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第17話
眩しい光が顔に当たって目が覚める。
隣を見ると向井さんが寝てる。
この人こんな顔するんだ…そう思って顔を指でなぞる。
うっすらと目を開けて俺を見る目がぼんやりしていていつもの狡猾さが抜けてしまった様に見えた。
「看病してくれたの?」
思ったより自分の声が出なくて驚いた。
オレの頭を撫でて額にキスすると後ろ向きに抱きしめてきてオレの目の前に体温計を差し出した。
「シロ、測って」
体温計を脇に挟んで測る間ずっと髪を撫でてキスしてくる。
ピピピピ
「37.0℃だって」
オレがそういうとふ~っと息を吐いて良かった、と首にまたキスした。
「昨日倒れた時は39.0℃だった。シロがしたいって言ってきてエッチした時は多分もっと高かったと思う。ねぇ、覚えてる?」
「うん…」
気がつくと汗を沢山かいてて服が湿ってた。
「シャワー浴びたい」
オレが言うとどうぞと立ち上がって扉を開けてくれた。
ベッドから降りるとブカブカのスウェットがストンと床に落ちて、顔を見合わせて笑った。
「ねぇ…熱出た時エッチしたがるの昔からなんだ…何でか知ってる?」
オレは脱衣所で服を脱がしてもらいながら話す。向井さんはオレの体にキスしながら聞いてくる。
「何で?」
「風邪やインフルエンザをうつすためだよ。人にうつすと治るんだ。」
そう言って彼の首に腕を絡ませてキスする。
感謝の気持ちを込めてオレから熱心に舌を絡ませていく。
あぁ…!にいちゃん…にいちゃん…!
向井さんにオレが溺れそうだ…
この人は兄ちゃんじゃないのに…
甘ったれてバカだな…オレ。
シャワーから上がると向井さんがキッチンに立って何か作っていた。
足が自然と彼の方に向いて近づいて後ろから腰に手を回して抱きしめる。
「甘えん坊だね」
「何作ってるの…?」
「お粥」
「え、お粥嫌だ」
「卵を入れたよ」
「味しないから嫌だ!」
オレがそう言うと味するよと言って鍋から少し掬ってふぅふぅした後オレの口に入れた。
「味する」
ね?と言って器に盛ってカウンターに出してくれた。
「向井さん、料理上手だね。」
オレは作ってもらった味のするおかゆを食べながら話した。
「昔、調理場で働いたからかな。」
そうなんだ、と言って周りを見回した。
ここって智と一緒に住んだところなのかな…
「ここで智と暮らしたの?」
オレの質問に一瞬戸惑った顔をして洗い物をしながら違うよと言った。
オレはお粥をあっという間に平らげてご馳走様すると流しに持っていき、また後ろから抱きついた。
「シロが甘えん坊なのは何で?」
洗い物をするお前の背中が兄ちゃんにそっくりだからだよ。
こうすることを我慢できない…
「…わかんない」
そう答えたけど多分気付いてるでしょ…
「お兄ちゃんのお墓にも行ったの?」
洗い物を終えタオルで手を拭くと彼の腰に回したオレの手を浮かせてくるっと向かい合う様にする。まだ少し湿った手でオレの頬を包んで見下ろす。目が前と違って優しくてオレは向井さんの首に手を回してキスした。熱くてとろける様なキスを貰って足元がふらつく。
「向井さんの本当の名前って何?」
キスしながら聞いたけど答えなかった。
「シロくんの体重は?」
オレの体を持ち上げて抱っこするみたいにするから恥ずかしくて暴れた。
そのままベランダの方まで連れてこられて外に出る。風が吹いて髪がなびく。
「あ、風邪ひいてるんだった。」
そう言ってまた室内に戻ろうとするから、ここがいいと言って下ろしてもらった。
街が眼下に見えて六本木ヒルズって凄いな、と思った。振り向くと向井さんがオレを見てるから、笑顔で教えてやった。
「オレは58キロくらいかなぁ」
「軽いね、昨日散々抱えて歩いても平気だったから気になってたんだよ。」
だって。変なの。
オレは向井さんに正面から抱きついて腰に手を回し胸板に頬擦りした。
依冬と違う、オレのものだ。
「冷えるから中に入ろう。」
そう言って手を繋ぐとお姫様みたいにエスコートされた。
「あ、今日レッスンあるんだ。そろそろ帰る。」
時計を見て思い出し慌てて自分の服に着替える。
上質の肌触りとお別れだ。
「帰したくない。ずっとここにいなよ。」
向井さんがオレを抱きしめてキスをしてくる。
かかる息が心地良くてもっとキスして欲しくなる。
「向井さんの本当の名前は?」
キスの応酬に目を閉じながらもう1回聞いた。
「まだ教えない…」
そう言って舌を唇に入れて熱いキスをした。
着替えたTシャツの中に手が入ってきた、オレ帰らなきゃいけないのに。
「…んっ、向井さん…帰らないと…んっぁふ」
壁に押し付けてキスしながら捲り上げたシャツの下の乳首を指でなぞる。
したくなるから…
「ね、したくなるからやめてよ…」
オレの声も無視してひざまづくとオレの乳首を舐め始める。
「…ん、んっ…あぁ…ね、むかいさん…や、ん」
オレのズボンを下げてモノを舐めながら扱く。
「はぁ…んっ、ダメだって!早く行かないと…んっあぁん…はぁ、はぁ…ん…きもちいぃから…」
オレを後ろに向かせオレの乳首を触りながら腰を突き出させて指を入れてくる。気持ちいい…
「やらせて?シロかわいぃ…たまんない…」
にいちゃん…
オレの中に硬くなったモノを押しつけてググッとはいってくる。壁に両手をついて耐えるけど、きもち良くて勃起したオレのモノはビクビクしてる。
「イッちゃいそう…んんっ!オレ、すぐ…イッちゃいそう…!」
後ろにのけ反って向井さんを仰ぎ見るけど、オレの方を見て優しく笑う顔が…兄ちゃんに見えて…
激しく腰がびくついて足がわななく。
「はぁ…ぁあんっ!にいちゃん! イッちゃう!」
オレは足をガクガク言わせてイッた。
向井さんはオレの腰を掴んでねちっこく腰を回すと、また突き上げる様に動かしてくる…ダメだよ…おかしくなるから…
「ぁぁあん…にいちゃん…らめぇ! にいちゃん…ぁあっ!…んっ、んっ…ぁん…」
オレのイッたばかりのモノを扱きながら突いてくる…。トロトロと液が流れてグチュグチュといやらしい音を立てる。オレの胸を起こして乳首を触りながら首筋に舌を這わせる。
立ってられないくらい気持ち良くてまた足が震える。
「…はぁ、はぁ…シロ?兄ちゃんも…んっ…イッて良い?」
耳元で囁かれて…にいちゃん…にいちゃん…!!
「にいちゃん! シロの中に…んっ、ちょうだい…!いっぱい…ちょうだいっ!!」
腰を持つ手に力が入ってオレの中でドクドク温かいものが吐き出される。にいちゃんがオレの中でイッた…と思うと、オレは勝手にイッてしまった。
だんだん向井さんが本当に兄ちゃんに見えてくる。
オレ壊れてるのかも…この人を手放せない。
「シロごめんね、兄ちゃんが送ってくからお風呂で洗っておいで」
オレはうん…と言ってダラダラ流れる精液をそのまま垂れ流しながらシャワーに行った。
「シロくん!おはよう!」
陽介先生は今日も元気だ。
「先生、オレこの曲でやりたいな。」
オレはあの後向井さんに家まで送ってもらい、自宅で着替えをして荷物を持ってまたスタジオまで送ってもらった。
レッスンにはギリギリ間に合った。
事前に目星をつけた曲を先生に聞いてもらう。
「シロファンの俺としてはこの曲でどんな風にシロが踊るか見えてくるぜっ!」
そう言うと陽介先生はオレの踊りたい動きを要所要所に入れて構成してくれた。
「一回踊ってみるから見てみて?」
緩急のついた動きと、ダイナミックな動きがミックスされていてカッコよくてワクワクしてくる。
「すごいカッコいい!オレ頑張ります!」
感激して喜んでいると、先生はハイタッチ待ちしていたのでそっと近づいてパチっと手を打った。
いつも使う筋肉と違う部分を使うからもっとトレーニングしないとバテてしまいそうだった。
「これ踊ったらかわいいシロから爆イケシロに変身するね!」
わぁ…すごく魅力的だ!
動画も撮ったし、自宅で出来そうなトレーニングも聞いて今日のレッスンは終わった。
「シロくんの踊り凄く好きだよ?」
着替えるオレに陽介先生が声をかけてきた。
「オレ、のんけだけど何回か勃ったもん!」
そんな事話すからおかしくて笑っていると近くに寄ってきてオレの肩を掴んで真剣な顔で言った。
「オレ、シロくんなら抱けると思う!」
抱かなくて良いですよ…と言って笑いながら遠のいた。変な道に進まないで…そのままで居て…
今日は家に帰ってこれもう1回見てみよう~!
スタジオを出て街中を歩く。
通りがかりの高級ブランド店から知ってる顔の人が出てきて相手もオレに気がついた。
「シロくん、こんな時間に歩いてるなんて意外だよ…元気にしてる?」
依冬の父親は嬉しそうに声をかけてきた。
オレはハッキリ言ってあんたが怖いよ…
「オレも昼間は歩くんですよ」
じゃ!と言って通り過ぎようとすると、依冬の姿が見えた。
この前の彼女とは違う女の子と一緒に同じお店から出てきた。
「依冬はあの彼女とは別れてね。シロくんのおかげだよ。ありがとう。」
どうせその女も湊には敵わないよ…
オレはこちらを見る依冬によっ!と言って通り過ぎた。
オレと会えなくなるから絶対別れないって言ってなかったっけ…
なんだよ…
良いよ…別に
家に帰って先生の動画を何回も見る。
夢中になって雑念を忘れさせてくれる。建設的な時間の使い方だ。
電話がなってYouTubeが止まる。
「もしもし?ん、間に合ったよ、ありがとう。今?今は家で動画見てる。ん、はい。またね」
向井さんからの連絡電話だった。
またYouTubeに戻って踊りを見る。
もっとトレーニングして鍛えないとな…。
オレは久しぶりにヨガマットを広げて幾つかのストレッチとプランクをする。プランク、前は10分は余裕でいけたのに、5分もしたらキツくなった。年…年なの…!?
体の衰えが怖くなった。
これらはインナーマッスルが鍛えられるから、見た目的にマッチョになる事は無いんだ。オレは肌を出して踊るから、余り筋肉質にならない様に気をつけている。
楓の体は綺麗だよな…あんな男とするのはもったいない気がする。
もっと上等な…依冬の父ちゃんの傍が似合いそうだな…
疲労のせいかくだらない事をぼんやり考え込んで頷いていた自分が恥ずかしくなった…
ベッドに突っ伏して顔を布団に埋める。
少し寝よう…熱出たばかりだし…疲れちゃった。
16:00 アラームで起きる。
シャワー浴びて着替えて仕事に行こう…
眠い目を擦って浴室に行く。服を脱いで鏡に映る自分の体を見る。胸板はそれなりにあると思う。腰が細い、手足が細い。踊ってもカッコよく見えるか心配だ。
シャワーを済ませて髪を乾かす。美容室行こう…頭が伸びてきて黒いのが見える。そしていつもの服に着替えて家を出る。
歌舞伎町に向かう途中名前を呼ばれた。
「シロ!」
声の方を見るとオレにオーディションを勧めてくれたお姉さんがいる。
「お姉さんこんばんは~。これから何処か行くの?良いな~」
オレがそう聞くとすかさずレッスンの進捗を確認された。
「ちゃんとオーディションに向けてやってるよ!背中押してくれてありがとね!」
「偉い!さすがあんたは根性のある子だ!」
肝っ玉かあさんみたいだ…
オレはお姉さんに別れを告げて店に向かった。
支配人に挨拶してダウンを返す。
風邪と疲労でもう倒れません、と宣誓して地下の階段を下りた。
控え室に入ると楓がメイクを始めていた。
「おはよ!」
挨拶して隣に座る。
オレ今日どんなのにしようかな…?
チラッと楓を見るとキラキラのスパンコールが目元についてて綺麗だった!
「楓凄いキラキラしてる!美しさが増すね」
オレの言葉に気を良くしたのかいくつかオレの目元にもつけてくれた…まだメイクしてないのに…
「シロ、この前あの店でやったSM対決が話題になってるよ。あれで1回踊ってみたら?」
楓はそう言って鞭を打つ真似をする。
「そうなんだ~インパクトあるし、悪くないかもね」
そう言うと楓はオレにグイッと迫り真顔で言った。
「僕打たれる役やりたいから…本気でやって良いから…やる時声かけてね」
お前はどこに向かってるんだよ…
適当に返事をしてメイクを続けた。
衣装は…ちょうどSMの話が出たしこれで良いや。
皮の黒い短パンにガーターベルトを上からつけてオレの美脚に網タイツだ。
上は肌に直接付ける黒いベルトの首輪と胸元を強調するベスト型のベルト…これの上に体のラインの出る襟付きの黒いベストを着た。
「ねぇ、楓これ見て」
オレが衣装を見せると楓は大興奮してメイクの追加をしてくれた。
「シロ、今日は女王さまだよ?いい?女王さまだからね!」
オレは今日女王さまになった…
19:00 店に出ると向井さんがいて女王さまのオレを見るととても喜んだ。そっか…この前鞭振ってるの見てるからしっくりくんだな。
シロの鞭めちゃ痛そうだから俺にはしないで…と怯えて見せた。
ハードロックかサイバーパンク化したオレは客相手に大いに女王さました。
DJに曲を渡した。それでこれ踊るの?って言われたけど、オレの女王さまのイメージにピッタリなんだよね。
しばらくすると陽介先生もやってきてやっぱり衣装に夢中だった。
依冬は来ないよな…
「シロ、ハードだね…良いよ。良いよ。そろそろスタンバイしてね」
なんだ、支配人までみんな打たれたいんだな…
オレは控え室に行ってカーテンの裏に行った。
手に鞭を持ってたたずむ姿はほんと女王さまだ…
しっとりしたバラード調の音楽がなってカーテンが開いた。
オレは女王さまみたいにカツカツ歩いてステージの真ん中に立って止まる。大股を広げしゃがんで腰をすくう様に立ち上がって最初の鞭を打つ。
バシィィン!と良い音をさせてしなる鞭。
観客から歓声が上がる。みんな好きだな。
この曲は女の人の嫉妬を書いた曲。怒ってなかったら鞭なんて振るわけないだろ?
鞭を引っ張りパシィンと音を鳴らせてガーターベルトを外す。そのままポールに掴まって回ると途中で止まって網タイツを脱いだ。
ベストを思いっきり引き裂くとボタンの部分のマジックテープが剥がれてオレの体に張り巡らされたベルトが見える。
キャーーー!!シローーーー!シローーーー!!
すごいなぁ…観客が極まる
オレはベストを体を逸せながら肘の方へ滑らして落とした。打たれないか怖がりながらチップを咥えて寝転がる客の頭の上を通りながら、鞭を引っ張る様に持ち前屈で口で取りに行く。腹筋が死ぬ…陽介先生が口に咥えて身を乗り出すからオレはポールにジャンプして乗り仰け反りながら受け取った。
どんどん慣れてきている…心配だ。
最後は四つん這いになって前傾になったまま両手で皮パンを膝まで下げていき勢いをつけて立ち上がってずり下がった皮パンを回転しながら蹴飛ばして鞭を打った。
シローーーー!ギャーーーー!しぬーーーー!!
決まった…
控え室に戻ってメイクを落とす。
だってハードすぎて疲れるから…
Tシャツと短パンにしてメイクもいつもの感じに戻して店に戻った。
客が沢山チップをくれる。こんなにSM要素って需要があるのか…
良い武器を見つけた。
首からお札のネックレスをぶら下げてカウンターにいる向井さんに甘えた。
「こんなに貰った…凄いよね?」
オレの頬を触って親指で唇を撫でるからオレはその指を舌で撫でる。
腰を掴む手がオレを引き寄せる。
そのまま向井さんの方に近づいて首に手を回して舌を出して濃厚なキスをした。
「シロ、かわいかったよ」
最後にチュッと軽めのキスをしてオレを褒めた。
オレはニコッと笑って後ろを向いて向井さんにもたれながら首のお札のネックレスを外した。
「シロくん…」
声の方を見ると陽介先生がアワアワして見ていた。
オレ達のキスを見て動揺してしまったようだ。
「ビックリした…?ごめんね、気づかなかった」
オレは向井さんから離れて先生の席の隣に着く。
「先生、チップありがとう。先生もSM好き?」
オレの問いに返事がなくて、先生の方を見るとまだ固まったままオレを見ている。
「のんけの人はそうだよ、ビックリするんだよ…でも大丈夫、もうやらないから…」
オレは慌てて先生の腕を掴んで揺すった。
ハッと我に帰ると先生はオレを抱きしめて言った。
「俺と結婚して下さい!」
バーテンダーが良いタイミングでクラッカーを鳴らす。
なんなんだ…まったく
年上の彼女に振られてしまった…
度重なるデートのドタキャンに父親の差し金のシロとは違う別れさせ屋にまんまと引っかかり目の前からいなくなってしまった。
間髪入れずにお見合いが決まり俺は今貿易会社社長令嬢を相手に交際をスタートさせている。
キリの良いところで終わらせる。
そのつもりだったのにどんどん相手のペースに飲み込まれてる。
そんなタイミングでシロにバッタリあった。
会えて嬉しい反面嫌なところを見られてしまった気持ちが残る。
シロが母親の訃報を受け取った日の朝、珍しく彼から電話があって様子がおかしい事に気がついた。しばらく時間を開けてシロがいつも起きる頃にもう一度電話を掛けると今名古屋に居るって言う。
まるで思いを吐き出すかのように語った彼の過去を覚えているから、何としても彼の傍に居てやりたかった。
俺は仕事とデートをキャンセルしすぐに名古屋に向かった。
落ち込んだ声から察するに弟さんとはあまりうまく行っていない様子だった。
辛い思いをしてるかと思うと胸が張り裂けそうになった。
名古屋駅でレンタカーを借りて、ナビで聞いた住所を入力する。
そんなに遠くない。
急いで彼の元にむかう。
車で通ると、彼は外で立って俺を待っていたから俺は慌てて車を降りて駆け寄った。
俺に抱きつく彼はまるで保護者を待っていた子供みたいで、待たせたことを悔やんだ。
ホテルを取って彼を部屋に入れる。
心身が疲れてるだろうと思ったから早く休ませてあげたかった。
俺を座らせてその上に乗るのが好きみたいで、可愛らしい体が俺に跨る姿は欲情をそそった。
シロといると湊に出来なかったことが出来る。例えば恋人のように笑い合ってセックスするなんて、俺は湊には出来なかった。
優しいキスも、ささやく甘い言葉も、ふざけたやり取りも…どれも湊に与えることが出来なかった。
もし、俺が湊にシロにするようなことが出来ていたら…未来は違っていたのかな…
まだ湊は俺のそばにいてくれたのかな…
そんな考えが起こる。
シロは俺を好きだと言ってくれた。
この狂気も含めて好きだと…
彼を初めて抱いた時に感じた幸福感は湊では得られなかったものなのに、俺は結局シロに乱暴してあの人を湊に置き換えて射精した。
また湊が抱ける…そう思ってしまった。
その思いはシロに伝わって、彼をきっと酷く傷つけただろう…。
シロだとイケないのか…刺激が足りないのか…
あんなにかわいく喘ぐ彼は刺激そのものなのに…
自分がドSすぎてイケないのか…
では湊に置き換えないでやれば良いじゃないか…
自問自答して自分で自分が嫌になる…
繊細で脆い…以前向井に言われた言葉。俺が湊を求めてしまう以上彼の心は傷つくのだろうな…。
俺がこんな不甲斐ないからシロは向井と会うのをやめないのかな…
シロのお兄さんに似てる…?
あの陰湿そうで狡猾な彼が?
俺はあの人の事は大嫌いだがシロには必要な人なのかもしれない…
お兄さんのことであんなに取り乱して、相当なトラウマだ。
もしかしたらシロが1番不安定で危なっかしいのではないかと。
ストリップという職業も、自分を性的に見せるなんてお兄さんのトラウマがあったら絶対したくないはずなのに、彼はそれを選んでステージに立つ。俺のことも傷付くと分かっているのに煽ってくる。まるで自分を虐めるように…
いつからなのか、幼い頃の兄弟からの虐待のせいなのか…シロにはそういう危うさがあると思う。
キンと張った琴線がいつか切れてしまいそうで…切れた後の彼を考えると胸が苦しくなる。
その琴線を緩めるのが向井なら…会わせるのを拒む事は結果的にシロに良くない。
向井は彼のお兄さんと似てる…それが事実なら俺の知らない表情を向井に向けているのかな…
悔しい気持ちよりも情けない気持ちが強い。
シロに会いたいな…挽回したい。
また俺にも甘えて欲しい
仕事が終わって向井さんの車で送ってもらったら六本木ヒルズに連れてこられた。
これが送り狼というやつなのか…
オレはシャワーを浴びるとそのまま向井さんとセックスした。
「ねぇ…向井さん?オレのどこがそんなに良いの?エロいところ?」
向井さんに跨って彼の首に腕を巻きゆっくり腰を動かして快感を感じる。
オレのぼんやりとした問いに顔を上げてこちらを見るこの人の顔がにいちゃんに見える…
「儚いところ…」
ポエムみたいなことを言うからオレは吹いてしまった。
儚いなんて言われたこと無いよ…
依冬とは違って向井さんとするセックスは最高にとろける。
大人だから…上手なのかな…
下から突き上げる快感に体を仰け反らすと彼はオレの腰を掴む手を締め付けてもっと奥まで挿れようとする。
…きもちいぃ
「シロかわいいよ…愛してる」
「きもちい…んっ、んぁあ…」
オレは向井さんにしがみつくと彼の髪に顔を擦らせて甘える。
「あん、…んぁ、んっ…はぁはぁ」
しがみついたオレを剥がして顔を覗くように見てくる。また兄ちゃんに見えてオレは堪らない気持ちで向井さんにキスする。
「シロ?誰とエッチしてるの?」
「に…ちゃんとしてるの…」
「兄ちゃんの事好きなの?」
「大好き、大好きだからもうあの人と会わないで…オレだけ見てて…嫌だよあんなの、嫌だ…」
涙が溢れて胸が苦しく揺れる。
「いやだ…なんで…あの人が好きなの…?オレよりもあの人の方が好きなの…?」
優しく頭を撫でてオレの感情の嵐を鎮めるように抱きしめてくる。
「シロ、お兄さんが誰かといるの見たの?」
「向井さん…もっとしてよ…なんでやめるの?もっときもち良くしてよ…オレのこと嫌なの?」
愛してるよ…と言ってまた体が動き始める。
「はぁ、はぁ…んっ、あぁあっ…きもちい…もっと…もっとして…向井さん…きもちいぃ…!!」
体が仰け反って快感が走る。
「んんっ!ぁあん!やぁ…ん、イッちゃう…!」
オレは顔を仰け反らせでイッた。
向井さんはオレの胸元にキスして舌で愛撫する。
頭がごちゃごちゃになる…
「向井さん…ごめん、オレ…なんか頭がおかしくなってる気がする…」
1人で勝手に果てたオレは彼の肩にもたれながら自分の指を一つ一つ動かして背中をトントンと叩く。
「どうしてそう思うの?」
オレの背中を優しく撫でながら聞いてくるその声が優しく笑っていて…
「向井さんがにいちゃんとごっちゃになる」
向井さんの顔を包んで指で触る。
「今も?」
そう言いながら微笑むから…本当に…
「うん…」
髪を撫でて顔を触っても…この人がにいちゃんにしか思えない。
「それでも良い」
そう言ってオレの顔を引き寄せておどける様に顔を傾けると優しくキスする。
「悲しくないの?」
オレは依冬にやられて根に持つくらい酷くショックだったのに…
「俺はねシロの事が好きだから色んなお前が見られるならそれで幸せなんだよ…」
優しく笑って向井さんがそう言った…
幸せだなんて言葉久しぶりに聞いた気がする…
「嘘だ」
「本当なんだな~」
「オレを甘やかすだけ甘やかして、他の人と所に行くんだろ?もう嫌だ…あんな気持ちになりたくない…もうやなんだ…」
項垂れるオレの頭をよしよしと撫でて顔を上げさせると困った顔をして言った。
「お前以外にこんな気持ちになった事は無いから、俺に飽きるまで甘えればいい。飽きたら捨てれば良い。ね?」
オレを押し倒して覆いかぶさるとオレの顔を見つめながらまた腰を動かしてきた。
「ん…でも、でも…そんなの…んっぁあ…悲しいよ…悲しいのは嫌だ…」
彼は体を起こしてオレの乳首を両手で撫でる。
気持ち良くて体が仰け反ると迎えるように乳首を舐めあげる。
「あっぁああ!にいちゃん…に…ちゃん! んっ…きもちい…大好き…にいちゃん…!!」
オレのモノをキツく扱いて反り立たせる。
「や、やぁあ!! らめ、それ…や、ぁあん…!」
「…はぁ、はぁ……シロ…気持ちいい?」
にいちゃん…!!
「んんっ! きもちいぃの…はぁ…んっ! にいちゃん…好き、好き…!!オレ…イッちゃいそう…!」
「まだ…だめだよ」
下半身の快感が体を巡って両足は突っ張って震える。イキたい…!気持ち良くて…我慢できない!!
兄ちゃんに手を伸ばすとオレの方に倒れてきて、もっと奥まで入ってきて苦しい…
「ぁああっ!! にいちゃあん…!イキたい…も、らめ…おねがい…イッてもいいでしょ?ねぇ…んっ」
オレは兄ちゃんの首にしがみつくと猫みたいに頭を擦り付けてイカせて、とおねだりする。
「シロ…かわい…もうちょっと我慢して?」
そう言ってまた体を起こして激しく中を刺激する。オレは体をよじって顔を押さえ快感が頭を巡るのを耐えてる。その間も兄ちゃんの手や指がオレの体を撫でて体が跳ねる。
「あぁああっ! んっんん…、くっ…んんぁ! ら、らめぇ…っ!!んんぁあ…あぁああっ! や、やぁだ!!」
手を上に上げてシーツを掴む。
体が仰け反ってイッてるみたいにヒクつく…
オレのモノからドロドロとすでに漏れてるみたいに先っぽが熱く溶ける。
「ん…はぁ…んっ…シロ…かわい…すごく好き…。俺を好きにして…シロ…シロ…!」
オレの中ですごく太くなる兄ちゃんのモノが痛いくらいなのに…快感が舌まで巡るよ…頭が真っ白になる…! 今すぐイキたい…
「イッても良い…って言ってぇ…んぁあ…にいちゃあん!! だめ、も、んぁあ…ねぇ…、イキたい…!イキたいの…!! はぁ…ん、はっ…はっ…ぁあん!」
「シロ…お利口だね……イッていいよ…」
その言葉を聞いた瞬間、オレは体を跳ねて激しくイッた。自分のお腹に熱いのが沢山かかって突っ張った足先から舌の先まで満たしていた快感が一気に抜けていく。
「…んんっ…シロ…はぁ…んっ!」
同時に兄ちゃんがオレの中でドクンドクンと暴れてイッた。溢れた熱いモノがダラダラと垂れてくる…熱くてトロトロとオレの尻に垂れていく。
オレの頭の横に腕を立てて兄ちゃんはオレを覗く。荒い息遣いで見下ろす汗で髪が乱れた兄ちゃんはすごくいやらしくて儚かった。
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