上当の剣にはれっきとした彼女がいて。
なのに、俺に思わせぶりな態度をとったりするし。
もしかして、剣って酷いやつ?
そしてそんな酷い男が好きな俺と義……これって滑稽な三角……いや、四角関係なのかな?
「あー、もう訳分かんねー」
俺はイライラと言葉を吐き捨てるともう一度重い溜息をついた。
あんまり長いこと戻らないと、剣が義のどちらかが探しに来るかもしれないから、すっきりしない気持ちのまま俺は庭から家の中へと入り、部屋へ向かう階段を上った。
自室のドアを開けるのにノックをするやつはあまりいないだろう。
その時の俺も部屋の前で一度深呼吸をしてから勢いよくドアを開けた。
次の瞬間目に飛び込んで来た光景に俺は心臓が止まるかと思った。
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