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第43話 愛してる
「信一……大丈夫か? 信一?」
名前を呼ぶ剣の心配そうな声に、俺は短い失神から浮上した。
目を開けると、剣の端整な顔が間近にありドキッとする。
「剣……」
「気が付いたか? 無茶してごめん。……でもさ、煽るおまえも悪いんだぞ?」
「煽るって、俺が?」
いまいち意味が分からない俺に剣は呆れたように、言う。
「あんなに強く求められたら、俺だって止まらないよ」
俺は顔が赤くなるのを感じた。
セックスの最中は夢中で、自分が何を言ったのかあんまり覚えてないのだが、確かにめっちゃ剣に強請ったような気がする……。もっと、って。早く挿れてって……。
真っ赤になってる俺の隣に腰かけて、剣が小さく溜息をついた。
「俺って悪い大人だな。まだ高校生のおまえの体をめっちゃエロくして。……信一ってさ、もしかしてオナニーとかあんまりしないタイプじゃないか? もとは淡白だっただろ?」
「い、いったい何を言うんだよ!?」
信一は抗議したが、確かに剣の言う通りかもしれないと思った。
そういえば、そんなに自慰ってしなかったような気がする。……というか、周りのみんなが自慰をする対象っていうのがよく分からなかった。例えば居乳のおねーさんを見て興奮したり、アダルトDVDを見て興奮したり、普通の男はそんなものだろう。
でも俺はいまいちピンと来なくて、どこか冷めてた気がする。
まあだからと言って義のようにゲイの映像や雑誌を見て興奮することなども決してなかったけれども。
「でも、俺がおまえの体を開発したかと思うとすげーうれしくもあるけどさ」
剣は、今度は口元に笑みを浮かべながらそんなことを言った。
「剣っ! もうさっきから恥ずかしいよ、俺」
「あんなに乱れておきながら恥ずかしいって、信一、ギャップ萌えだな」
そう言って剣は俺に優しいキスをくれた。
「……さ、夕食にピザでも取って、食ったら送ってくよ」
「ねー、剣。今晩泊まって行っちゃだめかなぁ? 父さんも遅くなるって言ってたし。俺、剣とずっといたい」
「……おまえ、明日学校だろ?」
「朝早くに家に寄って学校行くからさ」
やはりコトミさんのことがずっと心のどこかに引っかかっているのだろうか。剣と離れたくなかった。
「…………明日、学校へ行けなくなるかもしれないぞ」
「え?」
「俺、おまえと夜を共にして手を出さない自信がないから。立てなくなるまでしてしまうかもしれない」
一瞬、冗談で言ってるのかと思ったが、剣の切れ長の目は真剣で。
ぞくりと体の芯が疼いた。さっきの激しいセックスの快感を思い出して。
剣の言う通り、彼が俺の体を変えたようだった。
隣で剣が再び溜息をつく。
「俺はセックスに関しては特に淡白でも絶倫でもなかったけど、おまえと出会ってから超貪欲になった。今まで付き合った女性とは時が経つにつれ冷めて行ったけど、おまえは知れば知るほど欲しくてたまらなくなる……自分が怖いくらいに」
「剣……」
「好きだと思った女性は何人もいたけど、愛してるとまで思ったのは、もしかしたら信一が初めてかもしれない」
そして射るようなまなざしで見られて、俺はその視線だけでイキそうになった。
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