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第8話

あれ以来パタっと依冬の件で呼び出されることも偶然出会うことも無くなった。 …何だったんだろう オレは行きつけの美容院に行き髪を染め直した。もちろん赤と言いたいところだが気分転換にシルバーにした。毛は痛んだけど結構気に入った。 次染める色は結構発色が良くなりそうだ。 今日は智と約束して新しい衣装を買いに五反田まできた。ここのTOCになかなか派手な衣装が売ってるからたまに一緒に見にきてる。 「あ、シロ、コレとかすごいね…」 智はスケスケのTシャツを手に取って見せてきた。確かに…丸見えだ。 「それって脱ぐ意味ないよね…」 顔を見合わせて確かに~!と笑う。 ここは色んなお店が小さく入っていて見ていて飽きない。中野ブロードウェイみたいな古くからやってる何で潰れないの?ってお店。ああいう味のある店が多くて楽しいんだ。 「シロ、屋上行ってみようよ」 智、屋上に興味があるなんて…まだまだ子供だな。 オレと智はエレベーターに乗ると屋上へ向かった。 「ここ、だだっ広くていいね!」 屋上は喫煙所と化していて灰皿が点々と置いてあった。オレも一服しよ…とタバコに火をつける。 智は屋上にはしゃいで駆け回って…ほんとまだまだ子供だなぁ…。 オレはそんな智を笑って見ていた。 「ねぇ、シロあっちに見えるの何?」 智が指差す方向…ん~分かんない。 「あれならわかる!あれは富士山だ」 遠くの方に見える山…ここから見えるんだ…富士山。大きいな。 「ねぇ、シロ、オレ相談があるんだけど…この後ご飯に行かない?」 オレの方を向いてやけに神妙な顔をして言うもんだから、訳あり家出に何か動きがあったのかと思い、良いよと快く応えた。 オレの場合、家出では無いけど家に居場所がなかったのは似てるから…こんなオレでも誰かの役に立つと思うと少し嬉しかった。 「ん…もう一回言ってくれる?」 オレは危うく食べていたポックンパを吹き出しそうになった。 「だから…お店のお客さんとそういう仲になって…一緒に住もうって言われたの…」 絶対やめた方が良いと思うよ… 智はウキウキして目が輝いていて…とてもそんな水を差す事は言えなかった。 「お前はどうしたいの?」 オレは智の意思を尊重するフリをして自分の意見を避けた。 「僕は向井さんがそうしたいなら…そうしようかな?と思ってる」 え… 耳を疑った。 今、智の口から向井さんって出た? …笑顔が引きつったのが自分で分かった。 どういうこと…? 「ね…智、その人ってどんな人?」 智は嬉しそうにモジモジ体を揺すりながら話す。 「ん、とね〜お兄さんみたいな人。あと、エッチが上手で、イケメンで、優しい人だよ!」 智に、何したの… あの人…飄々と人のトラウマをほじくり返して笑うあの男… そんな毒みたいなやつが智に興味がある訳ない…! この子は純真で綺麗だ。 「智!その人はダメだよ…優しい人なんかじゃないよ?やめた方が良い…もう会わないで!」 オレは智の手を握って必死で話した。こんなの黙ってられない…でも、オレの言葉を聞いた智は少し困った様子で伏し目がちに言った。 「シロ…知ってるよ。だいぶ前だけど、お客できていた向井さんに大サービスしてたでしょ?僕それ見てたんだよね…もしかして嫉妬してるの?」 …智、違うよ 「そんなんじゃない!その人ヤバい人だからもう会わないで…」 言うだけ言って智の顔を見て察する。 オレの声は智には届いてないよね…知ってんだよ、ああいう人間はペルソナを使い分けてるって…お前にはどうせ良い人の顔しか見せていないんだろ…? そうなるとオレは何も出来ないよ 「シロに話さなきゃよかった!」 智は怒ってしまった…眉間にしわを寄せて外を眺めてしまった。 このまま、もうオレの声は届かなくなるんだろうか… 「…その人と今度いつ会うの?」 オレは恐る恐る聞いた。 どうせ教えてくれないと覚悟して。 「今日、実はここに呼んだの。でも、シロがそんなんならやめておく。だって感じ悪いから」 …智、その人多分ダメって言っても来ると思うよ。オレがどんな顔してるか気になって仕方ないんだ。 「智ちゃん。」 ほらね… 「あ! 向井さん!ごめんね!さっきメールしたんだけど、シロ今日は僕と2人がよかったんだって。だから今日は帰って、ごめんね」 向井さんはオレ達の席まで来ると智の声なんて届いていない様に話す。 「あぁ、シロくん。こんにちは! あ、髪の毛の色かわいいね、よく似合ってる」 「オレ、帰るよ…」 席を立とうとすると向井さんが目の前に立って邪魔する。 「どいてよ」 凄んで睨みつける。 「も、シロやめて…そんな顔しないでよ」 智の声が痛い。 でも、このままここにいたら絶対お前を傷つけるから。この食わせ者が要らないことをペラペラ話し出す前に早くこの場から立ち去りたい。 「シロくん帰るの?寂しいな、でも智ちゃんが居てくれるならいいか」 スッと俺の前から退いて智の肩に触れる。 弟を人質にした兄貴みたいに… 「じゃ、智また後で…」 そう言って向井さんとすれ違った時、何かポケットに入れられて、オレは足早にその場を去った。 止まらないで歩く、信号も赤なら違う道を歩く。止まったらまた追いつかれて何かされそうで、オレはひたすら歩き続けて駅まで着いた。 だいぶ涼しくなってきたのに、早歩きしたせいか汗がにじむ。 ジャケットのポケットに何か入れられた… 電車の中、恐る恐るポケットの中身を確認する。 オレの携帯の横に二つ折りにされた紙が入っていた。 そっとそれを取り出して掌の中で開けてみる。 中には誰かの携帯の電話番号が書かれていた。 向井さん智としたんだ…。 オレにしたみたいにしたのかな… それとも優しくしたのかな… 人も少ない平日の昼過ぎ、電車の車内…ぼんやりと車窓を見ながら考える。 いったいあの親子の目的は何なのか? 向井さんは依冬の父親の部下だから、依冬の父親の意思で動いてるんだろ? じゃあ、この前開店前の店に来た依冬の父親が言っていた事とは辻褄が合わないじゃないか…あの親父は向井さんと一緒にオレとセックスしたがっていた…部下である向井さんはオレを部屋に連れ込んだこと、事後報告した事になる。 つまり、依冬の父親と向井さんは絶対服従の関係にないということ。そう考えると、智に近づいたのは依冬の父親の指示と言うよりも、あの人の性癖だ。 いたぶったオレが智の事に対してどんな反応をするのか見たかっただけなんだ。 じゃあ、依冬と依冬の父親はどうなの? オレの言った"湊に呪われてるみたいだ"という言葉に反応した父親。 息子が1人死んでると支配人は言っていた。息子は依冬だけじゃないの?死んだ息子は誰なの? …確かオレを湊と混同した時、あの父親、お父さんが好きだろ?って言っていた気がする。 まさか、湊は依冬の兄弟って事なのか? …誰かに確認する必要がある。 向井さんは多分智をボロボロにするだろう。 それをオレに見せつけたいんだ。 弟をだしにオレを服従させた兄貴の様に。 そうなる前に智を助けたい… 嫌われてもいい、酷い目に遭う前に助けたい。 ふと、手元の紙に視線を落とす。 あ、その為のこれなのか… 丁寧な筆圧で書かれたボールペン字の電話番号… 智を守るためにオレが動くと思ってるんだ。 行動を読まれてるんだな… 間抜けなオレ 「お父さん…も、ダメ…ん、イッちゃう…」 真昼間の親父の書斎… 少しドアを開けて中を覗き見た。 ソファに乗せられ股を開き仰け反る湊。 あいつは湊の足を掴んで顔を上げ下げしている。でかい背中と小さい湊の幼さがやけに対照的で目に焼き付いた光景。 「かわいい湊…こっちにおいで」 優しい声で湊の手を握りソファに座った自分の膝に乗せて快感に体を跳ねさせる湊のモノを扱きながら腰を抱きあいつの小さな穴に大人の太いモノを埋めていく。 「んっ…はぁ…、はぁ、はぁ…んん…いたい…、お父さん…痛い…や、やぁん…んんっ!」 体をよじって嫌がる湊の中に無理やりねじ込んで腰を動かす。あいつのモノが入るたびに小さな体が硬直するみたいに跳ねる。 「あぁ…気持ちいい…湊、お利口だ…もっとお父さんを喜ばせて…ほら」 大きな男の膝の上で仰け反る子供の体。あばらが浮き出て小さな乳首をいじられ顎を上げてよがる…湊…かわいい… 親父が湊を書斎に呼ぶ…俺はこっそり中を覗いてマスをかく。 部屋に戻った湊を今度は俺がいたぶる… こんな事を日常的に繰り返していた。 中学校に上がり、俺と湊は別の学校に行った。俺は母の期待通りに進学校へと進み、湊は地元の公立中へと進学した。 ほぼ半日以上湊がどこで何をしているのか分からない状況が辛くて、もしかしたら学校で他の男と何かしてるんじゃないかと疑心暗鬼になった。 「湊…今日帰りが遅くない?」 部活動を終えて帰ってきて玄関で靴を脱ぐあいつの背中に話しかける。制服から見える白くて柔らかい肌…汗ばんだ首元…こちらを見てごめん、と呟いたピンクの唇…全てがエロかった。 「何してたんだよ…どこで何してたんだよ…」 そう言って俺は湊に覆いかぶさると制服の上から湊の体を触った。 「…依冬、やめて…」 親父には喜んで触らせる癖に… 「…ん、依冬…お母さんに見つかるから…」 俺は湊の頭を持って上を浮かせると貪る様にキスをした。お前は俺のものだろ… お前を誰にも渡したくない… 俺の知らないところで、誰かと話したり、触れたりなんて…耐えられない… 「何してる…」 玄関が開き親父が俺を凄い形相で見る。 あんたの大切な湊は俺のものなんだよ… 親父は俺を突き飛ばすと湊の手を掴んで引っ張った。まだ片方靴を履いたままの湊は足をもつれさせながら引っ張られ親父の書斎に連れ込まれる。 俺はその後をゆっくり追いかけ閉ざされたドアの前に立ち中の様子を伺う。 パチンと引っ叩く様な音がして、その後すぐあいつの喘ぎ声が微かに漏れ聞こえる。 …俺のなのに ドアの取手を掴む自分の手が怒りでわなないている事に気がつき、俺は書斎のドアを蹴り破った。 中に入ると制服のズボンを下げられ後ろ手につかまれた湊が親父に激しく攻められていた。俺はすぐ側に寄って行き湊の顔を持ち上げてキスした。腰を突かれる度に小さく呻く唇を塞いで自分のモノを扱きながら眺める。 堪らなく興奮する。 「依冬…出てけ…はぁ、はぁ…湊に触るな…この子は俺のだ、お前のじゃない…」 腰を動かし喘がせながら親父は俺に話しかける。 「湊は俺んだよ、ずっと前から俺のだ」 俺は苦悶に歪む湊の頬を撫でながら親父に言う。 「…んっ、んんっ…お父さん…あっ、ん…やだ…やだぁ…ん…イッちゃう…イッちゃいそう…」 口を半開きにして快感に酔いしれる湊の顔に興奮して、俺は自分のモノをあいつの口に入れると顔を押さえて腰を動かした。 柔らかい唇…熱い口の中…舌に押し付ける様に腰を動かす。かわいい呻き声を漏らしてあいつにイカされても俺は湊の口の中を犯し続けた。 2人の男に取り合う様に犯され、ぐったりとうなだれ床に座る湊を前に今度はどちらがするかと牽制する。 「俺の方が気持ちいいだろ?」 湊の髪を掴んで上を向かせ俺は聞いた。 ふふっと笑みを浮かべて目から涙を流す湊が可愛くて…求める様に口にキスする。 あいつはそれを見て湊の腰を掴み上に持ち上げて挿入する。 「何してるの…!」 母親の悲鳴で場が白けた。 親父はまだ湊を抱いてる。 オレは顔を俯かせ泣いて突っ伏す彼を見て美しくて愛おしく思った。 取り乱した母親が親父を湊から引き剥がし喚く。自分の愛した夫が妾の子供にまで夢中になるのは悲劇だろう…息子までそうだからもっと悲惨だな。 次の日の朝、父親の書斎で首を吊り死んでいる母親が見つかった。 俺はこれで湊といつでも出来ると喜んだ。きっと親父もそう思ったに違いない。 俺は1人ベッドの上で湊の感覚を思い出しながらオナニーして果てる。 「…はぁ、はぁ…お前が欲しいよ…」 シロはどうだろう… 俺を誘うような目つきで服を脱ぎ、俺に触れてきた…掠めるように舐めたシロの唇は湊よりも柔らかくて甘かった。 仕事とはいえあの腰つきは卑猥だ… シロを湊の様に抱いたら彼は俺を嫌うだろうか…俺に会いたくなくなるだろうか… 一緒にいる時に見せる気怠そうな表情。きれいな指先の動き、俺の方を見る目… シロを思い出し果てた筈のものがまた大きくなる。 シロを抱きたい… 全部俺のものにしたい。

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