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第25話 愛する人と親友のキス2

「はあ……」  俺は溜息をついた。  こういうとき、ドラマだったら好きな人が自分を探し出してくれ、「違うよ、あれは誤解なんだ」とか言って優しく抱きしめてくれたりするんだろうか。 「あほらし、何十年前のドラマの設定なんだよ」  自分で自分に突っ込むのはマジ虚しい。  当然、俺の済む世界はドラマの中じゃなく現実世界だから、剣が俺を探し出し迎えに来てくれることなどない。  日が暮れて辺りが真っ暗になって、公園に誰も人がいなくなってもしばらく俺はベンチでぼんやりし続けた。 「今、何時だろ……」  スマホも置きっぱなしで飛び出してきたので、時間も分からなかったが、もう結構遅い時間だと思う。  家に戻っても、もう剣も義もさすがにいないだろう。  俺は重い腰を上げると重い足取りで自宅への道を歩き出した。 「ただいま……」  俺が玄関で靴を脱いでいると、ドタドタと大きな音を立て父さんが奥から出て来た。 「信一、こんな時間までどこへ行ってたんだ!? もう十一時時過ぎてんだぞ!!」 「ちょっとそこまで散歩」  俺が答えると、父さんは一瞬呆気にとられたような顔になり、それから大きな雷を落とした。 「いったいどれだけ心配したと思ってるんだ!」 「……ごめん」  一番上に立つ人間だけあって、父さんの雷は迫力がある。  俺が頭を縮こませて謝ると、父さんは俺の目の前にスマホを突き出す。 「すぐに沢口くんに電話しなさい。沢口くんはずっとおまえのことを探してくれているんだ」 「剣が?」  剣の名前に俺の心が敏感に反応する。  彼が俺のことを探してくれていると聞き、うれしく感じる素直な感情と、一体誰のせいでこんな夜遅くまで出歩く羽目になったんだと感じる卑屈な嫉妬の感情が複雑にせめぎ合う。

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