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第15話
早朝に母親が死んだと連絡があった。
オレは仕事から帰り眠っていた頃だった。
「母さん肝硬変で死んだ。」
電話を取った時の弟の第一声がこれだ。
病院に行くのが怖い。
布団の中で体を起こし携帯を持ったまま固まる。
足早に歩く人たちの足音がする。
もうすぐ7:00を迎える頃。
オレは微動だにしないで宙を見る。
家族に会うのが怖い…
「ね、今何してる?」
胸の動悸を抑えながら極力落ち着いた声で話す。
「何かあったの?」
電話口の相手は取り繕ったオレの様子が分かるんだね。心配そうな声で聞いてくる。
「ねぇ…この前テレビで言ってたんだけど冷たい飲み物は体に悪いんだって…本当かなぁ?」
どうでも良い話をして笑う。
「冷たい飲み物って例えば?」
朝の忙しい時間、お前も出勤の準備でもしてたんだろうな…たまに聞こえてくる生活音が慌ただしさを感じて、まるでそこに居るみたいに感じる。
「うーん…冷えた麦茶とか?」
オレは目を瞑ってお前の声を聞く。近くにいるみたいで、安心するんだ。
「体に悪いの?」
「内臓が冷えるんだって」
こんなどうでも良い話をする。
声が聞きたくてかけたからこれで良いんだ。
寝る~と言って電話を切る。
しばらく布団のシワを眺めていたけど、ガバッとめくるとベッドから起き上がってシャワーを浴びた。
通勤ラッシュの余韻がまだ残る駅、電車の乗り口付近で窓の外を眺めながら電車に揺られる。
何も考えず切符を買って新幹線に乗る。
平日の新幹線はガラガラで自由席でも座れるけど、オレは乗降口の窓から外を眺める。
トンネルに入って暗くなる。窓に映る自分の顔を見ると口に締まりがない情けない顔をしている。
家族に会うのが怖い…
オレ逃げ出したいよ…
車窓の中に海が見えてくる。
田舎風景から建物が並ぶ景色に変わっていく。
もうすぐだ…
名古屋駅に着きオレはタクシーに乗った。
お昼過ぎに病院へ着いた。
兄ちゃんが運ばれたのもこの病院だったな…
知ってる廊下を通り地下に向かう。
湿った空気の廊下を歩いて進むと前方のベンチに腰掛けた知ってる顔が待っていた。
「健太…」
名前を呼ぶとこちらを見て部屋の中を指さした。
「顔見てやって」
吐き捨てる様に言って俯く。
オレは言われるままに部屋に入り白い布の被さった物の小さな布をめくった。
…こいつ、こんな顔だったっけ
それしか思えなくて、そっと戻して部屋を後にする。部屋を出ると健太がこちらを見ている。
「ずっと患ってて入退院を繰り返してた。オレも仕事があるからしょっちゅうは来れなかったけど、結局どんどん悪化して死んだ。」
「そうか…大変だったな…。」
フン!と顔を背けオレを軽蔑した顔で見ながら吐き捨てる。
「あんたはいいよな、兄さんからも母さんからも逃れてさ…残った俺ばかり嫌な思いして…」
苦々しい顔をしてこちらを睨む。
「ごめん…」
それしか言えなかった。
親族はオレ達2人しかいないから葬式はせず骨を先祖代々の墓に納めることになった。
「後で火葬場に行って焼いてもらう。明日兄さんと同じ所に入れてもらうから、それまでいろよ…」
釘を刺されオレはうん、と頷いた。
しばらく会わないうちにしっかりして、スーツもよく似合っていた。
昔からこいつには嫌われてたな……
病院を出て空を見ると快晴で気持ちの良い風が頬を撫でた。
丁度、葬儀社の車が迎えに来た。
遺体を入れて火葬場まで運ぶ。
「オレの部屋、他の人も住んでるけど一泊ならしていいよ。」
そう言ってオレを促すと自分の車に乗せて母の乗る車の後を追った。
「なぁ、覚えてる?兄さんの葬儀の時の事。」
車の中、前方を見ながらオレに話しかけてくる。
「…覚えてる。」
オレは当時16だった。
喫茶店のバイトをしていてその日も朝から働いていた。店の電話がなって、何の気無しに受話器を取った。オレ宛の電話の内容は兄ちゃんの自殺を知らせる内容で、頭が真っ白になったのを今でも覚えている。
駆けつけた病院の霊安室で泣き崩れる母と弟をぼんやりと眺めた。
そのまま家に連れて帰りあの畳の部屋に置いた。母は珍しく外出もせずずっと鼻をすすりながら泣いている。弟は兄ちゃんの遺体の側にいて手を握っている。オレは離れたところからただそれを見ていた。
お坊さんが来てお経をあげてる最中も、焼香する時もオレは兄ちゃんを見れなかった。
棺桶に入り蓋を打ち付け小窓でしかもう顔を確認出来なくなっても、オレは兄ちゃんの傍に寄ることが出来なかった。
「シロはなんで兄さんの側に行かないの?あんなに良くしてもらったのに…問題ばかり起こして…あんたが死ねばよかったのにっ!」
やり場の無い憤りをぶつける様に母親がオレの横っ面を吹っ飛ぶくらいぶん殴った。
頭がキンとして鼻の奥に血の匂いがした。その後もオレの髪の毛を掴んで殴ったり蹴ったりした。…兄ちゃんはもう助けてくれない
オレはやられるままボロボロになって床を見ていた。そんなオレを弟は黙って見ていた。
夜中、みんなが寝た後オレは兄ちゃんの傍にこっそり行った。隣に向き合う様に正座して硬くなった手を握った。頭を兄ちゃんの腹に乗せると冷たい空気が漂っていた。重くて反応のない体を肉の塊みたいに感じて体を起こして兄ちゃんの顔を触った。
冷たくて鈍い。
「にぃちゃん…」
それしか言えなかった。
朝を迎えて葬儀社の人が棺桶を運ぶ。
母と弟は泣きながらその後をついていく。
オレはただ2人の後ろをついていき、車に乗った。
炉に入れられる時も火葬場で焼かれてる間も何も感じなかった。
骨になって出てきた兄ちゃんを見て、オレは突然足に力が入らなくなってへたり込み立てなくなった。宙を見て込み上げてくる気持ちが哀しさなのか後悔なのか分からないでいた。
そんなオレを2人は無視して骨を拾っていた。
寺にある代々の墓に納骨してお経を読んでもらう間も涙は出なかった。
何も感じないのはオレが兄ちゃんを恨んでいたからなの?それとも愛していたからなの?今も分からないよ。
「あの時一回も泣かなかったのなんで?」
沈黙するオレに健太は強い口調で問いかける。
「分からない…」
「兄さんはさ、あんたばかり可愛がっていたよね?覚えてる?何か買ってもらうのもあんたばかりで、どこかに行きたいと言うと必ず連れてってもらってたよね?」
信号で止まる車。反応の薄いオレに苛立ったのかこちらを見て怒鳴った。
「特別扱いされてたのに、なんで涙のひとつも流さねぇんだよっ!」
納骨の後、家に居場所を見出せなくてオレは早々に家を出た。だから弟はずっと気持ちを溜め込んでいたんだろう…
「突然で…」
健太はオレの小さな言葉を注意深く聞く。
「よくわからない…」
フン!と言って叫ぶ様に言う。
「オレの気持ち考えたことある?いつも兄さんを取って、俺だってもっと一緒にいたかったのに!あんたばかり…、なんでだよっ!」
「お前、オレがにいちゃんに何されてたのか知ってんの…」
オレの言葉に反応して黙る。
知ってんじゃん…知ってるのになんで、オレを責めることができるんだよ…。
オレの言葉を最後に健太は黙りオレも窓の外を見ていた。
ここにオレの居場所はなかったよ。
火葬場に着き遺体を焼いてもらう。
その間もオレと健太は会話することなく待っている。オレの電話が鳴って席を立つ。
「シロ?今どこにいる?」
「今……名古屋。母さんが死んで焼いてる…」
電話の主はオレの言葉に驚いた様子で話すことを考えてるみたいに長い間黙っていた。
「今から行くから」
そう言うと電話は切られ、オレはさっきの場所に戻りまた座った。
「兄さんはあんたに何もしてない…」
俯いて歯を食いしばる健太の膝に置いた手が硬く握られて震えていた。認めたく無いよな…
「ん…」
オレはそう答えて母が骨になるのを待った。
骨を拾い小さな壺に詰めた。
その後オレは健太の住む部屋にお邪魔した。
「お帰り、あ…初めまして」
家には同居する男が住んでいたが、オレの勘だと多分ゲイだ。オレのせいなの?兄ちゃんのせいだろ?弟はゲイになったようだ…。
「お兄さんかわいい…」
そいつの言葉に健太は苛つきながら奥の部屋を指差してオレに言った。
「あの部屋使っていいから、あまりウロチョロしないで」
「後で人が来るから、ここには泊まらないでその人とホテルに泊まるから…」
オレは健太にそう言って指定された部屋に座った。居心地は最高に悪くて最悪だ。
早くきてくれないかな…依冬
「シロ、口についてるよ?」
オレの口端についた食べカスをペロリと舐めて取る兄ちゃん。その後親指で拭いて頬を撫でる。
弟はそれを見て自分も口の周りに沢山つけて見せた。兄ちゃんは笑ってティッシュを渡して拭いて?と言った。
弟がキャンプに行きたがった時も適当に濁していたのに、オレも行ってみたいと言った瞬間どこに行く?と話が進む。
母親のヒステリーが始まると兄ちゃんはオレを後ろに隠して庇った。殴りでもしたら突き飛ばす勢いで守ってくれた。弟にはしなかった。オレにだけ。
オレを特別扱いするということは、弟を蔑ろにするということ…健太は辛かったのかな…
窓の外を見ながらぼんやり考えていると眠たくなったので横になる。
携帯で依冬と会話した時間を確認して何時ごろ来てくれるか予測する。
「あ、支配人に電話しなくちゃ…」
身を起こして電話をかける。
リビングに人影があるのに気づいた。
あの男危険だな…
そう思いながら支配人と電話して事情を話し今日は休むと伝えた。
「お兄さん、すごくかわいいね」
電話を切るとその男は先ほどより近くに寄ってきていて、口元がニヤけて嫌な感じだった。
健太は家にいるはずなのに何してるんだろう…
「そうですか?あんまりそういう風に言われたことはないな。」
オレはそう言って話を終わらせた。
「やっぱり小さい頃からやり慣れてると無理やりやられても気持ち良くなるの?」
…なんだコイツ
頭にきたが危ない奴は相手にしない方がいい…オレはその場を立ち去ろうと立ち上がった。
するとそいつはオレの肩を掴んで言った。
「細…めちゃそそる」
これが常連の姉さんの言っていたいやらしさなの?オレはそんなつもり全く無いのに、健太の恋人はそそられてしまったようだ…
気持ち悪いし面倒くさい…
「ねぇ、キスだけしてよ?かわいい子としたい。」
オレの肩を抑えて顔を近づけてくるから頭突きをして健太のいる方に逃げた。
後ろから押さえつけられて抱き寄せてくる。
「離せよっ!お前、健太の恋人だろ?やめろよ!離せ、離せよっ!」
オレの首に舌を這わせてクンクン匂いを嗅いでくる。くそ気持ち悪い…
「何してる!?」
健太の声に離れる男。
ヅカヅカ足音を立ててこっちに来ると、健太はオレを平手でぶった。
「あんたはいつもそうやって男を誘惑して、たぶらかす!本当最低だなっ!!」
オレは襲われたのに…頭にきたから怒鳴って言ってやった。
「お前の男の躾がなってないんじゃないか?オレの男は見境なく他人を襲ったりしない!! 兄ちゃんも、今の男も、誰彼構わず襲ったりしない!! お前の躾がなってないんだよ!」
そう言うと荷物を取りに行って部屋を出ようとした。激昂した健太が掴みかかってくる。
「兄さんは俺にだって優しくしてくれた!謝れっ!謝れよっ!!」
「兄ちゃんはオレにしか優しくしないっ!!お前のはついでのオマケだ!!」
そう言い放って家を出た。
最低だ…
依冬いつくるかな…もうオレ帰りたいよ。
しばらく弟のマンションの前で待っているとやっと来た。
車から降りてオレに駆け寄る。オレは走ってあいつの元に行って抱きつく。
「依冬…」
お前はオレにしか欲情しないよな…?
湊とオレにしか…
「納骨は行くんでしょ?」
「わかんない…」
名古屋駅近くに取ったホテルの部屋でオレは依冬をベッドに寝かせて上に跨り胸に顔を寄せて甘えた。
この体勢すごく好きなんだ…
「わかんないって…」
オレの言葉に呆れたように頭を掻いた。オレはその手を取って自分の腰にあてがうとあいつはキュッと抱きしめてくる。
「なぁ、依冬…オレお前が好きだよ…」
ぼんやりと宙を眺めながら言うと、依冬はオレの前髪を反対の手でスッと分けた。オレは依冬の方に顔を向けて這い上がるように顔を近づける。唇を開けて舌を伸ばし彼の唇にキスする。
「お前は、物凄くイケメンで熱くて狂ってる…」
そこが好きだ…と吐息と一緒に吐き出してあいつの口の中に舌を絡ませる。
オレの腰を持つ手に力が入る。
オレお前と早くしたい…
オレはキスしながらあいつのワイシャツのボタンを外していく。あいつはオレの服の中に手を入れて優しく撫でる。撫でられたところが火照って熱くなる。腰が動いてあいつのモノを擦る。
「依冬…したい」
オレは自分のシャツを脱いであいつに覆いかぶさると体にキスして愛撫する。隆々と張る胸板を舐めて乳首をねっとり舐める。
依冬はオレを掴んで押し倒すと上に覆いかぶさってオレの首を舐める。さっきのやつとは違くて凄く気持ちいい…
「ん…依冬…、好き…オレお前が好きだよ」
顔を寄せてキスする。深くて熱くてむせ返るようなキスに頭が痺れる。
片手がオレの体を伝って下に伸びていき、ズボンを脱がしていく…触って…早く触って
「んんっ!はぁ…ん、ぁあ、んっ、んふ…ん」
キスした口から喘ぎ声が漏れる…きもちよくてもうイケそう…なんで?
「依冬…も、挿れたい…ん、はぁ…はぁ、オレなんかすぐイッちゃいそう…も、挿れたい…」
オレがそう言うと、依冬はオレの顔を覗き込みながら穴に指を添わしてグッと入れてきた。
早くして欲しかったせいか凄く気持ち良くて体が跳ねる。オレは両手を依冬の首に回してしがみついた。このまま指でされたらイッちゃいそう。快感をこらえるオレを見て依冬が優しく髪を撫でてくる。あったかい…
「シロ?我慢しなくて良いよ…」
「…ん、でも…んぁっキスして…ねぇ」
オレの声に応えるように覆いかぶさるようにしてキスする。気持ち良くて体がのけ反ってオレのモノがビクビク痙攣する。…イッちゃう…
「んんんっ!ぁああっん! 依冬…はぁ…はぁ」
オレはあいつの背中にしがみつきながらイッた。
依冬はビクビクするオレの体を感じるようにぐっと強く覆いかぶさると顔を両手で包んでキスしてくる。何これ…溺れそうなくらい甘い
依冬は体を起こすとオレの股の間に入ってオレのモノを咥える。中に感じる指が増えてオレの敏感な部分を擦っていく度に腰に電流が走ったみたいにビクつく。
「依冬…んっ、んん…きもちい…」
オレは体を起こして座ると股間の依冬の髪を触る、ふわりとした癖っ毛でかわいい…
「シロ、もうちょっと横になって?」
そう言ってオレの後ろに布団を置いてもたれさせ、自分のものをオレの中に挿れてきた。
…あ、大きい
「シロ…痛くない?」
心配そうにオレの頬に手を当てて聞いてくる。オレは手を伸ばしてあいつの背中を掴む。オレに覆いかぶさるようにして奥まで入る。
「あっあああっ!! はぁはぁ…あっ、んあぁっ」
大きくて太くて苦しい…
「…シロの中、きもちいいよ…」
オレの肩に腕を回してホールドするとガンガン突いてくる。ヤバい…すごく気持ちいい。
オレは快感を逃すように腕を上に上げて頭の上の布団を掴む。
「あぁっ!依冬…すごい…も、イッちゃう…んんっ、はぁあんっ…あぁっ、あぁあっ!」
オレはまたイッてしまったけど、依冬は体を起こすとオレの足を持って激しく動かし続ける。
「んん…んっ、はぁ、はぁん…依冬、依冬…あぁあっ、ぁあん…はぁ…んんっ、んっ」
頭が真っ白になる…この一方的に与えられ続ける快感がオレの思考を奪っていく。
「シロ、かわい…気持ちいい?」
オレはコクコク頷いて顔を覆う。気持ち良すぎて仰け反るオレの乳首を依冬が舐める。体が跳ねて大きく喘ぐ。
「シロ…シロ…ずっと抱きたかった…」
オレの腰を掴んでゆっくり腰を回し中の締め付けを感じるように動かす。
「んっ、ぁあん…んあっ、はぁ…ん」
オレの勃ったモノを大きな手で握って扱いてくる。強くて大きな手が熱くてすごくきもちいい…またイッちゃう…!
「あぁっ、イッちゃうから…またイッちゃうからぁっ! らめ、あぁあっ!んっぁあああっ!!」
また激しくイッてしまった。
…依冬はまだイカないのかな…
「依冬…?…きもち…よくない?」
オレは彼に跨って彼の顔を両手で包み覗いて聞く。腰をねっとり動かして、オレはもう何回もイッてまた今もイキそうなのに…
「…んっ、きもちいいよ…はぁ、はぁ…」
目をうっすら開けてそう言うけど、硬くなってもイカないなんて…
湊…
オレは依冬の口に舌を入れて熱いキスをする。吐息が漏れるのも許さないくらい執拗にする。オレのモノからダラダラと液が溢れてイキそうなのを我慢しながら依冬を押し倒して、まるであいつをレイプしてるみたいに腰を動かす。
両手をあいつの胸板に置いて腰を動かす。
体に快感が巡って仰け反り小さく痙攣する。あいつの目を見ると気持ちよさそうに目を瞑って感じてる…オレはあいつの顔の前に屈むと睨むような目で凄んで言った。
「依冬…お前はオレの物だろ?下らない事考えてないでオレだけ気持ちよくすれば良いんだよ。全然足りない…お前の狂気が足らないよ…」
依冬は目を開けてオレを見るとオレの後ろ髪を引っ掴み後ろに引っ張る。痛みで顔が歪んで体が逸れる。逸れた首元に顔を埋めると噛み付くようにオレの首筋に顔を寄せる。すごい力に翻弄されなす術もない、オレの腰を掴んでいた手は腕に変わり腰が動く余地もないほどに締め付ける。
「…シロ…俺のこと嫌いにならないで…」
耳元で低くそう言うと下から突き上げるように激しく腰を振ってきた。
「んんっ! んぁっ!ぁあっ!! や、やぁん!!」
髪を引っ張り上げられ歪む顔を舐める。目を開けて彼を見る。瞑ることなくオレを凝視する
…その目
オレに有無を言わせない圧倒的な力の差。
あいつはオレをベッドにうつ伏せに寝かすと後ろから挿れて激しく突く。オレの両腕を後ろ手にして背中に押し付け尻を突き出させ激しく責める。
「ぁあああっ! 依冬っ!!ああっ!!」
オレのモノが勝手にイッてダラダラと精液を垂らしている。悲鳴に似た叫び声の様な喘ぎ声…
「…んっ、シロ…イクっ…! んんっ! はぁ…はぁ」
あいつのモノからドクドクと吐き出される。熱い精液がオレの穴からドクドクと漏れていく。オレの足はガクガク震えて力が入らない…イッてるのに依冬はまだ腰を動かす。穴から掻き出される精液がオレの太ももを伝い落ちる。熱い…
「もっと愛してあげる…シロ…まだ足りない」
ヤバい…殺されそう…
這い出るように依冬の腕から逃げる。
オレの腰を上から押さえて動きを止めるとオレを持ち上げて自分の膝に座らせる。
「やら…やめて…」
オレの言葉に興奮するように腰を掴むとオレの中に大きくなったモノを入れてきた。
「はぁっ! んんっ、や、やだぁっ…!!」
オレのモノをキツく扱きながら下から激しく突いてくる。まるで凄いあそこがキツい女とセックスしながら掘られてるみたいに快感が下半身全部にくる。
「あぁああっ!らめ!やめてっ…おかしくなるっ!依冬っ!!やだぁっ!!んんっ、んっ…あっ!」
尾骨から背骨に鋭く電気が走ったみたいに痺れる…本当におかしくなりそう…
オレの腰をホールドするあいつの手を叩いて退かそうともがくけど、もがけばもがく程お前は興奮してオレを犯す。
「やらっ!やだぁ!! んんっぁああっ!!」
激しく体を仰け反らせてオレのモノが射精する…オレの背中に噛み付くようにキスしてまるで念願の獲物を捕獲したみたいに何度も何度も体を舐める。
湊…!!
「違っ…んん、違う…! 湊じゃ…ないっ!!」
オレはあいつの顔を見ようと体を捻ってあいつに抱きつく。顔を両手で包んでキスして抱きしめて目を見る。ギラギラしてニヤつく顔…ペルソナが極端で狂ってるけどオレはお前が好きだよ。おでこを合わせて目を見て言う。
「オレは誰?」
「湊…」
胸が痛いよ…依冬、失恋した気分だ…
もう一度聞く。
「お前の事が好きなオレは誰?」
「…シロ」
悲しいな…
お前は湊と思ってオレを抱かないとイケないの?
オレじゃなくて…
辛い…
依冬の体を抱きながらショックをごまかす様に立ち上がる。簡単に腕から抜けられるのを寂しく思うのは何でだろう…
「もうしない…痛いの嫌だから…バカ!」
フン!と言って風呂場に行く。
風呂場のドアを閉めてシャワーを流す。
まだ冷たいのに頭から浴びる。
涙がポロポロ溢れて胸が痛い。
…もうやだな
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