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第37話

「楓の首にネクタイが絡まったんだ…」 オレはベッドの中で桜二に抱きしめられながら今日あった事を話していた。 まだあの時のことを思い出すと胸が苦しくなる… 涙が溢れて桜二の胸に擦り付ける。 甘えて、甘えて、甘えまくる。 「落ちたの?怪我はないの?」 オレの顔を見て心配そうに言うから、こいつには本音を言った。 「痛かった…怖かった…背中から落ちてやばいって思った…息ができなくて、手足を動かすまで怖くて固まった…。でもちゃんと動いて本当によかった…桜二…怖かったぁ…」 怖かったね…そう言って背中を大きな手で撫でてくれた。 あったかくて気持ちいい… 「勇吾が手伝ってくれた…一緒に踊って危なくない様にしてくれたんだ…ねぇ桜二…?やきもち焼く?」 オレは桜二の顔を見て尋ねた。 「勇吾について行かないで…イギリスに行くとか言わないで…」 そう言って悲しそうな顔をする。 そんな事心配する必要無いのに… 「ついて行かない。桜二のそばに居る。オレにはお前が必要だから、離れたりしない。」 そう言って桜二の首に手を回して抱きしめた。 「約束しよう?」 オレは小指を出して桜二の小指に繋いだ。 「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます!」 指切った! と一緒にやって笑った。 可愛い依冬と嫁の桜二と離れるなんて考えられない…考えられないよ。 オレは桜二の上で桜二の呼吸を感じながらウトウトしていつの間にか眠りについた。 兄ちゃん…オレとエッチして…? シロ…もうやめよう? 何で…兄ちゃん気持ちよさそうだったじゃん! シロ…良くないよ、兄ちゃんは オレのこと嫌いなの…? 違うよ じゃあ好きなの? …シロ 嫌な夢を見て目を覚ます。 隣で寝息を立てる桜二を見つめる。 「桜二…?」 小さい声をかけても起きないくらい眠ってる。 もっと小さい声で囁くように言う。 「にいちゃんの事おかしくしたのオレかもしれない…」 「違うよ…シロのせいじゃない。」 そう言ってオレの頭を優しく撫でる。 寝てなかったの…? オレは泣きながら桜二にしがみついて目を瞑る。 兄ちゃんの写真の笑顔…霊安室の顔…楓の首と兄ちゃんの紫の首…が、まぶたの裏に何度も映る。 「どうして兄ちゃんは死ななきゃダメだったの…?」 「シロ…大丈夫…大丈夫…俺がそばに居るよ。」 桜二はオレを抱きしめてオレの意識が悪い方に行かない様に声を掛け続ける。 にいちゃん…にいちゃん… 兄ちゃんを呼ぶオレの声が聞こえなくなるまで桜二はずっとオレを撫でてくれた。 いつもそうしてくれる。 オレを自分から守ってくれるんだ… 8:00 桜二の声で目が覚める。 「シロ、起きて。刑事さんと待ち合わせ10:00でしょ?」 「今日だっけ?」 布団の中でモゾモゾ動いて桜二の方を見る。 「今日の10:00に霞ヶ関の家庭裁判所前で待ち合わせ。ここは六本木だから車で行くけど、駐車場探さなきゃいけないから早めに行くって昨日言ったよ?」 分かったよ… オレは両手を付いてガバッと起きると桜二に両手を広げて抱っこをおねだりした。 …甘えてるわけじゃない。こいつの体格がオレを抱っこできるからお願いしてるだけだ。 「やだ、やだ、まだ降りたくない…」 ソファに下ろそうとするのをごねるのも甘えてるわけじゃない…筋トレに協力しているだけだ。 「卵焼きないの?嘘だ!嫌だ!」 卵焼きが無くて騒ぐのも甘えてるわけじゃない… 「この靴下嫌いなのに!」 嫌いな靴下を頭にぶつけるのも、時間通りに起きないのも、すぐわがまま言うのも、全部全部甘えてるわけじゃない… 「桜二大好き…大好き…」 玄関に向かう桜二の腰にしがみついて大好きって言う。これが甘えてるって事だ。 9:45 時間通りだ! 霞ヶ関にある駐車場に車を停めて桜二と歩いて約束の場所まで向かう。 「ここら辺、道路広いな…」 「国会議事堂とか外務省とかあるから…」 オレが呟くと桜二が応えるように言った。 「戸籍って何だろう?」 桜二の後ろ姿に聞いてみた。 「日本で生まれた人が出生届を出すと戸籍が出来るんだよ。で、その人がいますって事になるの。就職とか海外旅行とか、そういうのをする時に使った記憶があるけど.今はどうなのか知らない。」 桜二がオレの方を振り返りながら話したから、オレは違う質問をする。 「申請して取れるなら外国人も戸籍取れるのかな?」 「さぁね」 空に高いビルもない開けた場所…なんかここ開放感あるな… 天気も良く良い散歩日和だ。 「オレは日本にいない人~いない人~」 鼻歌を歌いながらオレは桜二の手を握ってブンブン振りながら歩いた。 「あ、おーい!おじちゃん!」 目の前にある大きなビル…その麓に田中刑事が立っていた。 まだ約束の時間前なのに、一体いつから立っていたんだろう… 「待った?」 オレが聞くと顔を横に振っていいや、と言った。 桜二が後ろから来て挨拶する。 長くて丁寧な大人の挨拶だ。 「じゃあ、行こうか?シロくん」 オレは田中刑事と桜二と一緒に戸籍を取りに行った。 田中刑事のお陰で本当にあっという間に手続きが終わった! 「ねぇ!お礼にすき焼きご馳走してあげるよ!」 オレは田中刑事をお昼に誘った。 桜二と一緒に行く約束をしていた銀座の今半だ。 「え…今半…良いの?うれピー!」 オレ達は日比谷公園を突っ切って銀座まで向かうことにした。 公園の歩道を歩きながらオレはリュックの中をゴソゴソと探って田中刑事に言った。 「おじちゃんのくれた資料全部見たよ。」 田中刑事にそう言って指で写真のサイズを作って聞いた。 「1枚欲しい写真があったんだ…貰ってもいい?」 「良いよ、好きにしなさい。」 お礼を言ってリュックから資料を出して手渡す。 この資料を見た事で幼すぎて曖昧な記憶を補完できた。 でも、この資料を見てからオレの記憶と現実の出来事の乖離を感じてオレは揺らぎ始めている。 どうしても確認したくて田中刑事に聞いた。 「ねぇ…にいちゃんは…にいちゃんはオレの事…」  愛してたの? それとも 無理やり狂わして自分に従わせてたの…? 「何よりも大切に守ってただろ?」 田中刑事がオレの顔を見てそう言った。 「オレは…良く覚えてないんだ。」 自分の記憶が信用できない。 兄ちゃんが自分を、自分だけを愛してくれてたのか…?それが気になって仕方がない… どうでも良い事に思えるけど、オレにはそれが1番大事なんだ… たまに夢に見る兄ちゃんはいつも少し困った顔をしてオレを諭してくる。 こんな事よくないって… オレが…… 売春を続けた事でセックスする事が当たり前になってしまったオレが…兄ちゃんを変な事に引きずり込んだ気がしてならないんだ…。 「にいちゃんはただ、弟としてオレを守ってたのに…オレは兄ちゃんにそれ以上を求めてしまった気がするんだ…そのせいで…」 「シロ…」 オレの背中を桜二が抱いて温める。 「…こう言ったらなんだがな…お前がいつから兄ちゃんと関係を持ってたか知らないが、通報を受けて初めて会った時から、お前の兄ちゃんはお前の為だけに一生懸命だったぞ…」 「オレの支えなんだ…にいちゃんがオレの事…1番愛してたって事が…生きてく上で1番大事なんだ…ばかみたいだろ…本当…どうかしてる…」 オレの肩に置いた桜二の手が強くオレを抱き寄せた。あったかくて力強い… 「お前の兄ちゃんが売春を斡旋した件でな、俺はあいつと話したんだ…なんでだって?あんなに大事にしていた弟をなんでそんな目に合わせるんだって?その時に話をして感じたのは…こいつはこいつのやり方で弟を大事に愛してるのかもしれないって…まぁ俺には未だに理解できないがな…」 そう言って田中刑事はオレの方を向いて足を止めた。 「兄ちゃんがおかしくなったのはお前のせいじゃない。強いて言うならお前達の母親、又は父親。周りの環境。それらがお前も兄ちゃんもおかしくした。そうじゃないか?」 おかしくたって別に直さなくても良い…そう言ってまた歩き始める。 「私はね、今のシロくん好きだよ。心がぎこちなくても良い。トラウマに悩まされても良い。兄ちゃんが未だに恋しくったって良い。それがシロくんなんだから。」 そう言って笑う。 その言葉に心がスッと軽くなって桜二を見上げると、オレの方を向きながら涙目で頷いた。 「そうだよ…シロ、俺は今のシロを愛してるよ。」 そう言ってオレの頬を撫でると笑った。その時、木々の揺れる音がして風が吹き抜けた。冬も近づく11月なのに、その風は暖かくて…温くて…オレの頬を撫でて行った。 「…うん…ありがとう。」 オレはそう言って桜二にキスした。 公園を抜けてしばらく歩くと見えてきた今半に予想以上に田中刑事が子供みたいにはしゃいだのが面白かった。 昼食をオレの奢りでおじちゃんと一緒に食べた。 おじちゃんはまた連絡しろよ~と言ってタクシーで帰ってった。 話してみて痛感した…田中刑事はやっぱり仏の刑事だって。 オレ達は時間もあるしプラプラとドライブしながらお台場まで遠出した。 桜二も来週から仕事が始まるから、今日はデートする事にした。 こんな事…もしかしたら初めてかもしれない… カップルの多いお台場にすっかりオレは緊張して固まってしまった。 「シロ、海が見えるよ。」 何だよ…かわいいこと言って何か買わせようとしてるのか…? すっかり冬に近づいて肌寒い中、小さな海岸に小さな子供が両親と砂遊びする。お母さんは寒そうにするのに子供は足を海で濡らしてはしゃぐ。そんな穏やかな風景に心があったかくなった。 「見て、あの子かわいい…」 オレは海岸に駆けてく女の子を指さした。 「何歳くらいかな…?こんなに肌寒いのに子供は元気だね…」 桜二も一緒に眺めて言った。 オレと桜二は男2人で海岸を歩いてみた。 夕方になりかけ、日差しが弱まり海からの風は思った以上に冷たかった。 ポケットに手を入れて砂に足を取られながら歩く。 「シロ、転んじゃうよ。手繋ごう。」 優しい…惚れる 「すき焼き美味しかった。今度は勇吾と夏子さんにも奢ってあげよう…」 オレはそう言って桜二の顔を見ると差し出された手を握って桜二の上着のポケットに突っ込んだ。 「桜二の手はあったかいな…」 桜二のポケットに入った携帯がブルルと鳴った。 「電話鳴ってるよ?」 オレが言うと反対の手で取り出して電話に出た。 桜二が電話してる間、夕陽に煌く水面を眺めて綺麗だな…と感動してた。 「シロ、勇吾達もお台場に来てるって、合流する?」 桜二がオレの方を向いて尋ねるから桜二の腕に顔を寄せて言った。 「う~ん…今はお前と2人でいたい。後で合流しようよ…ね、良いでしょ?」 オレがそう言うと優しく微笑んで電話口に伝えてる。お前、絶対モテるだろうな… 「テレビ局に来てるらしいよ。」 「へぇ…。ねぇ、あれカモメかな?」 オレは水面に浮かぶ鳥の影を指差して聞いた。 「どうかな?カモメかな?鴨かな?」 「泳いでみてきてよ」 「シロも一緒にいく?」 他愛もない会話をして笑う。穏やかな時間。 楽しいな… 勇吾…約束通りちゃんとやったか後で夏子さんに聞いてみよう。 「シローーー!」 テレビ局に向かって歩いていたら前から勇吾が手を振ってオレを呼んだ。 「ここ、寒い!」 そう言ってオレを抱きしめる。 確かにお台場は夕方過ぎると寒い…この時期さらに寒さが身に染みる… 「これから桜ちゃん家で鍋パーティーしようよ!」 勇吾が桜二に言うと、良いよと答えてた。 仲良くしていて良かった… 「夏子さん、勇吾、ちゃんと働いた?」 オレが勇吾の腕の間から尋ねると首を傾けて両手を肩に上げてジェスチャーした。 「勇吾ちゃんとやらなかったんだ…」 「いや、俺なりに頑張った」 「アイドルと喧嘩したの…このばか…」 勇吾は血の気が多いな…オレは勇吾にバックハグされながら桜二と手を繋いで車まで戻った。 おかげで体が冷えなかった。 帰りにスーパーに寄って鍋の材料を買った。 オレは鍋にラーメンが入れたくて麺を買った。テレビのCMで見て一度やってみたかったのだ! 勇吾が嬉しそうに魚介系をカゴに入れた… やだな、生臭いの、オレ嫌いなんだよな。 「これ、鍋に入れないで…」 桜二に小さく耳打ちする。 「2つ作るから、シロは魚入ってないやつ食べな。ね?」 オレは2つともラーメン入れたいのに… 「勇吾、魚やだ。入れたくないから戻してきて。」 オレは勇吾にそう言って魚介系のパックを全部渡した。 「シロ…」 後ろから桜二に叱られる。 「片方肉なんだから良いだろ?ばーか!」 勇吾はオレを無視して魚介たちをまたカゴに戻した…やだな。 「オレ、お菓子見てくる…」 オレはヘソを曲げてお菓子売り場にやってきた。 最近のお菓子って凄い種類が豊富だ…。 オレはチョコレートを手に取って桜二に持っていった。 「お酒も買って行こう~!」 夏子さんがそう言ってオレの手を掴んだ。 「シロは何飲むかなぁ~?」 「オレそんなに強くないからみんなで飲むの買ってよ…!」 結局ワイン4本と日本酒1瓶、ビールをケースで買った。 「こんなに飲むの?」 オレが夏子さんに聞くと良いの良いの!って押し切った。大人って凄いな…こんなに1晩で飲めるんだ… お会計を済ませて袋詰めする派手な3人とイケメンの桜二…どこに行っても目立った。 家に着いてみんなで鍋を作る。 桜二が2つ鍋を出してそれぞれに出汁を入れた。 夏子さんはビールとつまみを持ってソファに行った。 勇吾はオレの後ろにくっ付いて首の匂いを嗅いでる。 オレは桜二が野菜を切るのを固唾を飲んで見守っていた。 「シロ…あっちで夏子と飲んでて良いよ。ちゃんと作るからまってて。」 追い払われて夏子さんのところに行くと、既に1缶空けていた。 「シロ、こっちこい!」 こえぇな…。 オレは勇吾を伴って夏子さんの近くに行った。 「ここ、座って!」 「勇吾が…」 「チンタラしない!!」 怒られてオレは勇吾と一緒に絨毯の上に座った。 「シロ!飲みな!」 ぬるいビールを1本手渡されて開けて飲む。 「一気!一気!一気!一気!」 今のご時世、一気コールしちゃダメなんだよ? オレは夏子さんが怖くて頑張って一気飲みした。 口の端からビールが垂れたのを勇吾が舐める。 「お前はいちいちエロくすんじゃねぇよ!」 勇吾の頭をスリッパで叩いてスパーンと音を鳴らした。 だれ、この人にこの武器与えたの… 「俺はシロの飲み残しをフォローしただけです。」 心外だなぁ…と言って勇吾も一気飲みした。 「あんたはさぁ…お姉さんのとこに来なさい?」 オレの手を引いて自分の横に引っ張ってソファに座らせる。 「夏子!悪戯すんなよ!」 オレの方を向いて自分の上着を脱ぐ。 薄着になって胸をアピールしてくる。 オレは誘われてるのかと思って夏子さんの胸を触った。 スパーン! 音のわりに痛くない衝撃が頭に走った。 「触ってんじゃねぇよ!クソじゃりが!」 「夏子さん口悪い…やだ、可愛くしてよ…」 オレは叩かれたけどずっと胸を触っていた。 「夏子さん、オレに抱いて欲しいの?」 オレは体を乗り出して夏子さんの方に迫った。 「乱行パーティーだ…あぁ乱行パーティーだ」 勇吾が桜二に言いつけに行ってオレは捕獲された。 「だって胸を見せびらかしてたから!勘違いしても仕方ないじゃん!」 オレは言い訳しながらまた胸を触りに行こうとしたが、スリッパを構えられたので断念した。 「ふぅん…シロはバイなんだ…」 「俺も女もいけるよ?」 「桜二はオレ以外はダメだから」 オレがそう言うとブッと笑う大人2人。 「まぁ、今はそうかもね~」 「昔は男も女も取っ替え引っ替えだったからね、いつも可愛い子連れてた〜。あの子、何だっけ?凄いぶりっ子の子、面白かったな~」 夏子さんがオレの頭をポンポンして言った。 「あの子、俺にも色目使ってきたけどあんまり良くなかった…マグロ?なの?」 桜二はマグロの女の子と付き合ってたんだ… 「やめろ!俺の事はやめろ。」 桜二がそう言ってオレをキッチンに連れて行った。 「お前らの話はシロに聞かせたくない…!」 桜二が大人に説教している間、オレは魚介の匂いのする鍋に買ったチョコをそっと入れた。 勇吾のばーか! これが…あんな悲劇を生むとはこの時オレは分かっていなかった… 「ラーメン入れて!ラーメン入れて!」 桜二の腰に纏わりついて甘えていると勇吾が近づいてきて言った。 「シロ坊、こっちおいで。」 そう言ってオレの腰を掴んで持ち上げると夏子さんの座るソファに連れてきた。 夏子さんとオレの間に入るとオレの方に体を向けて服の中に手を入れてくる。 「この猫のトレーナー着てるの、可愛い。」 そう言ってオレのトレーナーに顔を埋めると中で手を体に滑らせてくる。 スパーンとまたいい音がして勇吾を夏子さんが引き剥がす。 「シロ、こいつ掘ってやんな!」 マジ? オレは暴れる勇吾に近づいてズボンに手をかけた。 「シロ…鍋できたよ?」 頭の後ろで桜二の声がしてオレは桜二に甘えた。 「悪魔の声が聞こえたんだ…怖い…」 桜二の隣の席に座って鍋を食べる。 ラーメン食べたかったんだ! 「ラーメン、美味しい…!」 どれどれ~と魚の鍋に手をつけた勇吾が変な顔をしてる… 何だよ…食ってから気付けよ…!勘のいい奴だ! 「桜ちゃん、これ何?」 溶けかけのチョコを箸で掴んで持ち上げる。 「シロ…」 桜二がオレを見て目で怒る。 「魚臭いの嫌だから…隠し味に入れた…」 言い訳を言ってると桜二が怒って言った。 「隠し味になってないよ…?シロ、いくら勇吾が嫌いだからって、食べ物を粗末にしたらいけないよ?」 何で今日の桜二はこんなに饒舌なの…? キッチンをチラリと見ると1本開けたワインが置いてあった。 オレは素直に謝る選択をした。 「ごめん、もうしない」 「大体シロと勇吾は周りに迷惑をかけて喧嘩するのやめてよ。本当にこれ、チョコ、シロが全部拾いなさい!」 「桜二お母さんみたいでやだ!」 オレはそっぽを向いて無視した。 何だよ、酔っ払いが怒って面倒臭い! 「桜ちゃん、シロが悪い子です~!」 勇吾がそう言って煽るのがムカついてオレは勇吾の皿にチョコを取ってあげた。 「本当…ばかみたい…」 夏子さんがワインを片手に魚介の鍋を平気な顔で食べる。え…不味くなってないの?それとも夏子さんの舌がバカなの? オレが勇吾の皿にどんどん溶けたチョコをのせて笑うと、その様子を沸沸と見ていた桜二の雷が落ちた。 「シロ…!」 「怖い!怒らないって言ったじゃん!桜二の嘘つき!」 オレはそう言って勇吾にチョコをあーんさせる。 「ほら食えよ、魚味のチョコ、好きなんだろ?美味いぞ!」 「やめろ!ばか!」 「シロ…食べ物で遊んじゃダメ!」 桜二がオレを引っ張り上げてソファの方に連れて行く。 「タイムアウト法を用いた育児方法ですね…。好ましくない行動をとる子供にその場から一時離れさせて興奮を落ち着かせる方法です」 夏子さんが専門家のように解説してワインを口に含む。 「オレ悪くない!勇吾が悪い!」 「分かった…分かった…」 オレを抱きしめて背中をポンポンする。 何だよ…ちぇっ! 「シロ坊は本当ママがいないとダメねぇ~」 おちょくる勇吾にムカつくけど、背中をポンポンされるのが気持ち良くて桜二に抱きつく。 「もう…しないと思う…」 そう言って席に戻る許可を得る。 勇吾がオレをおちょくるけど無視してラーメンを食べた。 「シロ、これ飲んで?」 そう言って夏子さんにワインを渡された。 昔ワイン飲みすぎて吐いた時を思い出す。吐いた物が真っ赤でビビって以来飲むのやめていたんだよな… 夏子さんをチラッと見るとオレを据わった目で見て手で飲むのを促してる。 「飲みな」 オレは怖くて一口だけ飲んだ。 「あー、全部飲みなって…」 イラついた夏子さんが怖くて全部飲んだ。 うぅ…クラクラする。 オレはここにいるとヤバいと気付いて食べたい分だけ食べてご馳走様をして風呂に行った。 早く寝よう…あいつらヤバい…酒豪の集まりだ。 風呂を沸かしてお湯が張るのをタバコを吸いながら見ていた。 「シロ坊、タバコ吸うの?」 後ろから夏子が来たーーーー! 「夏子さん、何で風呂場に来たの?トイレはあっちだよ?ほら、回れ右して帰って!帰って!」 オレは怖い夏子さんを風呂場から追い出して扉を閉めた。 「シロ~お姉さんと一緒に入ろうよ~」 その一言でオレは風呂場のドアをすぐに開けた。 有言実行の夏子さんは全裸になって風呂に入った。あぁ!女の人の裸…凄い久しぶりだ…! オレも裸になって向かい合うように風呂に入った。 「バスクリン入れる?」 「そんなのあるの?」 「オレ好きだから、風呂に色つくの…」 「でも、そうしたら見えなくなっちゃうよ?良いの?シロがさっきから見てるココ…隠れちゃうよ?」 夏子アラート!夏子アラート! オレの目の前にたわわな胸を見せつけて乳首を触り始める。めっちゃ柔らかそう…!触りたい! 「夏子さん!見せるだけで触らせてくれないならこれは、これは暴力と同じだぁーーー!」 オレは暴れて水をバシャバシャかけた。 「うおっ!シロ坊!この野郎!」 夏子さんはそう言うと笑いながら水をバシャバシャとオレにかけてきた。 ひとしきりかけるとオレの肩に手を置いて体の上に乗ってきた。 あ…おっぱい…柔らかい… 「夏子さん、勃っちゃったよ…」 オレが言うと夏子さんはオレの顔を見ながらクスクス笑った。 かわいい…いつもこうなら良いのに…オレの顔に近づいてきて息が顔にかかる。 オレは触ると怒られるから手を風呂の淵に置いて為すがままになっている。 「シロ…本当ビアンもその気にさせる不思議な子だね…私にペニスが付いてたら犯せたのに」 そう小さく言ってオレの口にキスしてきた。 柔らかい!オレのモノが一気に勃って夏子さんのお腹に当たる。 ヤバい…お腹も柔らかい… 「んっ…ん…んはぁ…ん…んん、ん…」 柔らかい唇に翻弄されて気持ち良くなる。 挿れたい… 「夏子さぁん…挿れさせて?オレに挿れさせてよぉ…ね?良いでしょ?」 オレは柔らかくて優しいキスにすっかりとろけてしまって舌足らずになってお願いした。 夏子さんはにっこり笑うとオレの体から離れて行ってオレの勃ったモノを握って扱いた。 「あっ!夏子さぁん!ん…んっ、あっ…ん」 掌も柔らかくて気持ちいい…ヤバい、イッちゃいそうだよ… 「確かに…可愛いな…シロ坊」 体をよじらせて快感を紛らわそうとする…じゃないと、あっという間にイキそうだから… 「夏子さぁん…ねぇ、挿れさせて?…ねぇ…ん、んっ…あっぁああん…だめ…ん」 夏子さんはオレのモノを扱きながらオレの穴に指を押しつけて中に入れてきた。 「なぁんで!やだぁ…んっ…んん、あっあっ!」 ヤバい…すっげぇ気持ちいい…イッちゃう…! 女にやられるなんて…なんてエロいの… 「シロ坊…もうこんなになってるよ?我慢してるの?可愛い…でもね…悪い子にはお仕置きしないとね…ちゃんとチョコの件、勇吾にごめんなさいしてないでしょ?ねぇ?」 そう言って指を抜くと、どこから出したの?大人のおもちゃをオレに見せつけた… やだ 「あっ…やだよ、そんなの挿れないで!やだ」 暴れるオレを風呂の中で四つん這いにさせて穴におもちゃをグッと押し込んでくる。 そうか…この人ビアンだから…こういうの普通に持ってんのか… 「あっ!らめ!んぁああっ!おっきい…ねぇ…や、やだぁ!夏子さん、や、やだぁ!」 根本まで入れられてゆっくり出し入れする。 ヤバい…依冬くらいおっきい…これ、動き出したらどうなるの…? オレの心配を他所に後ろの方でカチッと音がしておもちゃがうねうね動き始める。 「ぁあああっ!あっぁああ!らめぇ!はぁああん!や、やら!イッちゃう…イッちゃう!!」 うねるおもちゃを激しく回しながら出し入れする。えぐるように動かしたり浅く動かしたり…とにかく人間には不可能な動きで初めての快感が体を駆け巡る。 もうイッちゃう!もうイッちゃう! 「らめ、らめぇ!イッちゃう~~っ!んんっ!ぁああん!!…や、やぁ…ん、んっ…んんぁあ!!」 オレのモノが風呂の中でドクドクとイッて精液を出してる。それなのに夏子さんは変わらずおもちゃを動かしてる。 「ねぇ…んっ!イッたよ…オレ、イッたからぁ…!も、やら!んっ…んぁあ!あっ…あっ、あっ!」 「すご…っ、シロすぐまたおっきくなる…依冬君も喜んじゃうね…こんなかわいい子抱いたらハマるよな…」 夏子さんはオレのイクの見るの楽しいの?エッチするんじゃないの?こんなの…こんなの…悲劇だ!! 「あっ…んっ!きもちい…夏子さぁん…気持ちい…や、やん…はぁ…はぁ…あん!あっ、あっ!」 オレのモノを手でまた扱き始めて快感が増す。 イッちゃう…もうだめ、イッちゃう!! 「あっぁああ!イッちゃう…またイッちゃう!んっぁああ‼︎あっあっああああ!!」 「可愛いっ!」 腰がびくついて足が震える…凄くきもち良くて派手にイッてしまうと、オレのイキ様がツボに入ったのかオレの背中にキスをして片手で乳首を触ってきた。 「も、やら…んっ、夏子さん…もうやめて…!」 「シロ…おっぱい触っていいから、もうちょっとだけ遊ぼうよ…」 そう言ってオレを湯船に座らせてお湯を抜いた。 向かい合うようにしてオレの腰を少し寝かせるとまたおもちゃを入れてくる。 オレは夏子さんの胸を触って乳首を優しく撫でる。 「あ…シロ坊…可愛いやつ…痛くしちゃダメよ?」 柔らかい…おっぱい…オレの中でおもちゃがうねって暴れる。夏子さんがオレの顔を覗き込むようにしてキスしてきた。柔らかい唇と舌が絡まってもう最高に気持ちいい… おもちゃの動く音とキスの舌の音が風呂場に響く…夏子さんの体の肌の柔らかさがオレを興奮させる。 「んっ…ん!んぁあ!んっ…んっ!んんっ…ぁあ」 天国なの?地獄なの? 気持ち良くてまたイッちゃうよ… 「ぁあっ!夏子さん…!イッちゃう…!!」 オレは体を仰け反らせて下半身をビクつかせながらイッてしまった… 夏子さんはオレの頬を掴んでキスしてくる。 頭がトロけて天国みたい… 「シロ…めっちゃかわいい…もっと遊びたい」 勘弁して… そう思ってオレは風呂場のイマージェンシーボタン“呼び出し”を押した。 ピーピピピピーピピピピーピピピピー 「シロ坊…!」 夏子さんが怒って言うけど、ごめん、もうやだ。 勇吾が脱衣所に脱ぎ捨てられた夏子さんの服を見て笑い転げた。 「桜ちゃん!シロが!夏子にやられた!」 何で見てないのに分かるんだよ… 風呂場に入ってくる桜二を他所にシャワーを浴びて頭を洗い出し、顔まで洗って、体もオレのスポンジで洗ってる。こう言う人を女傑っていうの? 「シロ…可哀想…大丈夫?」 「桜二…おっぱい気持ちよかった…」 オレの言葉に勇吾と夏子さんが大笑いして床を叩く。下の階の人に迷惑なのに… 桜二はオレの体を洗って風呂に入れると夏子さんに説教しに戻って行った… 湯船に使って柔らかかった肌を思い出す。 挿れたかったな…

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