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第52話
「ねぇ、シロ。ロンドンのクリスマスってこんな感じなんだって?見て見て!」
19:00 三叉路の店。
店内はクリスマスムードで電飾がチカチカ光り、ヤドリギがあちこちぶら下がってる…
オレの横でロンドンのパンフレットを開いてキラキラした笑顔の楓が止まらない。
「シロにはこのクマちゃん、買ってきてあげるね!」
「うん、熊ちゃん欲しい。」
「インフルエンザ、もう治ったんでしょ?どうして元気ないの?」
それはね…クリスマスが大嫌いだからだよ!
「良いなぁ…飛行機乗れるんだ…」
オレも乗りたい…
心の中でクリスマスに悪態を吐きながら、頬杖をついてカウンター奥のブランデーの名前を読みながらぼんやりとする。
「楓…来たよ」
「あっダーリン!待ってたよ!チュッチュッ!」
オレの隣が空いた…
楓はかわいい彼氏とどっかに行った…。
カウンター奥のブランデーのビンの中身が多い順に見てぼんやり過ごす。
携帯を取り出して勇吾の動画を見る。
お前はオレがいなくても楽しそうだな…
カウンターに突っ伏してダラダラ過ごす。
「ねぇ、君がシロ?」
「あんた誰?」
後ろから声を掛けられてもオレは顔を上げるでもなくだらけて聞いた。
「勇吾に、ここに来たらオレと同じ髪の奴に会えって言われたんだけど、君で合ってる?」
勇吾の名前を聞いて顔をちょっと上げて相手を見る。
ハーフ?勇吾くらいの背の高さ…綺麗な目鼻立ちの金髪男。体型からダンサーであることは一目瞭然だった。
「あ、君だ!動画で見た子だ!わー!シロ、会いたかったよ!みんな!シロ居たよ!」
何だよ…勇吾の知り合い…?
「ワーーー!シローー!プリティ!シロ!」
やだ、怖い!!
オレはあっという間にでかい外人達に囲まれた。
カウンターのマスターに助けを求める。
目を逸らしてグラス拭くなよ!ジジイ!
「何…怖いんだけど…」
「あぁ、ごめんね。みんな勇吾の友達なんだよ。君のストリップ動画を見てね、クリスマスホリデーで東京に遊びに来たんだ。ぜひシロに会いたいってみんなで見に来たんだよ。」
「ふぅん…じゃあもう帰れば?」
オレの態度に呆気に取られる金髪男を無視して、オレはまただらけてブランデーの色の違いをぼんやりと眺めた。
「なんだ、シロ…動画のアグレッシブさはどこなの?勇吾が夢中だから期待したのに…残念だよ。がっかりした。大したことないじゃん。」
しらねぇよ、ばーか!
おもむろに金髪男は携帯を耳に当てて頭を傾けて歩き出した。
「もしもし?勇吾?シロ全然つまんないよ、なんでこの子が良いのか分かんない!僕の方が顔だって良いし、態度だっていいのに!この子…失礼だし、つまんないよ?やだよ、勇吾。やだ!」
なんだ、こいつ勇吾の何なの…
連絡先知ってるし…電話かけたらすぐ出るし…
甘ったれた声出しやがって…
オレは体を起こして椅子から降りると、群がるでかい外人を避けながら金髪男に近づいて言った。
「あんた、勇吾の何なの?」
「俺?俺は勇吾の1番の恋人だよ。」
金髪男は電話を口から離してそう言った。
ふぅん…恋人になり損なってるやつか…で、このでかい奴らはただ単にオレのダンスを見に来た外人か…。ふぅん…
「シロ、そろそろ」
支配人に呼ばれて控え室に向かう。
途中DJに声をかけて曲を変える。
「勇吾さんのお客さんだから、うんとおもてなししないと…いけないよな」
オレはそう呟いて少し楽しくなった。
衣装を着替えてカーテンの後ろにスタンバイする。
今日の衣装は黒いダメージジーンズと勇吾から貰ったTシャツ。そう、私服だ!これが1番動きやすいからな…
オレはTシャツをズボンに若干インした。
「勇吾さんのお客さん…」
何度も呟いてクリスマスで落ちた気持ちを奮起させる。
音楽がなる…タイミングを測る。カーテンの開く前に走ってステージに行って音楽が激しくなるタイミングでポールの上に飛びついて上に回って登る。
ワーー!と歓声が上がる。こんなの序の口だぜ。
その後遠心力と腕力で無理やり回して登るんだ!男らしいだろ?
次はポールを踏ん張って掴んで体を添わして逆立ちする。片足を絡めて片足を伸ばしてポールを掴む手を伸ばして体を上に離して反らして片手を上げる。上下逆さになったまま回って降りる。
ほらTシャツが下がって腹がちょっとだけ見えるようにインした甲斐あったろ?
ポールの中間で逆さで止まり体を外側に向けて片足ずつゆっくり下げて上下逆転を元に戻す。絶対明日背中が筋肉痛になる…!そのまま体を逸らして回りながら体全部を使って足を振ってスピンする。
…あぁ気持ちいい…
そのまま両手を離して回転を太ももで止めて床に両手をつく。足を片方ずつポールから離してバク転し歩いてステージに向かう。
音楽に合わせてうっふんポーズをして肩を揺らして可愛くする。そのまま正面を向き腰をくねらせながらTシャツの裾をゆっくり上げる。この時のポイントは視線だ。クロスさせた腕が顔を抜けるまで、射抜くような視線を前方にあてる。
「フォー!シロ!プリティ!」
知ってるよ、オレはプリティだ。
上まで上げると手首でTシャツを絞って手枷のようにして上にあげる。そのまま膝をついて足を広げて腰からくねらせて胸を反らす。
やらしいだろ?万国共通か?
膝を広げたり閉じたりしながらファックしてるみたいに下半身を動かして上半身で頭を回してTシャツを捨てて斜め後ろに逸らしながら自分の胸に手を添わして乳首を触る。
「シローー!良いぞーー!もっとやれ~~!」
ウケる…じゃあ、もっとやるか。
ズボンのチャックを開けてゆっくりと膝まで下げる。四つん這いになって舌を出しながら自分の股間に手を当てて扱くみたいに動かす。
肩を落として前屈みになり尻を突き上げる。
ズボンが脱げやすいように、こっそり足首下まで下げておくことを忘れるな!
勇吾のお客さんはあほ面して見てるから、満足してるみたいで安心したよ。
あぁ良かった。
そして勢いをつけて四つん這いから立ち上がって、音楽に合わせてズボンを片足ずつ蹴飛ばして脱ぐ。決まった!
さぁ、チップをとりに行こうか。
ステージ淵には勇吾のお客さんが軒並みチップを咥えて横になる。
デカいな.邪魔だ。
まずは列になってる所から取りに行く。
はい、どうも~!はい、ど~もね~!パンツに挟むのはのんけやお姉さん率が高い。次は口に咥えてる人のを受け取りに行く。色目を使って吐息をかけるゲイのお客と女傑が多い。
さぁ、困ったぞ。6人…外人が並んで寝転がる。
どう取る?
適当に手でピッピッと取りたい気持ちを抑えて、おもてなしの気持ちを思い出す。
仕方ない
オレは1番端から行った。
デカいな…依冬くらいのがたいの男に跨って下を見下ろす。
「シロ!ヨカッタ!ユーゴ!トモダチ!」
あぁそうかい…
膝をついて体に手を置く。こんなデカいと股が浮かない…触れるのやだな
「ねぇ?日本語わかるの?」
オレが話しかけると顔を赤くする。何だよ。
体に置いた手を上に滑らせていき顔の横に落とす。
覆いかぶさるようにして男の顔の脇に顔を近づけて耳元で聞く。
「オレと勇吾と、どっちが良い?」
顔を戻して目を見ながら口のチップを咥えて取ると体を起こして頬を叩く。
「どっち?」
「…ア、シロ…」
だよな.オレもそう思うよ。
次!
今度は頭の両脇に膝をついて太腿から腰を引きながら撫でてやる。
頬を撫でながら口を近づけてチップを取る前に聞く。
「オレと勇吾…どっちが良い?」
「ハハ……シロダネェ」
分かってんじゃん。
唇に触れてチップを咥えてやる。
次!
体を起こして跨ってやる。
もう!体が大きいから腰が浮かせらんなくて、触れるのすごい嫌なんですけど!
勃起してる…デカいな
肩に手を置いて腰をくねらせるとあたるからやだ。喘ぐ様に体を仰け反らせてから顔をゆっくりと近づけて聞く。
「オレと勇吾…どっちが良い?」
「オーホホホ……シロプリティ…タベタイネ」
お前の相手したら死ぬよ…
次!
こんな感じに捌いて全員勇吾よりオレが良いと言った!
はっ!ざまぁみろ!
時間が掛かったが有意義だった…。
最後の客の頭の上で足を振り切ってバク宙をかまし、頭の横で手をついて立ち上がるとポーズを取ってフィニッシュした。
はっ!勇吾! お前の客は全部オレの客になったぞ!
オレはメイクを落として長袖のTシャツと短パンに着替えると店内に戻った。
途端に勇吾のお客さんに囲まれる。
「シロ!サイコーだったよ!」
片言で聞き取りづらいから流して聞く。
「だろ?だろ?オレの方が勇吾よりイケてるだろ?」
「オー、イケテル!」
「分かってんじゃん、もっとチップくれよ」
「ワカッテル!チップ!」
なんだかんだ意思疎通出来てるんじゃないの?
オレには家のローンがあるからな…くれるもんはもらうぜ?
「勇吾の方がかっこいい!シロは態度が悪いし嫌いだな…」
金髪男がオレに向かって言ってくるから、近づいて行き息のかかる距離まで顔を寄せて親切に教えてやった。
「お前がどう思おうと…勇吾はお前よりオレを選んだ。それ以上でもそれ以下でもない。違うか?」
そう言って口元を緩めて笑ってやった。
わざわざ見に来て…負け犬の癖に笑わせる。
ワナワナと震えてるのが見えたけどオレは知らない。
だって勇吾が決めた事…オレには関係ないから。
オレは外人ズからチップをたんまり巻き上げてご機嫌になった。
また今半に行けるぞ!
いや、ローンを依冬に払うぞ!
「シロ?ユーゴダヨ?」
携帯を渡されて耳に当てる。
「もしもし?…うん、すごい沢山チップ貰った。…ん~デカくて跨ぎづらい…うん…うん…え…そうなんだ…ん?…あぁ、知らないよ…オレを巻き込まないで……どうでも良い……ん、あぁオレも愛してるよ…じゃあね!」
久しぶりの勇吾の声は少し疲れている様だった。仕事のせいなのか、あの金髪のせいかは知らないけど。まぁ楽しくやってんだなとちょっと苛ついたのは事実だ。
「シロ、タマゴヤキ、ヤダヤダ」
勇吾…こいつに何教えてんだよ…
オレは適当にあしらって他の客の元へと向かった。
十分もてなしたよ、がんばった!
結局勇吾の客はオレの最後のステージまでガッツリ見ていって、その都度ステージに寝転がってチップをくれた。最後だけ少しサービスして笑顔で相手してやった。
頑張ったな、オレ…
ステージを終えて店を上がるオレは着替えを済ますと外人ズをエントランスで見送っていた。
ちょうど桜二が迎えに来た。
「シロ…離れて…危ないよ」
「あれ勇吾の友達だって、あと自称恋人も来た。」
「…へぇ、勇吾は浮気者だね。」
桜二はオレの荷物を持って腰を抱くと車に連れて行った。
「金髪のハーフっぽい奴でやな奴だからいなしてやった!きっと踊ってもオレの足元にも及ばないぜ?なんで勇吾はあんなのに気を持たせんだろうな?最低だよ!全くさ!」
「本当だね、シロに愛してるなんて言っといて、最低だな勇吾は!」
オレは助手席に座って足を抱えると窓の外を見ながら言った。
「あいつらに電話渡されて勇吾と話したんだけど、少し疲れてるみたいだった…きっと忙しいんだろうな…」
「そう…」
しばらくぼんやりと外を眺めて桜二に話しかけた。
「ねぇ、もうクリスマス来週だよ?プレゼント用意した?」
「ん…秘密」
もう買ったんだ…オレも早く買わないと…
言い出しっぺなんだから、明日見に行かないと…
何にしようかな…
「シロ、起きて朝だよ」
「寒いから、眠い…!」
前はこんな風にごねたら甘やかしてチュッチュッてイチャイチャしたのに…
最近はさっさとリビングに行ってしまう桜二…
オレはふてくされた…
何だよ…こうやって夫婦とか恋人って冷めていくのかな…オレはいつまでもラブラブしたいのにさ…昨日の楓の彼氏のハートになった目を思い出す…。
「愛されてない気がする…!」
大きな声で喚いてベッドで暴れる。
「何で?」
桜二が駆け寄ってきて白々しくオレに抱きつく。
「今更何だよ!桜二はもう倦怠期迎えちゃって、全然甘くない!やだ!やだ!」
布団に潜って悲しみに暮れる。
勇吾は向こうでイチャイチャする奴がいるんだ。オレだって桜二と依冬がいる。
でも最近はイチャイチャよりも躾されてるみたいで嫌だ!
「あーーーーん!桜二がオレを甘やかさない!こんなの愛されてない!躾されてつまらない男になっていく!やだーーー!」
「シロ、ほらご飯にするよ。おいで?」
「やだ!行かない!何が家庭的だ!自分の理想にオレを合わせるな!オレは夜働いてんだぞ!まだ睡眠が足りないんだ!なのにお前は朝だよ、とか卵焼きだよ、とか…オレへの労いはないのか!」
「…まったく」
「何がまったくだ!怒ったぞ!」
オレは布団を脱ぎ捨てベッドの上に仁王立ちすると桜二に向かって飛び掛かった!
「シロ、痛い…」
オレを受け止めた桜二の髪をグシャグシャにして顔を引っ叩く。
オレを抱える手を離したら愛の終わりだ!
「桜二は倦怠期だ!倦怠期でオレに優しくない!適当にあしらってばかりだ!怒ったぞ!」
「怒んないで…ほら席について…ご飯食べるよ」
抱えられてダイニングテーブルに着かされた。
ヘアセットした髪型をグシャグシャにしてやった!
オレはフン!と言って卵焼きを食べた。
「倦怠期なんて…そんな風に思うの?」
「うるさい!全然甘くない桜二なんて嫌いだ!安心するとそうやって愛が色褪せてくならオレは違うや奴とまたやってやる!」
オレをジト目で見て…そうやって…!
「シロ…おいで」
チラッと見るとオレの手を掴んで自分の方に引っ張った。
「寂しくなったの?あまりに毎日淡々と過ぎて物足りなくなったの?」
オレを膝に乗せて優しく聞いてくる…
絆されないぞ!お前の時間制限のある優しさなんて!オレは信じないぞ!
「フン!」
オレは顔を背けていじけた。
どうせ8:30までだ。8:30過ぎたらまた適当にあしらわれて9:00には何としてでも仕事に行くんだ。
「オレ知ってるよ…そうやってすればオレの機嫌が直ると思ってんだろ?でも、8:30過ぎたらお前はその髪と仕事の準備をしなくてはいけなくて、何としてでもオレから離れようとする。予測できんだよ!今までの経験からな!
お前の愛はな、時間制限付きの仮初の愛なんだよ!わかるか?そんなものを与えられて不完全燃焼を起こしてるオレの気持ちがお前にわかるかよ!」
そう言って寝室に逃げる!
ばかやろう!桜二のばかやろう!
「シロ…」
桜二が追いかけてくるから布団をかぶって泣く…
他人がくれる愛なんてこんなもんなんだ…
結局みんな自分が1番なんだ…
「ひっくひっく…うえぇぇん…にいちゃんに会いたいよぉ!にいちゃんに会いたいよぉ!!」
…ふざけて“兄ちゃんに会いたい”なんて言い始めたのに…だんだんと本気になって言い始めてる自分に気づく。
桜二に対して抗議で流した涙が色を変えて行くのが分かる。
止まらない…
兄ちゃん……
「ごめん、シロ。ごめん…」
布団越しにオレを抱きしめて桜二があっためる。
オレは布団から出て桜二にしがみつく。
このままだとまた始まる…!!
桜二を見て固まる。
始まっちゃう…と目で訴える。
溢れる慟哭が抑えきれなくて体を震わせて火山みたいに噴出する。
「ぁあああっ!にぃちゃん!にぃちゃん!うわぁああん!やだ…!!にいちゃんが良い!やだ!」
慟哭が止まらない…
しがみついた体が震える…
「やだ!お前なんて…やだ!にいちゃんが良い!にいちゃん!にいちゃん!にいちゃん!!」
頭を振って止めたいのに止まらない…
「シロ…大丈夫だから…息して」
遠くに桜二の声が聞こえる…
心配そうに辛そうに…オレを呼ぶ
桜二ダメだ…
暗転して気を失う…
久しぶりのブラックアウトは頭が冷たくなっていく感覚に痛みが伴って辛かった…
「何でだろうな…何で…」
目を覚ますと桜二がオレを自分の胸に抱きしめて揺らしながら泣いていた。
オレはしばらく目を瞑って桜二の泣き声を聞く。
「何で…はぁ……何でだろうな……」
そんな歌、歌ってるお笑い芸人がいたな…
オレは桜二の胸元に顔を押しつけた。
「ごめん…桜二、ふざけて…言ったら止まんなくなって…」
オレの頭を抱いて自分に押し付けて桜二が言った。
「シロ…ごめんな。寂しい思いさせてたんだな…。何でだろう…気づかなかった…こんなに愛してるのに変だよな…ごめん。ごめん…。口だけだと思うよな…」
違う…お前は悪くないだろ。
「桜二…お前は悪くない………おかしいのは……オレなんだから…傷つくな…傷つかないで…傷つけないで…!オレの桜二を傷つけないで!!」
ダメだ頭が混乱する。
息が整わない…
「桜二…ごめんなさい。傷つかないで…オレの言うことなんて聞かないで…こんな奴の言うことなんて聞かないで…大嫌いだ!こんな奴…本当に大嫌いだ!」
「シロ、シロ!落ち着いて…落ち着いて…大丈夫だから…落ち着いて…息を俺に合わせて?吸って、吐いて…ちゃんと息すれば落ち着くから…大丈夫だから…俺の声だけ聞いて…?いいね?」
オレの頬を包んで自分に向ける。目が赤くなって泣かせてしまった…
オレがにいちゃんの方が良いなんて言ったから…
また傷つけてしまった…大事な桜二を…
「シロ?シロ?息して…!シロ!息して!」
痛い…頭
このまま消えてしまいたいな…
「にぃちゃん…クリスマスって何の日?何でみんなの家にはサンタさんが来るの?」
「うちは団地だから…まとめて下に置いていくんだよ。去年もシロはプレゼントもらっただろ?ちゃんとシロの所にも来てくれてるよ?」
そんなの嘘だって知ってる…
兄ちゃんと手を繋いでスーパーに行く。
夕方の混む時間…オレと同じくらいの子がお菓子を選んでる。
オレが目的のお菓子に手を伸ばすと横から取ってった。
「…にぃちゃん、取られた。」
「奥にまだあるからそれを取りな。」
「やだ、あれが良かった。」
オレはその子を追いかけてぶん殴ってお菓子を取り戻す。
泣き喚くその子の母ちゃんがオレを怒鳴って頬を打つ。
にいちゃんが怒る母ちゃんに謝ってオレの頬を手で押さえてオレを体の陰に隠す。
ねぇ…分かんないよ…初めに盗んだのはあいつなのに…何でオレが打たれるの?
「シロ…痛くない?」
「盗んだくせに…」
「ほら、おんぶしてやるからおいで?」
兄ちゃんの背中に負ぶされる。あったかい…
「シロ、今日は雪が降りそうだね?寒いから兄ちゃんと一緒に寝ような…」
「うん…」
家に帰ると健太が男に泣かされていた。
「お、お前どこ行ってたんだよ?間違ってこいつ触ったらギャン泣きするからムカついてたんだよ…ほら、こっち来いよ…遊んでやるから…」
オレは兄ちゃんの手を離して男の方に行く。
奥に連れて行かれて襖が閉じられる。
ズボンを下げられて向こうで泣く健太の声がする。
オレのモノをレロレロと男が舐めて弄る。
「お前、本当にかわいいな…こんな事されても気持ち良くなっちゃう悪い子だ…ほら見てごらん、こんなにおっきくなったよ?白いの出るかな?まだかな?」
大抵の男は厳つく脅してくる癖に、やる時だけは激甘に囁き始める。
気持ち悪い…
襖が開いて兄ちゃんがオレを見る。
男からオレを引き剥がそうとして殴られる。
「やめて…!にぃちゃんに乱暴しないで!」
オレは男の気を引くため服を全部脱いで男の腕に擦り付いて媚びる。
「もっと…もっと気持ち良くして…」
堪らなくなった男は兄ちゃんを蹴飛ばすとオレの穴に指を入れて広げる。
「ほら、気持ちいいだろ?兄ちゃんに教えてやれよ…お前は喜んで相手してるって…はぁはぁ…かわいいな…シロ」
オレを膝に乗せてオレの中に自分のモノを押し込んでくる。
痛くて苦しくて…死にそうだ…
男の体の向こうで兄ちゃんがオレを見るから、気持ち良くなって喘ぐ。
「はは、シロは見られてると興奮するの?かわいいね…どうしようか?ん?こんなになってどうしようか?」
オレの体でマスをかくようにオレの腰を掴んで動かす。
体に舌を這わせて乳首を舐めて転がす。
兄ちゃんがオレを見てる…気持ちいい…
「あっ…あぁっ…あっ…はぁはぁ…ん…あっ…あ」
兄ちゃん…
兄ちゃんの…気持ちいいよ…
気が済んだ男が金を置いて兄ちゃんをまた蹴飛ばして部屋から出て行く。
オレは後ろからガン突きされて突っ伏して震えてる。
手を伸ばすと兄ちゃんがすぐに繋いでくれてオレを抱き起こす。
泣いてるの…?ごめんね…
オレがもっと上手に男の相手ができれば兄ちゃんは暴力振るわれなかったのかな…
もっとエッチになったら兄ちゃんは泣かないのかな…
風呂場に連れて行かれてシャワーをかけてもらう。
「にぃちゃん…泣かないで…ごめんね、もっと上手になるから…泣かないで…ごめんなさい…」
兄ちゃんにしがみついて抱きつく。
「だから、シロの事、嫌いにならないで…」
「クリスマス!サンタさん来る~!」
「健太、座って…ご飯中だよ。」
「にぃちゃん…お腹痛い…。」
夕飯の頃、急にお腹が痛くなって倒れ込む。
テーブルにおいしそうな唐揚げが乗ってるのに…
「シロ、おトイレ行ってみようか…?」
兄ちゃんがトイレにオレを座らせる。
お腹が痛くてフラフラする…汗が出てきて頭がクラクラして兄ちゃんに倒れ込む。
救急車で運ばれて警察が呼ばれる。
また…写真を撮られて入院する。
「病院にはサンタ、来ない…」
オレは窓の外を見ながら雪が降るか空を見ていた。
「にいちゃん…にいちゃん…にいちゃん…にいちゃん…」
体を揺らして窓の外を眺めて雪が降るのを待つけど、兄ちゃんの言ったことは外れて、雪は降らなかった…
朝、目を覚ますと枕元にプレゼントがあった。
ベッドの隣に兄ちゃんが居て笑いながらオレに言った。
「ほら、シロの事忘れてないだろ?サンタさん来てくれたんだね…」
…兄ちゃんに会いたいよ
「シロ…吸って吐いて…そう上手。吸って…吐いて…」
桜二の声を近くに感じて意識が戻ってくる。
あれは記憶なのか…夢なのか…
「言わないで…先生に言わないで…」
こんな立て続けに発作が起きた事、カウンセリングの先生に言わないで欲しいと、桜二にしがみついて泣く。
もう入院したくない…
「分かった…言わない…」
オレの頭を撫でる桜二の手が湿ってる…
オレはいつまでこんな事を繰り返すんだろう…
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