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第35話 デートの誘い
次の日、月曜日。
「俺、剣とつき合うことになった……」
俺は義に正直に打ち明けた。
「そう。良かったじゃんか、信一」
義はあっけらかんと答える。
その口調は嫌味でもなんでもなかった。
「ありがとう……義」
俺がそう言うと、義は照れくさそうに笑った。
「うん、まあ俺も告ってはっきり玉砕したから、もう未練はないし。いつかきっと剣さんに負けないくらい綺麗な彼氏作ってみせるから。そうなったらwデートでもしようぜ」
「ん」
こういうところ義ってほんと男前だよなー。
逆の立場だったらきっと俺はちょー落ち込んでジメジメイジイジしてしまうだろう。
「それはそうと信一、もう済ませたのか?」
「? 何を?」
俺がきょとんとすると、義は意地悪っぽそうな笑みを浮かべた。
「信一って時々めっちゃ鈍感だよな。……決まってるだろ、初エッチだよ、初エッチ」
「なっ、ななな」
「うっわ。すごく分かりやすい反応。真っ赤じゃん。あからさまにヤりましたーって感じ」
「義っ」
俺がオタオタと慌てると、義は豪快に笑う。
「剣さんの大人のテクに、散々泣かされたってところかなぁ」
ニヤニヤと笑いながら言う義に、俺は拳を振り上げて抗議しながらも、心の奥底では義は本当にいい奴だなと感動していた。
恋人関係になっても、勉強のときの剣の厳しさは変わらなかった。
けど、勉強が終わった後、剣は少し照れながら誘ってくれたのだ。
「信一、今度の日曜日、デートしないか?」
「えっ? デ、デート?」
「そう。信一はどこか行きたいとこある? どこでも連れてってあげるよ?」
端正な顔が甘く優しく微笑む。
俺は少し迷う振りをしたが、実はすごく行きたいところがあった。
「……どこでもいいの?」
「ああ」
「じゃ、……遊園地、かな」
少し子供っぽいかなとは思ったけど、遊園地には長いこと行ってない。
最後に行ったのは小学生の頃。父さんに連れて行ってもらったきりだ。
中学のときはそこまで親しい友人はできなかったし、高校生になった今も親友と呼べるのは義だけだ。
そして義はというと遊園地には付き合ってくれない。
なんでも絶叫マシーン系が苦手らしい。対して俺は絶好マシーンが大好きだった。
「剣って、ジェットコースターとか平気?」
「めっちゃ好きだよ。じゃ、デートの場所は遊園地に決まりな」
「うんっ」
俺はドキドキと弾む気持ちで返事をした。
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