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第2話

初老のイケメンと別れ自分の部屋に戻る。 紙袋の中の大金が非現実的でいつもの部屋が違って見える。 浮ついてんのかな… A4のファイルと大金をテーブルに置いてとりあえず布団に入る。 寝てから考えよう… オレには睡眠の方が大切だから… 14:00 アラームの音で目が覚め、置いたままの状態でテーブルの上に置かれたファイルと大金を見て、あれは現実だったんだと思い知る。 一体何の目的でこんな事するんだろう… 金持ちの考えって理解出来ないな… とりあえず体を洗いたくてシャワーを浴びに行った。 そうだ…洗濯にも行かないと… シャワーから出ると、髪も乾かないままオレは洗濯物を片手にコインランドリーへ向かった。 平日の昼過ぎ、コインランドリーはガラガラだ。 オレは洗濯物を入れ洗濯機に小銭を入れた。 洗濯乾燥で80分…オレは耳にイヤフォンを付けて音楽を流した。 のんけを落とす方法か…どうしたらいいんだろう? ロマンティックにしたら良いのかな? オレが誰かに似ていてその気になり易いのかな? その相手とどこまでやってたかによるのか… あの爽やか笑顔のイケメンがね… …世の中まだまだ分からないね。 そんな事を考えたのも初めだけで、いつの間にか音楽に夢中になって頭の中でステージのイメトレをしていた。 もっと体幹を鍛えないと派手に踊った時に体がブレてみっともないな… オレはコインランドリーから戻ると渡されたA4のファイルに目を通してみた。 この謎の依頼に興味が湧いて来たからだ。 名前は依冬(よりと)。 オレより1つ学年は下で現在19歳。 今付き合ってる女は普通の家の出の女…あぁ…財閥の御曹司の身分には不釣り合いってことかな? ゲイよりマシだと思うけど? ペラペラと紙をめくると1枚の写真が添付されていた。 写真に写る少年… 彼がオレに瓜二つだった… 「あぁ…これか…」 添付されていた場所の資料を詳しく読み進めると、どうやら依冬くんはこの少年と幼なじみで高校生の時不慮の事故でこの子が亡くなってる様だ。 「亡くなった人の代わりって…結構際どいな…」 自分の大切な誰かが亡くなって…その人に瓜二つの人に偶然出会ったら…きっと酷く動揺するだろうな…ましてや相手が自分を落とすために仕向けられたと知った時どんな気持ちになるかは、大抵道徳の授業を受けていれば予測できる。 酷な事するな… 2人の間に何があったのか知らないけど…死人に口無し、許してくれよな… もう1つのファイルを手に取ってみる。 中にはオレに瓜二つの彼の情報が書かれている。 名前は湊(そう)。 ダンスが好きって趣味はオレと同じだ。 高校2年生の春に亡くなってる。 死因は窒息…窒息?これ、本当に事故なの?事件なんじゃないの? 好きな服装、好きな音楽、好きな食べ物まで事細かく書かれている。 これを模倣しろって事か… 携帯が鳴る。非通知の番号からだ… オレは恐る恐る電話を取った。 「もしもし…」 「シロくん、おはよう。ファイルは見てくれた?」 監視でもしてるのかよ… 電話は昨夜の初老のイケメンからだった。非通知とか…犯罪者かよ。 「明日の18:00に指定の服を着て渋谷のホテルまで来てくれるかな。ロビーに部下を手配させたので彼と上手くやってくれ」 明日…その時間は仕事がある。けど受けたからには休んでこっちを優先すべきか… オレ皆勤賞なのに… 分かりました。と返事すると電話は一方的に切られた。 それと同時に指定の服の内容がメールに届く。 怖いな。電話番号もメールも教えた記憶がないのに…何で知ってんだろう… なんだか悪い犯罪者に利用されてるみたいだな… オレはこうして湊くんの身代わりとなり依冬くんを誘惑する準備を始めた。 手始めに服装リストを見ながら買い物に行く。 値段を気にしないで服を買うなんて… でも湊くんは思ったより質素で高級なブランド品ではなく、馴染みの深い庶民のお店の品揃えで済んだ。金持ちのボンボンの恋人としては地味だと思ったが、逆にこれがリアルなのか… あと、オレの好きな赤髪を黒く染め直す。 あっという間にオレは驚くほどに湊くんになった…洒落にならないくらいだ。 「これ…ヤバイな」 自分でも怖いくらい似過ぎている。 双子の兄弟だったのかな… でも、少し楽しみでもある。 依冬くんはいったいどんな反応をするんだろう…。ムクムクとオレの中に好奇心が湧き起こる。 さて、用も済んだから仕事に行こう。 明日休むと伝えなくちゃな… オレ、皆勤賞なのに…

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