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第34話 誓い
目が覚めたとき、もう部屋は薄暗かった。
俺と剣は一緒にベッドにいた。
剣が俺に腕枕をしてくれている。
「……起きた? 信一。おはよう、夕方だけど」
「…………おはよ……」
俺はなんだかすごく恥ずかしかった。
恥ずかしくて、剣と視線を合わせられずにシーツの中へともぐり、彼の胸元へ顔を埋める。
「どうした? 信一?」
「……なんでもない」
俺がシーツの中へもぐり続けていると、剣が力任せにシーツを引きはがして来た。
そして俺と視線を合わせて来るとクスリと笑う。
「顔、真っ赤。ほんと純情なんだから」
「うるさい」
俺は再びシーツを奪い返すとまたその中へともぐった。
「信くーん。もぐってないで出ておいで」
「……っ……剣は俺の部下だろ? 上司に命令してるんじゃねーよ」
「うわ。こんなときにパワハラするなんて、酷いな。……その調子なら全然記憶にないんだな?」
「…………何が?」
真っ暗なシーツの中から訊ねると、剣の嬉しそうな声が答える。
「信一が眠っている間に、俺、おまえのこと風呂に入れてやって、体に飛び散っていたおまえのあれをきれいに洗い流して、奥の奥に放った俺のあれも残らず掻き出してやったんだけど……」
「えっ?」
そういえば体からはいつも使っているボディシャンプーの香りがしている……。
「もうお前の体の奥の奥の奥までじーっくり見させてもらったし、大体シテるときに散々やらしい姿見せてて何を今更そんなに恥ずかしがるかな」
剣はそう言うとまた俺からシーツを取り去ってしまう。
このときの俺は多分頭から湯気が出るほど真っ赤になっていたと思う。
ゆでだこみたいに滑稽な俺。
なのに剣はにわかに真剣な表情になると、俺の頬へと手を伸ばして来た。
「剣……?」
「信一、俺と付き合って欲しい」
真っ直ぐに俺を見つめて来る切れ長の綺麗な瞳。
いきなり改まって告白されて、俺の涙腺は破壊される。
「……っ……」
「泣くなよ、信一」
「な、泣いてないっ」
でも、強がる俺はしっかり泣いていて。
剣は少し困ったように笑ってみせる。
「……まあ、いいんだけどね。それが幸せな涙なら。……ね、信一、返事が欲しいんだけど」
「そ、そんなの言わなくてもっ……分かるだろっ……」
「信一から、信一の声ではっきりと返事を聞きたい」
年上の男からのお強請りに、俺は泣き声交じりの声で答えた。
「……お、俺も……剣と付き合いたい……」
俺の返事に剣が破顔し、涙に濡れた頬へチュッとキスをくれた。
そのあと唇へもキスをくれ、
「絶対大切にする……誓うよ」
そんな言葉とともに強く抱きしめてくれた。
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