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第23話

「じゃあ、またね」 シロを家まで送って手を振る。 あの子が家に入るのを確認して携帯に目を落とす。 依冬からの電話。 桜二って…俺だよ。 親父は俺を庇ってあの事を黙ってるんだよ… 俺と親父の関係はある意味共依存で、親父の大っぴらに出来ない裏の仕事を俺がこなして、あいつは俺に金と社会的地位を与える。 取引先の社長にシロを充てがうなんてあいつの考えそうな事だと思った。 ある意味脅し脅されで成り立っている関係でもあるから隙を見せるとこうやって揺さぶってくる。 俺が湊を殺した事を黙ってる理由は分からない。 しかしきっとあいつの事だからいざと言う時の切り札として持っているに違いない。 そしてその時は思った以上に早く訪れるかもしれない… 依冬は俺と共闘してあいつを陥れようと考えている様だ。 ある意味俺は弱みを握られたスパイみたいなものなのに… どうしたら良い…? シロに湊の事を知られたら俺はあの子のお兄ちゃんでいられなくなるのかな…? シロに知られたくない… このままあの子の前から消え失せるか… また兄に裏切られたらあの子は本当に壊れてしまうんじゃないか… それはダメだ。 絶対嫌だ… とりあえずこれから依冬と会う約束をしている。なんとしてもあいつを欺かないと… 新宿駅前で待ち合わせし喫茶店に入る。 どうやら俺の正体にはまだ気が付いていない様子だ。 「その時あいつが勘違いして俺のことを桜二って呼んだんだ。そいつが湊を殺したんだと思うんだけど、あんたはどう思う?」 「さぁね…」 素っ気なく言って手元のコーヒーに出来た波紋を見つめる。 「最終的にお前はどうしたいの?」 依冬の方を向いて尋ねた。 「あいつを会社から追い出して会社を俺のものにする。病院に入院させて飼い殺しても良い。出来れば死んで欲しいがね…」 会社が欲しいのか…意外と野心家だったんだな。 「あいつの恐怖政治を終わらせたい。」 それに関しては俺も同感だよ。 時計を見ると18:50もうすぐシロのお店が開くな…あの子に早く会いたい…笑顔が見たいな… ぼんやりしているとあんたは?と聞かれ外れた視線を依冬に戻した。 「俺は…シロさえ守れれば何でもいいさ…」 その為には俺が居なくなることが手っ取り早いがな… 気の抜けた事を言ったせいか依冬は怪訝な顔で見てくる。 「とりあえず探偵を雇って桜二ってやつを探すから、もしシロにまた被害が出そうな時は必ず阻止してよ。」 桜二は目の前にいるよ。 依冬の話に俺は頷いて応えた。 探偵か…動き出したらあっという間に特定されるな… 持って2,3日かな… 「その桜二の特定が済んだらどうするつもりなの?」 依冬に問いかけて窓の外に目をやる。 「証拠を見つけて殺人罪で起訴するって父親を脅す。もしかしたらゲイの愛人が湊に嫉妬したのかもしれないし、何にせよそいつが父親の弱みという事は確かだから。」 なるほどね…と呟いてコーヒーを飲む。 どうすれば良い…? いつもなら簡単に嘘をついて切り抜けられるのに全然頭が回らない… シロを失う恐怖ばかり押し寄せて来て、平静を装う事で精一杯だった。 依冬の携帯が鳴った。 電話の相手はシロの様だ。 「どうした?」 俺が聞くと依冬は慌てて携帯をしまい席を立ちながら言った。 「俺の見合してる女がシロの店で迷惑かけてるみたいだ…」 全く大変だな…あちこちで煙が立ってる。 お店に行く道でその御令嬢の話を聞いた。 貿易会社の社長令嬢で年は20歳、シロと同学年で依冬の一つ上か…。 1人っ子でフェリス女学院に属し、1年フランス留学後今は国際交流学部に属してるそうだ。 金持ちの嬢ちゃんのお決まりコースだな…。 とにかく一方的に依冬に好意を抱いてしつこく誘うから今日キツく文句を言ったと… その後にこれか… その子にお前の1番の弱みを知られてしまったんだな…これで言いなりになってしまうと思う壺だが、相手がシロではお前は言いなりになるしかないのかな… 店について御令嬢を拝見した。 ブスでは無いが特段綺麗でも無い。普通だった。 傍で腕を組んで困り顔の君の方がずっとかわいいよ。 シロの傍に行って要らないものを見ないように促す。お前はきっと依冬を呼び出す餌にされたと思って嫌な気持ちになるだろうから、あっちへ行こう…。 細くて華奢な体…ムッとした顔もかわいいよ。 ずっと側に居られればいいのに… 「ねえ、抱きしめて?」 俺を真っ直ぐ見てそう言うからギュッと抱きしめる。 ぼんやりして言われるまで抱きしめるのを忘れていた事に気付く。 こんなに動揺するなんてこのまま騙し通せるか不安だよ…。 依冬が彼女を連れて帰る。 その様子からお前がシロを守るために不本意な選択をしたんだと察した。 これでその女はお前が言う事を聞かない度にシロを利用するだろう。 ご愁傷様だ。 あの子のステージをあと何回見られるのかな… キラキラとライトを浴びて美しく舞う姿は大胆で淫靡で美しい。もし会えなくなっても遠くから見守れるかな…。俺が消えたら壊れてしまわないかな…。今まで強く生きてきたから乗り越えるかな…? 散々甘やかせていなくなるんだろ? 前シロに言われた言葉を思い出す。 それが本当になってしまったら…この子はどうなっちゃうのか… 「ねぇ…向井さん?考え事してるの?もう帰ろう…終わったよ。」 気がつくと目の前に着替えも済ませたシロが立っている。 「ごめん、ちょっと考え事してた。」 取り繕って笑うけど明らかに不自然だと思ってるよね…シロの不安そうな顔を見て更に動揺する。 落ち着け…お前は嘘は得意だろ? 動揺を察せられるな…騙せ。 あぁ…シロを騙すなんて…嫌だな… 車に乗せてお持ち帰りする。 一緒にいたい…そう言ったら良いよって笑ってくれた。 このまま檻に閉じ込めてしまおうか… 何も知らなければ何も変わらない… 檻に閉じ込めて毎日抱いて暮らせればいいのに。 「向井さん疲れてるの?」 俺の体にくっ付いて離れないシロを抱きしめてこの子の温もりを感じる。 シャワー上がりの濡れた髪がくすぐったく頬を撫でる。 「もう寝た方が良いよ。ボーとしてばかりで心配になってくるよ…」 そう言って俺の手を持つと寝室に連れて行ってくれる。 俺のガウンを着て歩く後姿がかわいくて言いなりになる。 俺はお前に知られたく無いんだ… 湊を殺した事を知られたく無い… 「ほら、服脱いで着替えて横になって寝ちゃえば良くなるよ?」 そう言ってぼんやりと立つ俺のズボンを脱がせてシャツのボタンを外していく。俺はシロの顔を持ち上げてキスする。ガウンの下に手を入れて腰を掴んで自分に引き寄せる。 舌を絡めて一緒に気持ちよくなろう… そのままベッドに腰掛けてあの子を膝の上に乗せる。 「シロ、この前シャツでしたいって言ってたでしょ?今しても良い?」 そう聞いてあの子のガウンのベルトを外す。 不思議そうな表情を一瞬見せたが、いいよ、と俺の顔を見下ろしてキスしてくる。 勘の鋭い子だから俺の動揺に気付くかも… あの子は俺の首に手を回してキスしてくる。 吐息と一緒に漏れる声が可愛くてこれだけでいつも充分に興奮する。 腰を掴む手をゆっくりとお尻の方に滑らせて行きあの子の穴を触る。ビクンと体が跳ねて腰がしなる。反対の手でしなった腰を指でなぞると綺麗に反っていて美しい。 穴に指をゆっくりと入れていくとシロの体はビクビク反応して緊張していく。 かわいい…堪らない…。 「あっ…ん、にいちゃん…、きもちい…んっ、あっ…んん…はぁ…ん、あっ、あぁ…」 腰を突き出して俺の指を咥え込んでいく。 いやらしいのに何でこんなにかわいいんだろう…。 逃げていかない様に反対の手で背中を抱き寄せるとあの子の顔が俺の胸板に完全に沈んで柔らかい頬があたる。 足を広げて腰を突き上げる姿がいやらしくて愛おしい。 「んっ! にぃちゃ…ん! あ、ぁあっ!きもちいい…」 俺の腕の中で喘ぐ声が可愛くてたまらないんだ。 「シロ?かわいい…愛してるよ。」 このまま殺しちゃおうかな… 俺の居なくなった後どうせこの子は死んでしまうなら、俺の手で今殺してしまおうかな… 俺にすり寄せる頭を撫でて抱きしめて体勢を変える。俺の下でうっとり俺を見つめるあの子にキスしながらあの子の中に自分のモノをゆっくりと入れていく。苦しそうな顔を一瞬するけど、すぐ気持ち良くなって頬が紅潮する。 「にいちゃあん…きもちいぃ…んっ、ぁあっ…ん」 仰け反った首元を見る。 今ここで… 「にいちゃん…どうしたの?」 動きを止めてシロの顔を見る…離れたくなくて目が潤む。 あの子の顔を触って覚えるように指先でなぞる。 ピンクに染まった柔らかい髪の毛、丸みを帯びて幼く見えるおでこ、ちょうどいい太さの眉毛、目尻の上がったかわいい目元、鼻筋の通った小さな鼻、そして赤く紅潮した頬に可愛らしい唇、その奥に見えるピンクの舌とかわいい歯、ぷっくり肉のついた顎までなぞり首に指を下ろす。 しなやかで何度も貪りついたこの子の首… 締めちゃおうかな… いや…そんな事、できない… 「向井さん…やっぱり今日はもう寝よう?」 シロは心配そうな顔で俺の顔を両手で包んで親指で頬を撫でる。 しなやかで繊細な指触りだ。 今の俺はお兄ちゃんじゃないのかな… 俺はあの子を見下ろして込み上げる感情のまま言った。 「シロ…愛してるよ…ずっと愛してる」 そう言って貪るようにキスしながら彼の中を味わう様にねっとりと腰を回す。 離したくないんだ…離れたくない… 「んっ、んぁあ! きもちい…ん、はぁ…ん!や、やぁ…ん! イッちゃう…にいちゃん~! イッちゃうよ…っ!!」 予告通りにシロの中はグッと強く締め付けてきて俺のモノを締め付ける。 「シロ…んっ、にいちゃん…イッてもいい?」 髪を撫でながら尋ねると半開きに喘ぎ続ける口元から舌が見えて綺麗だった。 コクリと頷いて俺に揺すられるかわいいシロ… お前を本当に愛してる。 体をビクつかせてシロのモノから精液がドクンと出るのを見届けて、俺もあの子の中で果てる。 結局この子の首を締めるなんて出来なかった… 想像しただけで辛い気持ちになるから… パンツを履きうつ伏せに伏せてぼんやりとベッドのシーツを見ていると、俺に汚された下半身をシャワーで流したシロが短パンとTシャツに着替えて戻ってきた。 俺の背中に乗って聞いてくる。 「ねぇ…なんか変だよ」 勘が鋭いね…さすがシロには敵わないな…でも俺はごまかすよ… 背中に乗るシロの腰を腕を回して捕まえる。 「何が?」 「とぼけないでよ、2人で何してたの?」 肩をバシバシ叩いて聞いてくる。 シロの乗った背中があったかくて気持ちいい… とりあえず禁断の手“家の事…”を使った。 シロは優しいからこう言えば深く聞いてこないと思って。 案の定、シロはそう…と呟くとそれ以上聞いてこなくなった。 俺の手を外して掌を合わせてくる。 そのまま目の前にシロの手と組んだ俺の手を置いた。 シロの指は長くて綺麗な手をしてる… 指の腹でシロの指を触っていると変な事を言い始めた。 「ねぇ、オレも兄ちゃんに挿れてみたい。」 俺は思わず吹き出して笑った。 シロが俺に挿れるなんて、考えもしなかった…! でも知ってるんだよ。この子がそんな突拍子もない事を言い出す時は大抵探りを入れている時なんだ…明らかにいつもと違う俺の反応を見て探りを入れてきてる…。 いつも通りにしないと…不安がってしまう… 背中にいるシロはもう俺の様子がおかしいのに気が付いた様に優しくキスを落として愛撫する。 やばいな…様子がおかしいのを察し始めてる…そう思った矢先、この子の口から思いもよらない言葉を聞いて俺の心臓が飛び跳ねた。 「どこにも行かないでね…」 俺が目の前から消えそうな気がしたの? お前の元から去る気がしたの? 「こっちにおいで」 そう言ってベッドを叩くけど全然動かない… 「シロ、顔見たいからこっちにおいで」 もう一度声をかけると震える声でこう言った。 「今は良いの!ここにいるの!」 あぁ…どうしよう…シロ…! 泣いているの…? どうしたらいい… 体を傾けてあの子を背中から下ろす。 顔を手で覆って表情を隠しているから、その手をそっと両手で掴んであの子の顔を覗く。 …泣いてる  ショックだった。 俺の様子にこの子は気付いてしまったんだ…不安にさせてしまったんだ… 嘘の上手な俺はいつのまにか正直者の人間になってしまったのか… 取り繕う嘘さえ付けないなんて… 「何で…泣いてるの」 あの子の顔を触って聞いてみる。 「わからない…」 本当に…? シロは俺の変化に気付いたんだよ…すごい洞察力だ。 感心するよ…本当にお前はすごい子だ。 俺はシロの頭に腕を回すと顔を落として優しくキスした。 「泣かなくて良いよ…」 シロの顔の横に顔を落としてあの子のTシャツの中に手を滑らせる。 シロがオレの背中を優しく撫でてくる。 「心配しなくて大丈夫だよ」 そうこの子が落ち着く様に嘘を言う。 本当は自分に言い聞かせてるのかもしれない… 耳元に小さな呻き声が聞こえる。 驚いて顔を上げるとシロの顔が崩れて目から大粒の涙が溢れている。 いつもなら落ち着くはずなのに、俺の行動が今日はどんどんこの子を動揺させていく。 「どうしたの…」 これ以上動揺させたくなくて…そんなことしか聞けなくてごめんね… 落ち着かせようとすればするほど俺の動揺が伝わってしまってこの子を混乱させていく。 もうどう取り繕えば良いのかすら分からない… シロは大きな涙を次々にたたえて俺を見つめて話しかけてくる。 「にいちゃん…また。オレを置いていくの…?また…1人に…するの…?」 もう、このまま殺しちゃおうかな… 「ダメだよ!もう…絶対1人にしないでよ…!」 もう、このまま俺だけの物にしちゃおうかな… そんな考えが沸き起こった時、ふと頭の中にオーディションのダンスの動画を嬉しそうに見せてきたこの子の姿を思い出した。 この子はまだまだ沢山幸せになるはずだから… この美しい命は俺のものでは無いから、手を出してはいけない… 恣意的な自分の思いを蹴散らしてシロを抱き起こして背中を撫でた。 この子の動揺を煽るだけなのに、呪文の様に空っぽの言葉を繰り返してしまう。 「大丈夫だよ…シロ」 「嘘つき…嘘つき…」 シロが悔しそうに俺の背中を叩いたり撫でたりする。 あぁ、この子はほんとに憐れだ…憐れで愛しい… 「行かないで…どこにも行かないって約束して…ねぇ、向井さんはどこにも行かないって言ったでしょ?約束守ってよ!オレとの約束守ってよ!」 俺の顔を見ながら顔をグシャグシャにして縋る。 確かに約束した…破る事になるけど… お前に会える最後の日はそう遠く無いうちに訪れるだろう。 愛しいお前に偽名で覚えられたまま、忘れられるのも嫌だ。 愛しい愛しいシロ…俺の名前を呼んでよ… 「シロ、オレの本当の名前教えてなかったね。」 別に勿体ぶって言わなかった訳じゃ無いんだ…。 本名を知られたら…お前に呼ばれたら…本当にお前の沼にはまって沈みそうで… 偽名を使って一線張っていたんだ…それももう要らないから。 「いやだ!知りたく無い!そんな事より約束守ってよ!」 言わせてよ、俺の名前。覚えてよ、呼んでよ… かわいい愛しのシロに呼ばれたら俺は嬉しいのに… 「オレの名前は桜二って言って桜に漢数字の二を書くの。おうじ様なんて言われた頃もあったよ」 オBQの王二郎とも言われたことがあったがそれは今言わないでおこう… 「…」 「ねぇ、シロ?桜二って呼んでみて…」 「やだよ…呼んだら居なくなるんだろ…知ってるもん、そんなのやだよ!」 シロに名前を呼んで欲しい…。 俺として愛して欲しい… 「シロ…」 「…桜二…」 この子の口から俺の名前が呼ばれた瞬間全身に稲妻が走るくらいの衝撃が走った。 愛する人に名前を呼ばれただけなのに… 偽名でなくお兄さんでも無い俺の名前。 シロに呼んでもらえてこんなに嬉しいなんて… 幸せだ。 「桜二はどこにも行かないって言ってよ!」 かわいい…シロ、愛してるよ 「シロ…愛してるよ…お前は俺の全てだから。」 「さっきの言うまで離さないから!」 死ぬまで離さないでいてくれ…俺もお前から離れたく無いんだから… 「もし!オレの前から居なくなろうなんて…考えてるんなら!オレが今ここで殺しちゃうからっ!!」 シロはそう言うと俺の首に手をかけた。 その瞬間あの子の顔から血の気が引いて、手を離した。 どんどん息が荒くなる。 唇が小刻みに震えて顔から血の気が完全に無くなり、目がゆっくり閉じていく。 倒れる… 首を吊ったお兄さんのことを思い出したんだろう…脱力するあの子の体を支えてゆっくりベッドに寝かすと横向きにして落ち着くまで体をさすった。 シロに殺される事を少し期待した自分は残酷だな… この子はそんな事絶対しないのに… 「シロ、朝だよ」 8:00まだ眠いのに、ご飯のいい匂いに釣られて起きてしまう。 フラフラと歩いてダイニングの椅子に座ると向井さんがご飯をよそってくれる。 「卵焼き何個食べてもいい?」 オレが聞くと全部食べて良いって答える。 兄ちゃんの卵焼きは美味しいんだ。 フワフワなのに歯触りがサクッとしてるの。凄いんだ。 「桜二は卵焼き要らないの?」 オレが聞くと嬉しそうに微笑んで全部シロのために作ったから、と言った。 良いんだ…卵焼き全部オレが食べても良いんだ… 気がつくと目の前に向井さんが眠っている。 時計を見るとまだ4:00だった。変な夢を見た… 向井さんがオレ体に手を乗せて寝てるから重くて変な夢を見たのかな… オレに置かれた手を握る。 居なくなってなくて良かった… 息をしてるか鼻のところに手を当てるとちゃんと生きていた。 突然起こる兄ちゃんのフラッシュバック…いつも忘れた頃にアッパー並みのダメージを与えてくる…冷や汗が出て体が冷たくなる感じが毎回怖くて嫌だ… ぼんやり寝顔を見る…名前を知っただけなのに急に特別な存在になった気がした。 桜二…様なんて…かわいい名前だったんだ… もっと呼びたい…この人の本当の名前… 「桜二…寝てる?」 オレがそう呼ぶと目を薄く開けて寝てる…と言ってオレの頭を抱き寄せた。 「寝てたら寝てるって言えないのに…」 オレがそう言うと脇の下をこしょぐってきた。 彼の体を抱きしめて暖かさを体に染み込ませる。 「桜二って…かわいい名前」 オレの言葉にとうとう起きて横に頬杖をついて寝転がる。 「さっき変な夢見た」 彼の首に腕を巻き付けて胸元に顔を寄せて抱きついて甘える。 「怖い夢?」 「卵焼きの夢…初めは向井さんで次に兄ちゃんが出てきて、最後は桜二だったよ…」 顔を見上げるとこちらを見下ろしてくるから、オレはキスしながら言った。 「桜二は卵焼きオレのために作ったから全部食べて良いって言ったんだ…」 桜二の唇に舌を這わせて口の中に入れていく。 「ねぇ、すごく優しいだろ?」 そう言いながら彼の舌を舐めて吸う。 「ねぇ…お前も優しいよな?」 睨む様な目で見つめて舌を絡める。 絶対離さない…何があっても 桜二の目の奥が揺らいで見えたから上半身だけ起き上がりあいつの肩を押して上から見下ろして言った。 「もしオレの前から消えたら絶対許さないから…お前を探し出して全部無茶苦茶にするから…オレ以外の誰かと居たらそいつを殺してやるから…泣いても恨まれても絶対離さないから…桜二、分かった?」 そう言って相手の返事も聞かずにオレはあいつの胸に顔を置いて寝た。 ただこの男を離したくなかった。 本人の意思なんて関係ない…1度オレのものになったんだからお前の意思なんて無いんだよ… しばらくすると桜二がそっとオレの頭に手を置いて撫でてきた。 ずっとそうしてて、オレが死ぬまでずっと… 8:00 アラームの音で目を覚ます。 隣にいた男が居なくなっていてオレは慌てて部屋を出る。 オレを見つけて笑顔でおはよう、と言う。 その声とキッチンで何か作っている姿にホッとしていつもの様に纏わり付いた。 「眠い、まだ眠い…」 既に着替えを終えていて肌に当たるシャツの肌触りが痛かった。 「俺は9:00には家を出るからシロはここでのんびりしてて、お昼くらいに戻るからその時送っていくよ。」 そう言って出来立ての卵焼きを包丁で切り分けた。 湯気を立ててフワフワな卵焼きがすごく美味しそうだ。 「これ夢で見た~」 オレがそう言って笑いかけるとそうだよ~と笑って答えた。 「ねぇ?桜二、戻るよね?」 ご飯を食べながら目の前の男に尋ねる。 「明け方シロに脅されたから…怖いからどこにも行かないよ…」 と戯けて答えた。 「ねぇ、家の事で何かあったの?」 卵焼きを食べて朝から幸せを感じる。 「ん~、シロには知られたくない事…」 「湊の話?」 「驚いた…何でそう思ったの?」 「依冬と話したんでしょ?あいつは湊のだから、その話かと思っただけ。」 「ねぇ…シロ?オレが湊君を殺したとしたらどうする?」 食べるのをやめて桜二を見る。 彼の目の奥が揺らいでいるのが分かってオレは言った。 「どうでも良い」 立ち上がって桜二に近づいてキスする。 「お前が誰を殺そうとどうでも良い。オレの傍にいたらそれで良い。」 そう言って席に戻って残りの卵焼きを食べた。 「シロ…」 「オレはにいちゃんを殺したし、依冬だって手は下してないけど湊を殺した様なもんじゃん。お前と何が違うのか分からないよ。」 オレはそう言ってご馳走様すると流しにお皿を持って行った。 水を流しながらこちらを見る桜二に聞いた。 「オレがショックを受けてお前の事嫌いになると思ったの?」 コクリと頷く彼を見て笑った。 「オレは自分の為なら智の死も平気で忘れられるやつだから、顔も知らない奴のことなんてどうでも良いんだ。」 彼の膝に座ってシャツの上から胸板を掌でさすって首に手を回す。 「桜二、オレの事愛してる?」 「シロ…すごく愛してるよ。」 「じゃあ、オレを疑うなよ…お前以外どうでもいいんだから…ね?」 そう言って舌を絡めてキスする。 絶対こいつを離さない。 目の前から居なくなったら今度こそ自分は壊れてしまう気がする。 自己防衛なのか桜二の言ったことを信じていないのか、人を殺したなんて聞いてもなんとも思わなかった…むしろそんな事でオレを捨てようとしたのか…と苛ついた。 行ってきます。と言って玄関を出るお前の後ろ姿を見送るよ。 絶対帰ってくるって信じてるよ… ガランとした部屋の中ソファに顔を伏せて泣いた。 動揺が後から押し寄せてきた。 ショックだ…まさか向井さんが湊を殺してるなんて…依冬が知ったらどうなってしまうか…向井さんを庇うオレを嫌いになるかな…。 ソファに顔を擦って泣く。 どうしたらいいか分からない… 自分の二面性に振り回されて頭が痛い。 おもむろに携帯を手に取って電話をかける。 「もしもし?ねぇ知ってる?人間は猿から進化したんじゃないって説があるらしいよ?」 電話の相手は笑って話してくる。 「違うよ、あれは猿じゃ無くてターザンだよ…。ん?今?今は向井さんの家にいる。ん、そう?分かった、じゃあね」 お昼まで依冬といよう… 「シロ、向井さん家の子になったの?」 お出迎えしたオレにそう言うと抱き抱えてキスする。 熱い舌の絡む火照るキスで体がジンジンする。 「昨日彼女とエッチしたの?」 オレは依冬の首に手を回して聞いた。 「うん。思いっきりドSにしてやったら泣いて帰っちゃったよ…」 笑いながらそう言うからオレは依冬の頭をペチンと叩いた。 「女の子には優しくしないといけないんだよ。」 彼に抱き抱えられながら適当にそう言ってやった。 依冬はオレをソファに運んでくるとジャケットを放り投げてキスしてくる。 オレが手で体を退けようとしたらオレの手を掴んで上にあげた。 「なんだ!また乱暴にするの?」 オレが怒って言うと、ふふっと笑って首に優しく食む様にキスしてきた。 「シロ…オレにも向井さんみたいに甘えてよ…」 耳元で囁かれてゾクゾクする。 オレは依冬の首に腕を回してあいつに顔を近づけてキスする。 「オレ、お前にも甘えてるじゃん…」 舌を入れて依冬の舌を舐める様にして動かす。 あいつの手がオレのTシャツを捲り上げながら体を触る。 乳首を触られて体が跳ねる。 「もっと…溶けちゃうくらい可愛く甘えて?」 仰け反る体に覆いかぶさる様にして乳首を舐めて転がす。 「んっ…、ぁあっ、依冬…んっ、んぁあ…」 乳首から顔を下ろして脇腹を舐めていく。 オレの短パンに手をかけて下ろすとパンツの上からオレのモノを唇で食む。 「ん…ん、依冬…口でしてよ…ねぇ…」 お預けを食った様で早く口に入れて欲しくて腰が疼く。 自分でパンツを下ろそうとすると大きな手で掴まれてしまった。 「なぁんで!早く口でして?ねぇ、依冬!」 「シロが可愛くおねだりしたら口でしてあげるよ?ね?可愛くおねだりしてみて?」 オレは早く口に入れたくてウズウズしてるのに… 依冬は大きな手でオレのモノをパンツの上からさすってくる。 気持ち良くて腰が動いてしまう… 「ん…んぁあっ!…依冬、意地悪なの嫌だ…、早く口に入れてよ…」 オレのモノの先っぽを揉む様に刺激して体がのけぞる…もう…!早くしたいのに…! 「はぁはぁ…依冬…や、やだ…、早く気持ち良くしてよ…んっんぁ…、はぁはぁ、あぁん…!」 焦ったくて体を起こして依冬の顔の前に顔を寄せる。 手は相変わらず掴まれているから、オレは自分の体をあいつの体に寄せて行き依冬の肩に顔を置いて頬を寄せて首を舐める。 「シロ…縛っていい?」 「やだ」 おもむろにネクタイを外してシャツのボタンを外す。 舌を出してオレの唇を舐めてくる。 オレはその舌を捕まえて絡める。 早く気持ち良くなりたい… 「シロ、縛って良いならすぐ気持ち良くしてあげるよ?」 それを聞いてオレは両手を依冬の前に無言で差し出した。 「かわい…」 そう言ってネクタイをオレの手首にグルグル巻いてキツく縛る。 ズボンを脱いで自分の上にオレを跨がせ拘束された手を自分の首にかけた。 「キスしながら俺の上で擦ってごらん?」 そう言われてパンツ姿同士であいつの大きくなったモノの上に自分のモノをあてて擦り付けた。 依冬の大きいモノが硬くなっていて早く挿れたい… オレは依冬が早くその気になる様にあいつの唇を舐めて挑発する。 「シロ…早くキスしてよ」 オレの顔を掴んで舌をねじ込んでくる。 熱くて頭がクラッとするくらい強いキスで仰け反りそうになるのを依冬の手に押さえ込まれ阻まれる。もう片方の手でオレの腰を掴んで自分のモノに押し付けて、腰を動かしてきて気持ちいい…。 「ん、んっ!…ら、らめぇ…んっ、ぁん…」 キスを外して仰け反るオレの乳首を舐めて弄る。 早く挿れたい… オレをソファに倒して体を舐め始める依冬。 敏感になった肌に食む様なキスをしていく度に体が反応してオレのモノがビクビク動く。 「あ、ぁあっ! あぁん!…あっ…あぁあっ…」 イッちゃう…こんなのでもうイッちゃいそう… 「ん~、かわい…シロ、愛してるよ…」 体が仰け反って縛った手首のネクタイがギチギチ音を鳴らしてオレの手首に食い込む。 「んぁああ…依冬、あっああ…イッちゃう…」 腰が震えて我慢できない…腕を上げて顔を覆うと体が仰け反って鳥肌が立つ。 依冬はオレの頭の上に縛られた腕を押さえつけるとオレの顔を覗き込みながら耳の裏を舐め上げる。 「あっ!んっあぁあ…!!や、やぁ…ん!」 腰がわなないてオレはパンツの中でイッてしまった。 代えのパンツ、持ってないのに… 「ん…依冬のバカ…パンツの代え無いのに…」 オレがそう言うと依冬はオレのパンツを下げて綺麗に拭いてくれた。 そしてオレの足の間に入ると顔をオレの股間に埋めてオレのモノを口に咥えて扱いた。 「んっ!ぁあっ!…依冬…きもちい…ん」 待ちに待った快感に体はすぐに興奮して腰が揺れる。 溜まった快感がどんどん身体中に広がっていくみたいに感じて気持ちいい… もっと…もっと、 依冬はオレの動く腰を抑えてゆっくりとオレのモノを口で扱く。 「あ、ぁああ…きもちい…はぁん、あっ…あぁあん…ぁん、や…あ、きもちい…!」 オレは依冬の頭を手で触って髪を撫でた。 依冬はオレの穴に指を挿れて中を指先で刺激してくる。 もうこのままイキそう… 「ぁぁあっん! イキそう…! 依冬…またイッちゃうよ…あっああん!! んっ…んん…」 オレがイッてもオレのモノを舐め続けて咥えて扱くのをやめない。 指の数が増えていってすぐにオレのモノは立ち上がる。 「あっああ…あん! 依冬…きもちい…! はぁ、あん! きもちいの…らめ…!あっ、あぁあ…ん」 どんどん押し寄せる快感に体が喜んでいく。 もっと、もっとしたい… 腰を動かし依冬の口にファックすると、押さえつけられ動かなくされる。 「依冬!…ん、依冬!ハァハァ…きもちい…もっと…んんっ、もっとして…」 オレの拘束された手の輪に頭を突っ込んでオレを持ち上げると、自分のパンツを脱いで跨がせる。 「シロが挿れて…」 そう言われて、オレは手を一旦あいつの首から外して自分の下にあいつの大きくなったモノをあてがってゆっくり下に腰を下ろした。 「はっ…!ぁあ…おっきい……ん、んっ…ん…あっ…んぁあ、あっああ…ぁあん…!依冬…おっきいから…最後まで入らない…ん、んぁ…」 途中まで快感に耐えながら挿れたけど、どうやったって根本まで入る気がしない… 依冬はオレの手をまた自分の首にかけてオレの尻のほっぺを両手で掴む。 「やだ…一気に入れないで…」 怖がるオレに舌を出してキスしろと目で言う。 オレはその舌を舌で掬って口の中に入れて絡める。 ゆっくり腰を動かして依冬のモノを出し入れする。 これで十分きもちいじゃん… オレの警戒心が取れたのを確認した様に、腰を下ろした瞬間にあいつは自分のモノを根本まで思い切りぶち込んできた。 「あっあああ!! んっんん…!!らめ、や、やだ…!!」 ゴリっと音を出してオレの中にグッと詰まる感じがした。 苦しくて圧迫感が強い… 「はぁはぁ…なんでこんなにおっきいんだよ…」 依冬の肩に顔を乗せて息を整える。 あいつはオレの首筋を吸って舌で舐め回す。 腰が震えて背筋が仰け反る。 オレの腰を掴んで強制的に出し入れする依冬のモノがいつもよりも大きくて…更に大きくて…苦しい… 「あっああ!!依冬…まって、待って!!苦しいから…まってぇ…んっ、ああぁ!依冬…、やぁ」 ダメだ…興奮してて止まらない… 野獣と化した彼はオレのモノを手で握って扱き始める。 苦しさと快感を与えられ苦悶の表情で堪える。 体の中が熱くなってきて、苦しさが和らいできた…オレの体が慣れたのか…どんどん快感の方が強くなる。 出し入れする度に頭の奥まで来る快感がオレを骨抜きにさせる。 「依冬…依冬…きもちい…あっ…ぁああん!きもちいぃの…依冬…んっ!はぁん!!」 依冬にキスしながら快感を味わう。 強く抱きしめられて熱い…依冬の口から喘ぎ声が漏れてくる。 きもちいの…?エロい… 「んっ…ふぁ…んっ!あっ! んんっ!!ん、んんんっ!!」 オレがキスしながらイクけど…ドクドクと扱かれてるオレのモノから液が出るけど、野獣にはそんなの関係なくって、イッても激しく腰を動かして扱いてくる。 オレを勝手に貪り食っていくみたいに気の済むまで、自分がイクまでずっとオレは快感を受け続けるオナホールになる。 この容赦なく一方的に快感を与え続けられるのが…すごく好きだ… 「あっ!あぁああっ!依冬!んっ…!」 腰を痙攣させてまた激しくイッてしまう…あぁ、頭がおかしくなりそうで…最高に気持ちいい… 「シロ…かわい…俺も、イキそう…」 やめないでよ…もっとしてたいから…!! 「やら…まだダメ…もっと、もっと気持ちよくしてからイッてよ…ん、んっ…」 オレはそう言って依冬の背中をバシバシ叩いた。 あいつはオレの答えに笑ってしまってすっかりビーストモードが解除されてしまった。 首にかけたオレの手を外してオレを置いてけぼりにして仰向けに寝転がってしまった。騎乗位になって両手でオレの尻を掴んで動かす。 「あっ…あぁあ…! 依冬…ん、んっん…」 この体勢…すごく奥まで来る… オレは依冬の胸板に手を置いて快感を堪えるけど、下から突き上げてくる快感に背中がわなないてあいつの上に突っ伏してしまう。 「ん…、シロ…ほらいつもみたいにいやらしく腰を動かしてみて?」 依冬はそう言うとオレの腕を掴んで力の抜ける俺の体を元の位置に戻した。 「あっ! ダメなの…これ、すごく…!!あっ…あぁああん!!やら…んっ…んん~、依冬…あっ!!ぁああん…や、やだぁ…んっ、んんぁっ!!」 手を口に当てて身をよじりながら下からの快感に悶えているとどんどん依冬のモノが太く硬くなっていって、どんどんオレも気持ちよくなって力が入れられない…。 「あ~シロ、気持ちいい…かわい…すごくエッチだよ…かわいすぎ…愛してる」 オレの中にガンガンモノをねじ込んで逃さない様に足を鷲掴みする…野獣が戻って来た。 「あっああぁ!!や、やぁだぁっ!!んっ…んぁあっ!! いやっ!や…あっああ!!イッちゃう!依冬!ダメ!イッちゃう!んっ…ぁああんっ!!」 自分の顔を押さえながら顔を仰け反らせ、オレは派手にイッた…。 同時に依冬もオレの中でドクンドクンとひとしきり暴れてイッたみたいだ。 あいつの胸板に手を置いて顔の方に滑らせながら体を密着させるとオレの穴から依冬のモノが出て、同時にあいつの出した静液がドロドロと流れでた。 依冬の首に手を回してキスする。 「ん…すごく気持ちよかった…」 目を半開きにして息が上がった野獣は満足そうに頷いた。 あいつの胸板に顔を落として依冬の呼吸を感じる。 呼吸の度に上下する高さが低くなっていく。 「シロ…愛してる」 髪を撫でて腰を掴んで抱きしめる手に力がこもっていて本当に愛されてる気になる… 「依冬…オレもお前の事愛してる…」 そう言って目を閉じる。 あったかい体…大きな体…大好きだ。

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