57 / 62
第57話
「やだ~行きたくない~!何で桜二達が休みなのにオレは仕事に行かなきゃいけないの?やだ~!やだぁ!」
オレは駄々をこねている。
本日12月31日、大晦日をオレは店で迎える…
桜二と依冬も来てくれるって言うけど…
誰だよ…こんな日に貸し切りにして…年越しパーティーなんて企画した奴はさっ!
家でやれよ!!
「どうせ内輪で盛り上がるパーティーなんだよ?オレなんて居ても居なくても良いんだよ?何で行かなきゃダメなの?箱貸しじゃないの?もうやだぁ~!それに桜二と依冬は入れないよ、貸し切りだからね!控え室は楓もいるから入れないし、外でずっと待ってるの?年越しを?そんなの、可哀想だよ~」
行かなきゃダメな時間なのに、桜二にしがみついて離れないオレを依冬が後ろから捕まえる。
「シロ…結局行くんだからさ…もう行こうよ…」
何だよその理屈!
聞き分け良い子ちゃんじゃねぇんだぞ!
「遅れちゃうよ。もう行こう…」
時計を見た桜二は、そう言ってオレを抱えると、荷物を持って玄関に向かった。依冬がオレの靴を持って玄関の鍵を閉める。
何だよ、良い連携プレーだな!さすが兄弟だ!
桜二はオレを体につけたまま後部座席に座り、依冬が桜二の車を運転する。
「何で!何でそこまでして仕事に行かせたいの?お前ら酷いよ!酷い!ばか!」
オレは桜二の頭をグシャグシャにして痛めつけた。
「シロ、大人しくして?楽しい事があるかもしれないよ?ほらチュッチュッ!」
オレを膝に抱いたままふざけてキスしてくるから、オレは本気のキスを見せてやった。
桜二の首に手を回し、舌を絡めて熱くキスする。
もうこのままエッチしようよ…と腰を擦り付けて誘惑する。
「シロ…赤ちゃんみたいだよ…」
運転席から依冬が冷たく言う。
良いんだ、オレは赤ちゃんでも良い!
ママから離れたく無いんだ!
桜二の無駄にキメてる黒シャツのボタンを上から外す。エロい…たまんない
桜二の首にキスして舌を這わし耳元で甘く囁く。
「ねぇ、桜ちゃん…エッチしようよ…。オレ、お前としたい…ねぇしようよ…」
「悪魔の囁きだ!」
運転席から依冬がまた言う。
「あぁ…シロかわいい…」
桜二は悪魔の囁きに乗ったぞ!ばかめ!
オレのコートの下に手を滑らせて腰を掴んで背中を大きな手で撫でてくる。
オレは猫のトレーナーをめくって胸元を見せて腰を擦り付けながら言う。
「桜ちゃん…シロの舐めて…」
「あははは、もう着くよ、残念でした~!」
桜二はオレの背中に触れて愛撫するみたいに指でなぞり、ゾワゾワして仰反るオレの胸元を舌で舐める。あぁきもちいい…乳首も舐めて…!
「シロ、着いたよ…」
依冬が後ろを振り返って言う。
「あ…あっ…ん…桜ちゃん…挿れて、挿れてよ…」
「シロ…着いたって…」
は?
燃え上がったはずの桜二の炎は、まるでカズコンロの炎の様に自由自在に消せるんだな…大人って最低だ!弄ばれた!
オレは桜二の首にしがみついて顔を埋めて首を振る。
「…桜二達はどうするの?」
「シロ、可哀想だから一緒に中まで行ってあげる。」
「…靴履く…」
観念した…もう目の前が店だ。
依冬が本当に店の前に停めやがった。
外で支配人が車の中を見てるのが見えた…
だから観念した。
「1人で行けるもん!」
「みんなで行こうよ…」
「やだもん!1人で行けるもん!」
今度は車の中でごねる。
後ろのドアが開いて依冬がオレを引っ張り出す。
桜二も車から降りて引っ張り上げられるオレをまた体につける。
「シロ…赤ちゃんみたい…ププ」
いんだ…赤ちゃんでもいんだ…フン!
オレを抱っこしたままエントランスに行く桜二と依冬…
「おっそい!シロ!おっそい!何でいつまでも車の中でビャービャー言ってんだろうね…?クソガキだね、本当こいつはクソガキだ…」
支配人が悪口を言うけど…いんだ。
オレにはママがいるもん…
桜二が体にオレを付けたまま依冬と店内に入っていく。
「オレはこっちじゃなくてあっちの階段だよ?」
顔を上げて桜二を見ると、ステージの方を見て手を振って笑ってる。
下では大音量で音楽が鳴って歓声が上がってる。
オレは桜二の視線の先を見て口を開けた。
あ……勇吾…
「おーい、シロバブ!!いつまでママにくっ付いてんだよ!早くこっちに来い!喜べ~!勇ちゃんが遊びに来てやったぞ!」
桜二が唖然とするオレをつけたまま階段を降りてステージの前まで行く。
「勇吾から連絡があって、今日ここでシロにサプライズするって聞いてたんだ。黙っててごめんね。ほら、遊んでおいで。」
桜二に促されて、オレはステージに上がって勇吾と対面した。
周りは知らない外人が沢山居て、いつもの店内なのに、まるで海外に来た様な気になる。
「勇吾…何で?何でここに居んの?」
「ふふふ、シロ、これ出来るか?」
勇吾は不敵に笑ってそう言うと、踏み込みながらポールに乗り、二の腕と脇、太腿の外側でポールを挟み回り出した。
「そんなの…出来る!」
オレは靴を脱いでコートを脱ぐと猫トレーナーを腕まくりしてポールに掴まった。
そのまま足を上げて上に絡めて体を起こしてポールの上に登ると、目の前に優しく笑う勇吾がいた。
「やっぱり…思った通り。お前はまた踊れるようになった…ほらぁ、俺の言った通りだったろ?」
目の前の勇吾に顔が綻んでしまう。オレは勇吾の顔に手を伸ばして頬に触れて言った。
「お前はやっぱり、綺麗な男だ…」
オレがそう言うと、おでこをオレに付けて笑いながらポロポロ泣いたから、オレは勇吾の頬を包んでキスしてあげた。
そのままチュッチュッと軽いキスをしながら回って降りて、足を床に着けると頭が痺れるくらいの激しいキスをもらった。
周りの見知らぬ外人たちが歓声を上げる。
「勇吾って…ロマンティックだね。」
依冬の呟きが聞こえた。
確かに…こいつは凄いロマンティックだ…
「何で勇吾がここに居るの?」
カウンター席に座る勇吾の顔を覗きながら尋ねた。
「この前、シロのダンスを観に行った連中がさ、帰ってきてから興奮して言うんだよ。シロはエロかっこよくて凄いって…それ聞いたら会いたくなっちゃって来ちゃったの…あたし…来ちゃったの!」
そう言ってまたキスして抱きしめてくる。
周りの外人達が珍しそうに眺めて笑ってる。
「この人たちはなんなの?」
オレが言うと勇吾は、あぁ…と言って大きな声を出して言った。
「みんな~!俺のシロが来たぞ~~~!褒めて、煽てて、最高のショー、見せてもらえ~~~!!」
周りの外人がそれに応えてフォーーー!とか、ヒャーーー!とか叫ぶ。
やだ!怖い!
「みんな俺のダンサー友達だよ。悪戯してくるかもしれないから1人で近づいちゃダメだよ?」
危ない友達だな…
今日の貸し切りは勇吾が主催者なのか…
「ショーは2回。20:00と22:00に踊って。リクエストがあって、あいつらお前の鞭がみたいって言うんだよ…だから、どちらかでSMやってくれ。オレのリクエストはにゃんにゃんを入れる事と“勇ちゃんとエッチしたいお!”って言う事だ。」
ステージ前の2人掛けの席に移動して、今日のタイムテーブルの書かれた紙を見せながら勇吾が言った。
「分かった。ねぇ…いつ帰るの?」
オレは勇吾の腕を掴んで聞いた。
「ん?明後日。」
「わざわざ会いに来たの?」
「シロ…会いたかった。たまに依冬くんが動画をくれて。見るともっと会いたくなった…。もうお前から離れて生きていけないかも…」
勇吾がオレの手を握って頬にあてて頬擦りする。
掌に何度もキスしてまた頬擦りする。
「オレも……会いたかった。」
そう言って椅子から降りると、座ってる勇吾の傍に行き、抱きついて顔を埋めた。
勇吾はそんなオレを両手で抱きしめて頭に何度もキスを落とした。
勇吾の友達が英語で話しかけてくるから顔を上げて勇吾に聞いた。
「何て言ってんの?」
「あぁ…俺が…こんなにデレるの初めて見たって…シロにお前すげぇなって言ってる…」
耳を赤くして話す勇吾を見てオレまで赤面する。
「何だよ…そんな事か」
オレはそう言ってまた勇吾の胸に顔を埋めた。
あったかい…生きてる
「シロ…そろそろ」
後ろから支配人の声がする。
「そろそろ着替えないと…」
もうちょっとこうしてたいんだよ。
「シロ…行っといで」
勇吾に言われて顔を上げる。
優しく微笑んでキスをくれた…
甘くてのぼせる…
オレは勇吾から離れて、体の大きい勇吾の友達達を避けながらカウンター席に走って行き桜二に抱きついて言った。
「オレ、別にデレてねぇからっ!」
「ハイハイ、仕方ないよ、わざわざ13時間もかけて来てるからね、オレも鬼じゃないよ!何も言わないよ。嫉妬もしないよ!」
桜二がそう言ってオレの頭を撫でる。
オレは走って戻ると控え室に向かった。
楓はいない…お休みなんだ。
そうだよな…
オレは服を脱いでメイクを始めた。
SMか…板につきすぎて自分ではピンと来ないけど、すっごいオレの見た目とハマるんだろうな…
「オレは女王様じゃなくてバブちゃんなのに…」
心外だな…
ベースをいつもよりワントーン明るいものを首の鎖骨まで塗った。
頬に赤いチークをうっすら付ける。
異国の人相手だとこんな感じが良いかなと、なんとなく構想を練っていた。
アイラインを目尻に流して描く。
口紅はヌード感のあるグロスのついた赤。
次に衣装を選ぶ。
黒のボンテージが1番定番の女王様スタイル…
だけどオレはちょっとだけ外していくぜ。
裸にベストの様にベルトを装着する。このベルトを皮細工屋さんで特注したんだ!肌馴染みが良くて良いんだよ、やっぱりもともと生きてた物だから皮って馴染むとしっくりくる。
首に輪の付いたベルトのチョーカーを付ける。両手両足に同じベルトを付ける。桜二のブレスレットがはみ出してるけど、それは気にしない。
下着に黒い革のボクサーパンツを履いて、チンポジを直す。ガーターベルトを付ける。今回はストッキングは履かないから、代わりにベルトを太腿に巻いて留めガーターベルトに繋げた。鏡に映った自分の赤い髪に黒い革と白い肌がいやらしく見えて興奮する。やばい!キテる!
上にはオレの秘密兵器…ナガジュバーン。
リュックに入れっぱなしで良かった!
お前の力が必要だ!今こそ!今こそ!その封印を解いてやるぞ…!
オレはリュックから長襦袢を取り出して羽織り、帯を締めた。裾から足を出すと太腿の黒いベルトが見えてエロい…。襟元をグイっと引っ張り広げて胸元を露わにする。白い胸元に走る黒いベルトが見えてこれまた良い。
どんなにエロくったって、ダンサーの連中なんだから…カルチャーや芸術として捉えてくれるだろう?多分…
今、暴動が起きてもオレは知らない…
後ろの襟を少し引っ張り下げて空け、ウエスト部分をダボつかせ帯を長めに前に垂らす。裾の広がりがだらしなさといやらしさのギリギリのラインを意識して広げ、足を内側に前へ出して…手にはオレの友達、ゴツい鞭を持ってカーテンの前にスタンバイする。
桜二のブレスレットを指先で撫でる…
誰かオレで抜き始めたら大成功なのにな…
音楽が流れ始めカーテンが開く。
ステージに空な瞳でしなりしなりと歩いて行き、中央で後ろを向いて少し顔を傾けて流し目する。音楽に合わせて体を仰け反らせ、足を外側に曲げながら裾から出すと一気に店内のボルテージが上がった。
コレって万国共通なんだね!
封印を解かれたナガジュバーンを見た支配人が慌てる姿が目の端に見えたけど、気にしない。
「シロー!!やっぱりお前は最高だーーー!」
勇吾の声が耳に届く。
ありがとう。
お前ってば本当にオレが大好きだな…
正面を向いて足を広げながら膝を着いて片方の肩だけ長襦袢の襟元を落として腰を振る。
「シロ!シロ!クール!セクシー!ビューティー!アイラブユー!!」
勇吾の友達よ、落ち着いてくれたまえ…君たちが暴れるとステージが止まってしまうでは無いか…!
煩い奴らにお仕置きをしなくては!
オレは立ち上がって鞭を軽く払う様に振って先を伸ばすと、間髪入れずに床に1発鞭を入れた。
パッシィィィン!!
良いしなりと良い音…最高だ…!
鞭の音にビビった勇吾の友達達が静まる。
ウケる。
帯に鞭を差し、垂らしながらポールに近づいて、片手を伸ばして軽やかに高く飛び上がり、ポールの上の方をつかむ。もう片方の手を体に隠して、そのまま体を下から横、横から真上に持ち上げて足首でポールを掴んだ。その後体を起こして上に登り1度帯を揺らしてポールから離した。
体の角度を変えるたび、派手に動くたびに長襦袢から白い肌がスルリと見える。このチラリズム…万国共通なんだね、いちいち歓声が上がるから気持ちがいい。
ポールの上の方で体を反らし、帯を下に付くくらいまで外して落とす。仰け反って目視で確認しながら帯を振って、ポールとの位置をさり気なく調整する。そのまま足を振り上げて頭から反動に乗せてスピンする。帯が下の方でポールに巻き付いたのを確認すると下までゆっくり回って降りて行き、長襦袢の裾から膝を曲げながら足を出して床に着いてポールから離れる。オレがポールから離れると巻き付けた帯がピンと張る。そのタイミングで鞭を手に取り、帯が腰から外れる様にクルクル回る。
オレは”アーレーお代官様~!”を1人でやった。
外れた帯がハラリと床に落ちて、オレの長襦袢の前が丸見えになる。
体を隠す様に両手で長襦袢を抑える。
「シロ!シロ!お前ってば、最高だーーー!」
そこから一気に畳み掛ける様に、長襦袢の襟元を揺らして両肩を出し、前に足を広げながら膝まずいて床ファックする。
「ギャーーーー!」
大丈夫なの?その声…?
そのまま仰向けになって腰を突き上げてからねっとりと動かして喘ぐ。
誰かがステージに上がろうとして、それをまた誰かが押さえ込んだのが目の端に見えた。
体をうつ伏せにして膝立ちすると、目の前の勇吾を見ながら膝を広げ腰を振って喘いだ。両手を体に添わせて指先でなぞりながら腰を振る。
勇吾…そんな目で見るなよ…今、最高にエロくしてるのに…そんな愛しそうな…慈しむような目で見られたら、変な気持ちになってきちゃうだろ…
あ、気持ちよくなってきちゃった…
オレは回転しながら一気に立ち上がると気分を変える様に長襦袢を捨てた。
さぁ、チップをよこせ!
頑張ったオレは意気込んで振り返った。
しかしステージに仰向けに寝転がるのは勇吾のみ…
何で?勇吾さんデーなの?
そっと周りを見ると抑えきれない衝動を抱えた勇吾の友達ダンサーズがジッとこちらを見ている。
「シロー!今日はチップは俺からしか出ないよ~!だから俺だけに来て~~!!」
そう言いながら足をバタつかせる勇吾。
マジか……まぁいい
オレが勇吾の所に行くとステージに誰かが1枚チップを置いた。
へぇ…面白いことするね…
オレは勇吾の胸に足をそっと置いて、鞭を構えるとチップ目掛けてしならせた。
打たれた勢いでチップが舞うと拍手が起きて、また誰かがステージに上がろうとして引き摺り下ろされた。この距離だとポールには逃げられないな…何かあったら階段を登って外に逃げるしかないか…
そんなことを考えながら真下の勇吾に視線を移す。うっとりとドMの顔になってオレが置いた足を撫でる。
「勇ちゃん…ドMになったの?」
オレが笑って聞くと顔を赤くして否定した。
オレは勇吾の腰に跨ると腰を付けて彼の体に自分の体を合わせた。
「あぁ…シロこのまま抱きたい…!」
「あははは…それは出禁だな。」
オレは体を上げると勇吾の肩に手を置いて腕に滑らせて手を握った。そのまま勇吾の頭の上に持っていき顔を近づけてチップを咥えた。
「シロ…キスして…」
おねだりされて、オレはチップを口から離して勇吾にキスした。勇吾の腰が疼いてきたのでキスを外して、つないで手を離した。落としたチップをまた口で取ると、立ち上がってゆっくりとバク転しながら勇吾の上から退いた。
最後に鞭打ちにあったチップを拾いに行くと、また誰かがステージに上がろうとするから、オレは鞭を思い切り振った。
パッシィィィン!!
と鳴り響く音としなる鞭を正面から見てビビった暴漢…いや、勇吾の友達の誰かは、大人しくなって周りはオレの鞭捌きに拍手をくれた。
長襦袢の事件があったあの時も、鞭を打てば良かったのかな…?
オレはステージ中央でお辞儀をして1回目のショーは終わった。
メイクを落として半袖半ズボンになる。
店内に戻れる状況かエントランスから確認する。
「派手に興奮してたけど、冷めるのが早いからもう平気だよ。シロ…あれは使うのは危険だって言っただろ?」
支配人がそう言って怒った。
「危険な物に頼ってしまった!処分しよう…!」
オレはそう言ってケラケラ笑うと店内に戻った。
「シロ!スゴイネ!カワイイネ!クールネ!シュッシュッ!イイネ!」
片言で勇吾の友達がオレを褒め称えてくれる。
「センキューセンキュー!チップくれよ!ないの?なんだ…」
オレは勇吾の背中を撫でながら後ろを通り過ぎて、カウンターの桜二の元に行く。
「桜二、あれがナガジュバーンの効果だよ?見た?ねぇ、見た?すごいエッチでしょ?ねぇ?桜二も興奮した?」
桜二に抱きついて甘えながら聞くと、彼はコクリと頷いてオレの頬を撫でた。
「すごくいやらしくてエッチだったよ…」
それおんなじ意味とちゃうんかーい!と心の中で突っ込んで、オレはデレデレしながら桜二にキスした。早く長襦袢で桜二のエロいセックスしたい…
「今日は俺の日だぞ!桜ちゃんの日じゃないぞ!13時間もかけて会いに来たんだから特別扱いしろよ!シロ!」
勇吾が来てオレをバックハグして桜二から離す。
「勇吾は本当に丁寧だな…」
抱き上げられた時に感じた彼の力加減のうまさに脱帽する。フワッと体が浮く様な感覚に歩く練習で見せたリハビリの時のサポート力を思い出す。
相手に負担にならない様な力加減ができるのって凄いよな…ペアで踊ったらモテそうだ。
勇吾の友達はオレの鞭打ちに大変感動した様で、勇吾に通訳してもらいながら沢山褒めてもらった。
言葉は分からなくてもやっぱりダンサーだからか、表現力を評価してもらうと格段に嬉しかった。
「シロの鞭に打たれて心を入れ替えた…だって、絶対嘘だよ。あいつに1人で近づくなよ!」
勇吾がそう言ってステージに上がりかけた人を手で払って追い返した。
その様子を見た依冬がケロっとした顔で言う。
「もし何かあったら俺がいるから大丈夫だよ。」
お前は諸刃の剣だ…リーサルウェポンなんだよ…
「次は何踊るの?」
勇吾がオレの背中に覆いかぶさって聞いてくる。
実は何も考えてない…
「勇吾考えてよ、オレさっきので疲れた…」
肩に添えられた勇吾の手を握って甘える。
「全く!甘えん坊だな…もっと可愛くお願いしないとダメだ!」
オレは椅子を降りて勇吾の正面に回ると勇吾に抱きついて甘えながらお願いした。
「勇ちゃん、オレの為に考えて…オレが1番エロく見える構成考えて…ねぇ…お願い!」
勇吾はオレを見下ろして首を横に振った。
なんだよ、シビアだな!
今度は体をくねらせながら胸板に顔をすり寄せて言った。
「オレ…勇吾の構成で踊ってみたいの…オレの為に考えて!」
勇吾を見上げると、また首を横に振った。
もう面倒臭いな!
オレは勇吾の唇をペロリと舐めて舌をねじ込んで舌を絡めて舐める。
そのまま彼の頭に手を巻きつけて抱き寄せる。
勇吾がオレの腰を抱き寄せてくるから片足を上げてしがみつく。
オレのTシャツの下に手を滑らせて背中を撫でる。お前の手は相変わらず綺麗な動きをする。
キスを外しておでこをつける。荒い息がかかって熱くなる。トロけた目と痺れた舌。おでこを顔に滑らせて肩に落としながら言った。
「勇ちゃん…オレのお願い…何で聞いてくれないの…やだぁ…嫌いになっちゃう…ばかぁ!」
「あぁ…可愛い俺のシロ…俺に任せろ!」
そう言ってカウンター席に手を引っ張ってオレを戻した。
「にゃんにゃんと勇ちゃんとエッチしたいお!を入れる所はもう決まってるんだ。コンセプトがまだボヤけてるんだよなぁ、最初のが強すぎて…」
「ロリコン系はウケないよ。特に依冬はロリコン系嫌いだから!」
「何で?そんな事ないよ?」
そこはそのままでもいいのに…と心の中で突っ込んだら桜二が依冬に言ってるのを見て吹き出して笑った。桜二かわいい…!!
「やっぱり…シロと言えば…わがままバブちゃんだろう…」
勇吾がオレの顔を撫でながらしっとりと言った。
「考え直して」
すぐさま否定して一緒に考える。
「また勇吾と手繋ぎたい…」
オレがボソッと言うと勇吾はオレの方を向いて固まった。
「何?」
驚いて勇吾を見ると目がウルウルしてるから目を逸らした。
何で泣くんだよ…こいつの泣きポイント難しすぎる…
「俺と踊りたいんだな…分かった!シロは本当に勇ちゃんが大好きなんだな!全くしょうのない子だ…俺の事が大好きすぎて…全く…!まいったな、いや、まいったなぁ~!!」
オレの肩を抱いて引き寄せて頭にチュッチュッとキスする。
桜二と目が合ってオレを見る目に何故かゾクッと興奮した。
「じゃあ、コンセプトを決めるぞ!イケメンの俺とにゃんにゃんのシロだ!」
「考え直して」
「じゃあ…飼い主の俺と野良猫のにゃんにゃんのシロだ!」
「にゃんにゃんから一旦離れよう」
「…ん~、イケメンの俺と昔助けた猫が転生して可愛いシロになってにゃんにゃんだ。」
「お前大した事ねぇなっ!おい!もう、自分で考えた方が良い気がしてきた…もういい…ばか!」
オレはそう言ってプンプン怒ると控え室に向かった。なんだよ!全く!
ともだちにシェアしよう!