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第47話 コトミ

 なんでこんなところにコトミさんが?  俺が立ち尽くしているとコトミさんが俺に気づいた。  にっこりと笑う。その笑顔は清楚そのものだったが、剣から話を聞かされている俺は何やら得体の知れない気持ち悪い笑みに見えた。  そう、顔は笑っているのだが、目が笑っていないのだ。その瞳には俺への憎しみがありありと浮かんでいるように見える。 「あなた、信一くんね? 剣の今の恋人の」 「……どうして、ここが……?」  俺が茫然と呟くとコトミさんはコロコロと屈託なく笑った。  十人いたら九人までが、無邪気で可愛い笑顔だと思えるそれで。 「あたしは剣に関することならなんでも知ってるの。勿論あなたの知らないことだってたくさん知ってるわ」 「…………」 「剣の引っ越し先ももう少しで突き止めることができるはずよ」 「やめてくれ! あんた、剣に近寄っちゃいけないって警察から言われてるんじゃないのか!? もう剣のこと放っておいてあげてくれよ」  俺は思わず大きな声を出していた。それを聞いてコトミさんの笑顔がすうぅとと消えて無表情になる。 「生意気」  ぽつりと彼女が呟く。 「あなたなんか剣に本気で相手されてるとでも思ってるの? 高校生のガキを剣は遊んでるだけよ」 「……っ……あんたこそ、いい加減、剣のストーカーをやめたらどうだよ!!」 「ストーカー? なんのこと? あたしは剣に愛されてるのよ。彼は何回もあたしを抱いてくれたわ……好きだよっていいながら、ね」 「やめろ!!」 「あたしと剣は運命の相手なの、同性で高校生のあなたになんか入る余地はないのよ!!」 「ちょー、あんた」  そこへ義の声が割って入った。 「それ以上そこで訳の分からないこと喚き散らしていると先生呼ぶぞ!?」  すると、コトミさんはその可愛らしい顔に似合わない下品な舌打ちをすると踵を返して去って行った。  俺は知らないうちに体に力が入っていたようで、その場にへなへなとしゃがみ込んでしまう。 「大丈夫かよ? 信一! いったいあの女誰なんだ?」 「……剣の元カノで、今はストーカー」  俺は義に支えられるようにして学食まで連れて言って貰うと、そこでミルクティーを飲みながら、コトミさんのことについて義に話した。  義は顔を険しくして。 「今すぐ剣さんにラインして、あの女が高校まで来たこと話すんだ」 「でも、剣に余計な心配かけ――」 「馬鹿! そんなこと言ってる場合か! あの女、相当ヤバいぞ」  俺は剣にラインした。するすぐに剣から返信が帰って来る。 『放課後、迎えに行くから、一人で行動するんじゃないぞ!!』  剣のラインに、俺も危機感を感じ、ミルクティーを持つ手がカタカタ震えた。

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