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第54話
「シロ、ご祝儀袋持った?」
「持った~」
「先生とは2人っきりにならないんだよ?」
「分かった~」
桜二にキスして車を降りた。
手を振って遠くに行く彼を見送る。
振り返るとなんとまぁ白いお花がふんだんに使われた結婚式会場。
白い薔薇が埋め込まれてて綺麗だね。
でもあれだ、散々男とやりまくってからの結婚で純潔アピールすんの、恥ずかしくないのかね…
受付の人にご祝儀袋を渡す。
案内されてチャペルに入る。
妊娠済みの新婦とかどうなのよ?
周りを見渡すと厳ついお友達や仕事関係の人、親族と…分かりやすい。
女性陣のおしゃべりが聞こえる。
「デキ婚するとは思わなかった!しかもダンサーとか…ウケる!」
「それな」
「相手の顔見た?私まだなんだよね」
結構イケメンですよ…
オレは心の中で会話に参加しながら勇吾のリングを弄って暇をつぶす。
後ろの扉が閉まって新郎が入場します、と言われみんな席を立ったからオレも立った。
扉が開くと陽介先生が友達と一緒に入場してヴァージンロードを歩く。
ウケるな…
キョロキョロしてオレを見つけるとウインクしてチュッとして来た。
先生が祭壇の前で扉の方を見て待つ間、オレはまた勇吾のリングを弄って暇をつぶす。
ピアノの生演奏とともに扉が開いて、今度はうちの店の元常連のお姉さんが綺麗な白を纏って現れた。父ちゃんが凛々しい顔してるから吹き出しそうになった。
あんたの娘、うちの店でお持ち帰りの常連でしたよ!なんて言ってはいけない…
賛美歌なんて知らないから歌わない。
神父も嘘つきだから話なんて聞かない。
指輪の交換…どうでも良いから見ない。
誓いのキス…オレは爪先立ちして見た。
ヤリマンと本命が男のダンサーの誓いのキス…!
ウケる…
これで式はおしまい。
新郎新婦が退場してオレはそのまま披露宴会場に向かう。
「あの、スタイルいいですね?モデルさんですか?私、新婦の親友で今日は自分の事みたいに嬉しくて…さっきも泣いちゃったんです。」
「あ、オレは歌舞伎町でストリップしてる新郎の友人です。」
寄ってくる女性にこういうと大抵顔色を変えて消えていってくれる。
指定された席について勇吾のリングを弄って暇をつぶす。
結婚式って桜二の言う通りつまんねぇな…
同じ席になった人と適当に相槌の会話をする。
お色直しした新郎と新婦が入場する。
いちいち場面を割るなよ。めんどくせぇな…
新婦の幼い頃とか、陽介先生の幼い頃とか、動画が流れてお父さんお母さんありがとう!と言って泣く…。
結婚式って桜二の言う通りつまんねぇな…
頼みの料理も大して美味しくないし、つるとんたん食べた方が満足度は高いな…と思った。
新婦の友達の、なんだあれは…出し物?が行われて目を覆いたくなる完成度に友情の度合いを計ってしまった。
新郎の友達の出し物はきっと良いものを見せてくれるんだろうと期待していると移動式のポールが運ばれて来た。
マジかよ…
オレを見て笑う厚化粧の陽介先生。
笑えないね、全然
スポットが当たって勝手に紹介を受ける。
成る程ね…
かまして来たね…面白い。
オレは歩いて行ってポールを見上げる。
短いな…
掴んで揺らす。台座が大きいからか意外と揺れなかった。
そのまま陽介先生の前に行く。
「先生ひどいな…オレのショーをこんな離れたところで見ないでよ。ほらこっちに来て。」
「シロ、怒ってない?」
オレは首を振って微笑んだ。
手を繋いでポールの側に連れてくると、係の人が椅子を置いてあげてた。ウケる。
「音楽は?」
「アップテンポのやつ」
「長さは?」
「5分」
襟のボタンを1つ外してジャケットを脱いで陽介先生に持たせる。
顔を覗いて聞く。
「先生…オレのことまだ好き?」
「大好き…」
ふふ、と笑って先生の前に立ってスタンバイする。
音楽が流れて安っぽいカラーのミラーボールが当たる。単色の方が良かった…
オレはまず先生の座る椅子に足をかけて、体を近づけて、先生を見下ろしながら腰を振る。
「先生…腰を抱いてよ…」
オレが甘ったるい声で言うと、まんまと抱きしめてくる。シロ不足でリミッター外れちゃってんだね。先生の膝に座って体を波打たせながら、ボタンを外して体をゆっくり見せていく。
「先生…舐めて…」
オレが言うと、舐めちゃうんだよな。はは!
肩を出してボタンの外れたシャツ。仰け反って腰を振るオレと、オレのシャツに両手を突っ込んで腰をがっちりボールドする先生が、オレの乳首を舐めるなんて…新婦の凛々しい親父はどう思うかな?
流石にこれ以上は可哀想なので、先生に脱いだシャツを渡してポールに向かう。
少し助走をつけて飛びつくと少し揺れる。
「あ、先生持ってかれる。支えて!」
オレが言うと、変態の烙印を押された陽介先生はポールの土台に乗った。
先生が乗ったことを確認してから、足で反動をつけて派手にスピンさせて体を仰け反らせて回る。
そのまま仰け反ってポールの下を掴んで逆さになる。このまま降りても良いくらいの高さだ…
足を上に伸ばし、足首で挟むと腹筋でそこまで体を起こして上に登る。背中と太ももでポールを挟んで、体を反らして手と爪先が付くように上を向いて仰け反って回る。一応拍手は聞こえるからいいのか?そのまま下まで降りると、仰け反って両手をついて片足づつポールから離してバク転した。
「シロ…」
呼ばれて先生の方を見ると、チップに見立てた現金を咥えて横になってるから少し吹き出して笑った。
「先生…ダメだよこんな事したら…」
オレは陽介先生の腹に腰を落として座り、両手を顔の横に着いて話しかける。
「シロ…これで諦めるから。」
またそんなこと言って…
オレは座る位置をずらして先生のモノの上に座って腰を動かした。
「はっ!シロ!シロ!」
どんどんおっきくなる先生のモノを後ろの手でも触ってあげる。
公開処刑だ…!
そのまま先生の肩の上に両手を置いて、顔を近づけながら口を開けてチップを取りに行く。
「先生.肩に力入れといて、下手すると外れるよ。あと、オレが良いって言うまでステイだよ?」
笑いながらオレが言うと、先生の肩がグッと締まる。良いね。こういう反応…大好きだ。
キスする様に口をつけて舌で舐めてあげる。チップを受け取りながらオレは先生の上で逆立ちしてゆっくり後ろに足を片方ずつ下ろした。フィニッシュはまだこれからだ!
肩を逸らしながら飛び上がりタイトに回る。
あ、先生の顔…間抜けだ。
そのまま片足ずつ着地する。もちろん先生の体を跨ぐ形で。
これでフィニッシュ!ピッタリ5分だ!
割と盛り上がって普通に嬉しい。
これでチップがもらえればいいのに…
営業で結婚式回れるのに…
「シローーーー!オレの嫁!オレの嫁!」
起き上がってオレを抱きしめて首にキスするあんたはすぐ離婚だな…
「先生…シャツ着せて?」
甘ったれて言うと、鼻息を荒くしてお世話してくれる。腕を通して上からひとつずつボタンを留めていく。息のかかる距離まで顔を近づけて先生を見上げる。
「オレのこと諦めたの?」
「…シロ」
オレのズボンの中にシャツをしまう手がいやらしい…
後ろ向きになってジャケットを着せてもらう。
また先生の方を向いて見上げて言う。
「ねぇ…キスしたい」
「!…シロ!!」
先生はオレの口に舌を入れて激しいキスをした。
オレの腰を掴んで背中を抱き寄せて、頭がクラクラするくらいの激しいキスで顔を離すと同時に、新婦が先生を引っ叩いた。
「元はオレの男だから」
オレは新婦にそう言って席に戻った。
「君すごいね…ダンサーなんだね、美しかったよ!あんな動きがあの棒の上で出来るなんて信じられないよ!体幹が強いんだね?」
「お店のポールはあの3倍はあるからもっと派手に動けますよ?よかったら見に来てください。」
オレは店の宣伝も忘れない。
「すごい綺麗だった!ファンになっちゃう!」
「新宿の歌舞伎町のお店で踊ってるから興味があったら来てみてね!」
ちゃんと女性にも宣伝しますよ。
ワラワラと人が集まって騒然となる。
1人の妙齢の女性がオレの小指を指差して言う。
「ねぇ、その指輪って高いやつでしょ?」
「あぁこれ、もらったやつだから値段は知らないんですよ。有名なやつなんですか?」
「それ、確か50万はしたよ…」
笑顔が凍った…マジかよ…
それをあんな雑に送るなんて…
「あはははは、まさか!」
笑って誤魔化して手を隠す。
オレこれ付けたまま風呂に入って寝て、顔洗って…ぶつけたりしちゃったよ…。
新郎新婦が各テーブルを回って挨拶してる。
ここにも来るんだ!楽しみ。
順番に回ってオレの座ってるテーブルは何故か最後にされた。
「シロ…さっきはよくもやったわね。」
「やだな、怖いよお姉さん…」
きて早々鬼モードでビビる。
「シロは悪くない!ストリップのサービスをしてくれただけだから!」
ちょっと見ない間に陽介先生の髪は乱れて服の胸元がヨレヨレになっていた。
「また2人でお店に来てね!」
オレは満面の営業スマイルで対応した。
お姉さんの怖い顔が超絶ブスで心の中で笑った。
「もしもし?桜二?…終わったよ!…ん?…結構楽しかった…ふふ…あとで教えてあげる……うん、待ってるね…はーい…」
電話を切って引き出物の袋の中を軽く覗いた。
何が入ってるのかな…
「なぁ…もう帰るの?」
声をかけられてそちらを見るとがたいの良いワイルドなハンサムがオレを見ていた。
「あぁ、もう帰りますよ。」
「すごいな、あんなにエロいの初めて見たよ。」
間隔を詰めてくる感じに警戒する。
こいつゲイだな…しかもハードそうだ…
「抱いたらもっとエロいのかな?」
「さぁね、これから来るやつに聞いてみたらどうですか?」
オレはそう言って相手を睨んだ。
これ以上来たらダッシュで逃げるからな…!
しばらく睨み合うとオレのそばに車が寄せられて停まった。
オレの桜二様が来てくれた!
桜二は運転席から出てきて相手をジロリと見た。
不穏な空気を感じたの?威圧してるの?
後部座席を開けてオレから荷物を受け取って丁寧に入れる。
オレを連れて向こうに回って助手席のドアを開けるとスマートにオレを座らせる。
かっこいいな、さすがオレの桜二様だ!
ドアを閉めて相手に何か話しかけてる。
やめろよ…桜二…ガチムチだぞ!
笑いながらこっちに来て運転席に座る。
相手は怒った顔してる…
そのままシートベルトを付けて、オレを見て、後ろを確認してウインカーを出し車を出した。
「ねぇあいつになんて言ったの?」
「…え?何も言ってないよ?それよりどうだった?楽しかったんでしょ?」
運転しながらオレの頭を撫でる。
その手が気持ち良くて掴んで頬に当ててキスした。
「あのね、陽介先生のお友達の余興をしたの。何にも教えてもらってなかったけど上手にできたんだ!」
「何の余興をしたの?」
オレはふふふと笑って溜めてから言った。
「ストリップ!」
「あらぁ~、先生やっちゃったね…」
「そうなんだよ!引っ叩かれてた!」
あははは!車内に2人分の笑い声が響く。
オレ達は絶対性格の悪いカップルだ…
人の不幸を笑うなんて…最悪のカップルだ!
「ねぇ!さっきなんて言ったの?」
「ふふ…何も言ってないよ。」
「シロー!ファイト~~!」
常連のお客さんに応援してもらいながらオレはイブのステージを頑張って踊る。
客なんていねぇじゃん!
みんな今頃セックスしてんだよ!
目の前に座る桜二に目で訴える!
もう帰りたい‼︎
「シロ~~!いちゃつけ~~!ここでやれ~!」
なんだよそれ!
オレはプロだから客がいなくても最後まで踊る。
桜二の拍手が響いて虚しい…
今日はDJもお休みだ…代わりに支配人がDJブースに居る。
「もう今日は休みにしようよ!誰も来ないよ!」
オレは支配人に直談判した。
「あれー?入って良いの?」
店の入り口から依冬が入ってきて階段を降りる。
「今日はここが受付です。」
DJブースでチャージ料を取る支配人…セコいな!
「お客さんいないね?」
「そうなんだよ!10:00の時点でもうこんなんだよ?オレさっき踊ったけど、あそこのお姉さんとそこのお兄さんしか居ないんだよ?」
あと2時間粘ったって人が増える気がしないよ…
オレは暇を持て余して桜二をステージに上げた。
「あ…あ…」
「なぁに?緊張してるの?」
意外とこういうのに弱いんだな…ちょっとかわいい。
「ここをこう持って体を上げるのやってみて!」
「え…?ここを持って?体なんてあがんないよ」
ポールダンスのレクチャーをして桜二を立派なストリッパーに育てようと奮闘する。
「ここから踏ん張って、ホイっとこんな感じで飛び乗ってみて?」
「出来ないよ…シロ」
「なんでやる前から諦める?ダメだよ!出来る!」
何となくやるけど出来ない桜二をポールの上から見るのめっちゃ楽しい…
「シロ、彼氏は体が大きすぎるんだよ。もっと簡単なやつ教えてやんなよ。」
支配人に言われてステージの方に桜二を連れてくる。
「四つん這いになって腰動かしてみる?」
「お、いいぞ!そこで始めろ!」
「お兄さん飲み過ぎ!水あげて!」
「やだよ…シロ~」
オレはやる気のない桜二に落胆しステージに寝転がった。
ポールから落ちた時に見た天井…あの時を思い出して笑う。
「支配人は今度誰かが落ちたら、すぐ動かしちゃダメだよ?ふふ、あれやったらダメなやつだからね?」
「あの時は怖かった…!安全第一だよ」
オレはうつ伏せになって反動をつけて立ち上がった。そのまま後ろに仰け反って手を付いてブリッジする。足をゆっくり上げて逆立ちになって足を下に戻す。開脚して体を仰け反らせてストレッチする。
あと1時間でまた次のステージの時間になるっていうのに…お姉さんは帰り、飲み過ぎたお兄さんは寝た。支配人と依冬とオレと桜二とカウンターの奥でひたすらグラスを磨くマスターしか居ない…。
「もう…帰るか…」
支配人の心が折れた。
「やったーーーー!!」
オレはステージから降りると依冬と桜二を連れて店を出た!
「うわーい!帰ったらプレゼント交換しよう!」
まだ11時!映画だって見れそうだ!
「さぁさぁ!オレはこの日を待ってたんだよ!」
桜二の部屋に帰ってきたオレは寝室のクローゼットから2つの袋を持ってきて2人に渡した。
「これは桜二ので、これは依冬のだよ!見てみて!早く!見てみて!」
「待って!シロ…これは俺から…気に入ってもらえると良いな!」
依冬が大きな袋をくれた。重い!何?
「…シロ…これどうぞ…」
何?しおらしい!かわいい!
桜二から小さな紙の袋を渡された。
みんなでプレゼントを開ける。
まずは依冬のでかいやつを開ける。
「あっ!あのコートだ…!」
オレが前依冬に貸してもらってブカブカだったコート!嬉しい!!
「わー!依冬ありがとう!」
オレは羽織って袖を通した。ピッタリだ!
「あぁ!シロよく似合うよ!かわいい!」
桜二のかわいいは女子高生と同じ。だけど嬉しい!くるくる回ってお披露目する。
依冬に抱きついてキスする。
軽いのにあったかい!しかも依冬とお揃いだ~!
「あっ!シロ、これカッコいい!」
依冬がオレのプレゼントを開けた。
「お前に似合うと思って…どうかな?手巻きだけど、チェーンは奮発したよ!」
「すごいカッコいい!ありがとう、大事にするね!うわー!大きさもピッタリだぁ~!」
すごい喜んでる!嬉しい…!
「桜二の開けてみるね!」
オレはそう言って桜二のプレゼントを開ける。
なんか可愛いぞ!
水色のリボンがついてて茶色の箱に入ってる。
ドキドキしながら箱を開けると可愛いブレスレットだった。
やだ、すごいドキドキする。
「かわいい…!」
オレは桜二を見てお礼を言った。
「桜二、付けて?」
手首を差し出して思い出す。
オレの手首触ってたのって…
もしかして…サイズ見てたのかな…
キュンとして顔が赤くなる。
桜二はブレスレットを取り出してオレの手に巻く。
2連になった黒い革のブレスレットで留める部分が馬の蹄鉄になっていた。
「似合ってるよ、シロ」
依冬に言われて手を上に上げて眺める。
かわいい…!すごく気に入った!
「蹄鉄は幸運のお守りだから…シロに沢山良いことがありますようにって…あと、お守りも兼ねてて、もし息が浅くなったり…発作が起きた時、これを触れば楽になるから…絶対楽になるから、お守りにして?」
何かそれ…カッコいい…惚れる…
オレは顔を赤くして頷いた。
「桜二…ありがとう…嬉しい」
桜二にぎこちなくキスして離れる。
恋だ…恋してるみたいだ…!
散々やってんのに…何でこんなにトキメクの?
「じゃあ、シロのくれたの開けてみるね。」
肩の荷が降りたのかリラックスした桜二がオレのプレゼントを袋から出した。
黒い箱に赤いリボン…
「わぁ!何だろう?」
ワクワクする、どんな顔するかな?
リボンを解いて箱を開ける。
桜二の顔が間抜けな顔になって固まる。
「綺麗だろ?色落ちしないよ?オレが選んで作ったの!この色、桜二っぽいだろ?」
「作ったの…?これを?」
まぁ…ミシンはお姉さんがしたけど…
桜二はお財布を箱から出して掌で触る。
何なの?どうなの?気に入ったの?
オレは近づいて桜二の反応を見る。
桜二は二つ折りを両手で広げる。
オレの顔を見て涙ぐんで口がプルプルする。
「変な顔すんな!」
"桜ちゃんが大好き"
「シロ…オレもシロが大好き…」
ぽろぽろ泣いて大事に両手で包んでる。
そうか…気に入ったか?良かった!
みんなすごいぞ!
お互い満足のいくプレゼント交換なんて確率的に低いのに、こんなに充実したプレゼント交換が出来るなんて…やっぱりオレ達は違うな…!
依冬は懐中時計を気に入って掌で撫でてるし、桜二はお財布の中身を入れ替えてる。
オレはカッコいいコートと愛の篭ったお守りのブレスレットを貰った!
このブレスレットはずっと付けてよう…。
切れるまで外さないで付けてよう…
「ここオレが書いたんだよ?」
桜二に教えてあげる。
「ここの色は変えたんだよ?」
頷いて嬉しそうにしてるのを眺めて思い出した。
「あっ!忘れてた!」
寝室に行って手にカードを持って戻る。
本当は袋に入れるはずだったのに…うっかり忘れてた。
「これ、入れとくはずだったやつ…」
2人に渡してソファに逃げる。
だって革細工屋のお姉さんが言ったんだ…
メッセージには甘い言葉を大盛りで!汁だくで!増し増しの増しで!って…
ペラっとめくる音がして沈黙が流れる。
「シロ…」
「あぁシロ…」
感極まった2人が顔を赤くしてオレを見る。
やめろ…恥ずかしいから…!
「こっちみんな…」
「シローーー!!」
2人でソファに座るオレに抱きついてスリスリする。
その後は、まぁお察しの通りだ…
時刻は12:30
もうイブじゃないけどセックスした。
「荷物これで終わり?」
「うん」
「少なっ」
バイバイ…オレのアパート…
ありがとうございました。
AM10:00
オレは新宿のど真ん中のポロアパートから引っ越します。
少ない家具はリサイクルショップに売って、手元に残った物は本と衣類だけ…。
オレはそれらを箱に詰めて依冬の車に運んだ。
とりあえず桜二の部屋に荷物を持ってくる。
少ない荷物に依冬が驚きを隠せないでいた。
「なんで生活してて、これだけの荷物で済むの?」
「うるせぇ…」
とりあえずの避難場所としてリビングに韓国人アイドルのポスターを貼る。
隣に兄ちゃんの写真を並べて貼る。
「バランスがおかしくないか?」
桜二がそう言って革の二つ折りの写真立てに兄ちゃんの写真を2枚入れてダイニングテーブルに置いた。
「これなら持ち歩けるし、こうして飾れるよ?」
「本当だ!ありがとう」
これなら無くさない…良かった。
オレは綺麗に飾られた兄ちゃんの写真を眺めた。
「シロのその格好って何なの?」
朝から着てるオレのセーターを指差して依冬が言う。
何でそんな顔するのが分からないけど、嫌そうな顔をされた。
「ん?クリスマスだから…」
オレはそう言って胸元に描かれてる柄の説明を依冬に始めた。
「勇吾からテレビ電話だよ」
時差で向こうは深夜のはずなのに、勇吾は寝てないのか…?
オレは着てる服が見えるように立って電話に出た。
「あっ!勇吾、あれ着てる?」
画面の勇吾はコソコソしてて落ち着かない。
後ろでは大勢の人がゴチャゴチャ動いてるのが見える。
ホームパーティみたいな雰囲気だ。
「着てるけどさ…これから人前に出て話さなきゃだめなんだよ。一瞬着替えても良い?」
すっごい嫌な顔をされてちょっと悲しい。
なんだよ、猫のトレーナーだって普通に着れるのに、あれは良くてこれはダメな理由ななんだよ!
「ダメだよ…せっかく送ったのに…気に入らなかったの?オレは気に入ってちゃんと着てるよ?」
「俺だって着てるよ!ほらぁ!見ろ?」
そう言うと勇吾は少し体を後ろにして胸元の絵柄を見せてポーズした。
オレは勇吾にお揃いのクリスマスのセーターを送ったんだ。ただのセーターじゃない…かわいい絵が描いてあって、オレはそれを見て即決したんだ。サングラスを掛けた猫がサンタの格好をしてHOHOHO!と言ってる黒いセーターだ。
白い雪が水玉模様みたいで可愛いのに…周りに不評で困惑する。
画面越しの勇吾もよく似合ってるのに…
勇吾は画面に近づいて話しかけてくる。
「シロ…これから行かなきゃダメだからまた後でかける。愛してるよ…チュッ」
そう言うと一方的に通話は切られた。
「打ち上げかな?」
桜二に聞くとさあね、と言って鍵と鞄を持った。
「今日はお店やるのかな?」
玄関までお見送りに行くと桜二が聞いてきた。
「今日はやるよ、もうクリスマスは終わったから。次は年末に向けて浮き足立つんだ。今日なんて多分すごい混むよ。」
「じゃあシロは大忙しだな…」
行ってらっしゃいのキスをして抱きしめる。
「シロ、俺にもして?」
依冬が手を広げて俺を抱きしめるから、依冬にも行ってらっしゃいのキスをした。
「きをつけてね~」
手を振って2人を見送る…
新しい家ではこんな感じになるのかな…
想像して口元が緩んだ。
「要らないもの捨てよ~」
オレはただでさえ少ない荷物をもっと厳選して要らないものを処分した。
歯を磨いて顔を洗って…着替えてストレッチを始める。昨日3Pをしたから体が怠くて痛い。
「依冬…SMプレイしなくても大丈夫になったの…なんでかなぁ…カウンセリングか何か行ってんのかな…?」
独り言を言いながら黒いテレビを鏡がわりにして体をほぐす。
最近頭のシルエットが気に入っていない…
髪が伸びたんだ…
オレはストレッチを終えたら美容室に行こうと、携帯から予約を済ませた。
「さぁて…と」
壁側に逆立ちして片足を僅かに壁に付ける。そのままもう片方の足を床と並行の高さに上げて腕立てする。
「体は毎日…動かさないとな…」
ストレッチを終えてシャワーを浴びてオレは出かけた。
いつもの美容室でいつものように聞かれる。
「シロ、髪色どうする?」
もう決めてた。
オレは笑顔でお願いする。
「暗い赤で」
「お!赤髪再び!恋しくなったの?」
「うん」
オレは初期設定の赤い髪に戻した。
今のオレに赤髪はどんな感じで似合うか気になって…。
鏡を見る。
以前は虚勢を張る為に気合を入れていた赤い髪は今では落ち着いてムードを持った気がする。
ただ単に自分が老けたせいかも知れないけど…
美容室を後にして自分の家に向かう。
工事の人に部屋の窓をつける位置を伝える為だ。
もう街中のクリスマスソングに苛つくことも無くなり、自分の変化に心地よい違和感を感じた。
オレ…良くなってる。前より良くなってる。
桜二のくれたブレスレットをそっと掌で撫でた。
「え!お兄ちゃんがオーナーなの?ホスト?儲かるんだな…オレもやろうかな…?」
部屋の前で待っていた工事の人に謝りながらオレは家の鍵を開けた。
工事の人の他に建築士まで同行していて、請求書に匠代が含まれるんではないかと警戒した。
中に入り、窓をつける部屋を案内する。
「この部屋に窓をつけて欲しいんです。ここはダンスの練習部屋にするので、床を張り替えて壁に鏡をつけます。音も出すのでなるべく防音性の高い窓をお願いします。」
工事の人に言うと匠が横から大きさを尋ねてきた。
オレは壁に手でこれくらい…とサイズを伝えた。
「リフォームって建築士の方まで同行するんですね。てっきり工事の人だけかと思いました。」
工事の人を部屋に残してリビングの方に移動しながら匠に牽制して話した。
「あぁ…ここ、私が設計したので。人が入るまで携わりたくて。」
そう言って笑いもしない建築士は後ろを振り返って言った。
「隣の部屋は何に使う予定ですか?」
「あぁ…あそこはトレーニングルームかな?本人は窓とか要らないって言うからそのまま使うみたいですよ。」
オレがそう言うと興味を持ったのか尋ねてくる。
「おひとりじゃないんですか?」
「えぇ、3人で住む予定です。ここ、向こうに3部屋並んでるでしょ?あれで決めたんです。」
オレがそう言うとあ~、と頷いた。
午前中のリビングは陽が入って気持ちよかった。
床を柔らかく照らして暖める。
「わぁ…あったかいな…」
「採光には拘りました。冬でも昼間なら暖房なしでも暖かくなると思いますよ。」
そう言ってここのこだわりポイントをいくつも教えてくれた。
「あ、そうだ!例えばなんですけどね…あの3部屋のうち2部屋を繋げるとどのくらいかかりますか?」
「あそこは特に何も無いので切って縁を処理するだけでそんなにかかりませんよ。繋げますか?」
オレの前を歩いて部屋に向かう匠の後を追う。
どうしよう…良いのかな…揉めるかな…
でも、桜二と離れるのは…無理だな。
「ここ…こんな感じで…抜いてください。」
「この人とは、特別なんですか?」
「あ…寝るとき…一緒じゃ無いと、寝られないんです…ははは」
オレを見てニヤける匠にバカ正直に答えて赤面する。何言ってんだろ…。
匠はメジャーを出して壁を測ってメモしてる。
仕事が早そうだ。良かった。
見積書に依冬が反応しないことを願おう…
リビングに戻るとその依冬が居てビビった。
「あ、シロ、髪色良いね、前より落ち着いた赤だ。可愛い…。ん、何?何か悪い事、してたの?」
3つ並びの部屋から匠と出てきたオレを睨んで言う。
馬鹿だな、オレを誰だと思ってんだよ?
匠は好奇心旺盛なのんけだ。
間違いなんておこらねぇよ…
「あ…依冬…部屋さ、あの…えっと…」
「もう片方とは繋げなくても良いんですね?」
匠~!!今それを話そうとしてたんだよ!
「何?窓じゃ無いの?」
怪訝な顔をして依冬がオレの顔を覗く。
「あ、窓は決まって、今やってもらってる!……それとは別に…」
オレが言い淀んでいると、匠が助け舟ならぬ戦車をよこした。
「3つ並びの部屋のうち、2つを繋げます。」
オレを見る依冬は顔色変えず、なるほど…と言った。
怒ったの?勝手にして怒ったの?
「違うんだよ…夜寝られないんだよ…桜二が隣に寝てないと起きちゃうんだよ…それだけなんだよ?」
依冬に縋って話す。
依冬はオレの腰に手を置いて、優しい顔をしながら言った。
「シロ、後で話そう。」
「……うん。」
匠と工事の人の見積もりをもらい、着工と完成までの期日を教えてもらった。
匠は工事が終わるまで来るそうだ。
玄関で見送ってアイランドキッチンで見積書を眺める依冬の元に戻る。
「……寝られないから。」
そう言って依冬に抱きついて甘える。
「良いよ、別に…たださ…」
俺の腰を抱いて引き寄せながら依冬が言った。
「ここでの初エッチは今、俺としよう?それで手を打つよ。」
何と!君の本能は凄いな!そのことばかり考えているのかね?
オレは苦笑いしながら依冬に言った。
「ベッドも無いのに床でするの?」
「いや、立ってする。」
そう言うと依冬はオレを後ろから抱いてズボンのチャックを開けた。
部屋の中はあったかいとは言え、さっきまで外にいた依冬の手は冷たくて鼠蹊部に触れる彼の手の冷たさに鳥肌が立った。
「手、冷たい…!」
依冬の手を掴んでやめさせようとすると、彼をより興奮させてしまいアイランドキッチンに押し付けられてしまった。
ズボンを下げられ指を入れられる。
「あっ…!冷たい…依冬…手が冷たいの…あっあっ…はぁはぁ…んっ…あぁあっ…ぅう…」
オレの腰を引いて尻を上げさせ指の本数を増やして刺激してくる。手の冷たさも気にならなくなり足が震えて気持ち良くなる。
依冬はオレのコートを横に垂らして、あのセーターを手で押し上げて背中を出すといやらしく舐めて愛撫する。
オレはキッチンに突っ伏して喘ぐ。
「あっ…!ぁあん…はぁはぁ…んっ…あっあっああ!依冬…はぁはぁ…あ…ん…はぁはぁ」
自分のコートを手で払って後ろに回すと、ズボンのチャックを開けて少し下げ、勃ったモノをオレの尻に擦り付けながら覆いかぶさって聞いてくる。
「シロ…おねだりして…?」
オレは腰を動かして依冬のモノに擦り付けながら、体を捻って後ろの依冬を見た。
カッコいいコートを着てるスーツ姿の依冬が、逆光で少し老けて見えてエロい…。
オレの肩を掴んで尻に擦り付けながら煽って聞いてくる。
「シロ…何して欲しいの?」
「あ…はぁはぁ…依冬の…依冬のおちんちん…シロに挿れて…!気持ち良くして…!」
良いよ、と耳元で笑ってオレの腰を掴むと大きなモノをねじ込んできた。
「ああっ!ん!…はあはあ…んっ…あっ…!はあはあ……んんぁっ…あっあっ…はあはあ…苦しい…」
何でこんなに興奮してるのか分からないけど、依冬は凄く激しくオレの中を突いてくる。
慣れてきたとは言え、やっぱりあいつのモノは規格外にデカくて、苦しい上に激しい…息を吐かないと裂けそうになる。
「や、やだ!依冬…もっとゆっくりして…!くるしいからぁ!もっとゆっくりしてよ!ばか!」
オレは暴れて体を起こし後ろの依冬の手を叩いた。彼の顔を睨むと、ダメだ…スイッチが入っていて、楽しそうに笑ってる。オレの体を起こして勃ったオレのモノを扱き始める。快感で足がわなないて立っていられないオレの体を、片手で支えながら腰を動かしてくる。
「あぁっ!依冬…!!やだぁ…中に出しちゃやだ…外に…外に出してぇ!…んん!あぁっあぁあ!イッちゃう!…はぁはぁ…んっ!依冬!イッちゃうよ!!」
足が震えて腰がビクビクと痙攣する。依冬に扱かれるオレのモノはタラっと液を垂らしていて床に垂れる。きもちいい…!イッちゃう…
「あっあああ!依冬!んあっああ!あっ…ああ…ぁ……ん…はぁはぁ…」
依冬はオレのお願い通り外に出してオレの背中と腰のくぼみに温かい液を垂らした。
「シロ…ティッシュある?」
「……リュックの中」
オレは依冬がリュックを取りに行く間ずっと間抜けな格好で待った…
「どこらへん?」
「小さいポケットのとこ…桜二が入れてくれた」
「あったあった!待っててね~」
オレの背中を拭いて先っぽを拭いて…舐めて…口に入れて…
「何で!何でまだそうするの!」
しゃがんで腰を掴んで離さない依冬の頭をグイグイ押して退けようとする。
「汚しちゃったから綺麗にしてあげてるのに…」
そう言ってまた咥えて扱くからもう好きにさせた。
「イッちゃう…んん…依冬…はぁはぁ…イッちゃうよ…!」
結局手持ちのティッシュが無くなるまで依冬の相手をしたオレは、最後は床で果てた。
依冬のポケットからさっきからバイブレーションの音がする。
「でんわ…なってる…」
「後で良い…」
「さっきから…ずっとなってる…」
オレがしつこく言うと、渋々コートから携帯を取り出して出た。
「あ…!」
と言ったと思ったら、小さい声で謝りながら遠くに行った。オレはヘリンボーンの床に頬をつけて床板の流れを指でなぞって惚けていた。
慌てて戻ると辺りをそそくさと掃除して、オレのパンツとズボンを直し、自分とオレのコートとリュックを手に持ち、オレを抱えて部屋を出た。
「やばい…打ち合わせ、忘れてた!」
「鍵、鍵閉めて!」
オートロック慣れした依冬が、そのまま行こうとするから、鍵を渡して掛けさせた。
「確認して!」
オレが言うとドアノブを引っ張りロックを確認した。
急いで階段を降りるから上に担がれたオレは結構怖い。
通り過ぎる住民が人攫いの様に依冬を見る。
今度上に引っ越してきます。
心の中で言って目を逸らした。
車にオレを乗せて急発進する。
「いつか人を轢き殺すぞ!」
オレが注意するといやいやいや…と言ってウインカーを出した。
「俺まで逮捕されたら大変だ…」
そう呟いて安全運転になった。
ばかだな、こいつ。
本当にかわいいやつだ。
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