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第48話 どうして?

 放課後、俺が校舎から出て、義と一緒に校門へ行くと既に剣が車に乗って待っていてくれた。 「信一、早く乗って!」 「うん、じゃ義、今日はありがとう」 「なんの。気をつけろよ。剣さん、信一のこと守ってあげてくださいね」 「ああ。ありがとう。……信一、車出すぞ」 「うん」  俺がシートベルトをするのを見てから剣は車をスタートさせた。  いつもは二人で車に乗ると剣とはいろんなおしゃべりをするのだが、今日の剣は無言で運転していた。  ……気まずいな。  そりゃ楽しくおしゃべりする気にはなれないのは俺もだけど、どうして二人の時間をこんなふうにコトミさんという存在に邪魔されなきゃいけないんだと腹が立つ。 「ねぇ、剣」 「…………」 「剣ってば!」 「え? ああ、ごめん、何?」 「あの人、どうして俺の高校が分かったのかな?」  剣は端整な顔を険しくして、しばし考え込んでいたがやがて口を開いた。 「多分、興信所かなにかに頼ったんだと思う。おまえは社長令息だし、見た目も目立つから、きっと突き止められたんだろうな」 「……あの人、すぐに剣の家も探し出してみせるって言ってた」 「ああ。時間の問題だろうな。また引っ越ししなきゃいけないかもしれない」 「そんな……」  俺が茫然と呟くと、剣はフッと表情を和らげる。 「そんな顔するなって。俺はお前だけは守るから」  そう言って頭を撫でてくれるけど。  違う。  そうじゃなくって。  俺は剣のことが心配なんだ。  そのことを伝えようと思ったんだけど、剣の言葉に遮られた。 「信一、俺たち、しばらく会うのよそうか……」  ショックだった。 「なんで!?」 「コトミの最終的な目的は俺だ。だから信一が俺の傍にいると、今日みたいにおまえにまで類を及ぼそうとしてくる」 「俺は剣と一緒にコトミさんと戦う覚悟はできてるのに、どうしてそんなこと言うんだよ!?」 「俺は信一を守りたいんだよ、かすり傷の一つだってつけたくないんだ」  信号待ち。剣は苦しそうにいうけれども。 「どうして、コトミさんのために俺たちが会うのやめなきゃいけないんだよ!? 守ってくれるって言うなら、俺だって剣のこと守りたい……!」 「信一、分かってくれよ」 「分からない」  俺たちは言い合いになった。  コトミさんという一人の女性のために、剣と初めてガチな言い争いをした。  どうして、と思う。  こんなに剣のことが好きなのに。  剣も俺のこと好きって言ってくれてるのに。  俺たちは恋人同士なのに。  どうして、会うのをやめなきゃいけないんだろう?

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