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第58話

「シロ~シロちゃん~」 鏡の前で構成を考えてると、勇吾が控え室に入ってきた。もう次のステージまで1時間を切ってる。 「もう勇吾はいい!全然真剣に考えてくれないからもういい!」 フン!と言って顔を背けると鉛筆を持って紙に書いた。 やる事…にゃんにゃん、勇ちゃんとエッチしたいお!勇吾と踊る… 勇吾がオレの後ろに座って、グイグイお尻を入れてくるから椅子から落ちそうになる。 「この椅子は小さいの!隣に座ってよ!ばか!」 オレが怒ると背中に顔を置いて腰に腕を巻いて抱きついて来る。全く! オレは勇吾を無視して頭の中で構想を練った。 「ん~シロ、かわいい…このまま2人きりになればいいのに…。そしたら俺はお前だけ愛してお前も俺だけを愛してくれるのに…」 2人だけに…2人…なんか無いかな…2人で… 「桜二を見ないで…俺だけ見ろよ…シロ。俺はお前しか見てないのに…誰にも渡したく無い…奪っちゃいたいよ…。お前が泣いて嫌がっても引き剥がしちゃおうかな…それが無理なら…いっその事……」 オレの腰を掴む手。胸元を撫でて首に滑らせる手。2つの手…2つの目…2つ… 「あっ…勇吾…なに…!」 勇吾はオレの首を上に向かせて喉仏を指で撫でる。 何してんだよ…もう オレの背中に顔を埋めて、オレの首を上げて喉仏を触り、Tシャツの中から反対の手が体を這って滑り上がってくる。 手の動きと指の動きが美しくて ゾクゾクする… 「勇吾…」 両手で首を締められてる… なんて美しい締め方だろう… 「ブルータス…お前もか…ふふ」 オレは勇吾に首を締められながら、シェイクスピアのジュリアスシーザーの一節を言った。 なんでかって? この台詞…かっこいいから… 「シロ…このまま最後まで締めてもいい?」 震えた怖い声を出す勇吾にゾクゾクする。 「良いよ…」 オレはそう言って鉛筆を手から離した。 コロコロコロ…と、鉛筆の転がる音がする。 グッと勇吾の手に力が入ってオレの首を文字通り締め上げる。 頭から血の気が引いていく…桜二のくれたブレスレットを撫でて目を瞑る。 兄ちゃん… バッと勇吾の手が離れて首がガクンと下に落ちる。頭に血が回りジワジワと暖かくなる… なんだ…やめたのか… オレの背中にしがみついて勇吾が泣く。 「ごめん…シロ…ごめん、俺どうかしてる…」 オレは勇吾の腕をさすって笑って言った。 「オレもどうかしてるから…気にすんな」 そのまま後ろの彼に体を預けてぼんやりする。 「ねぇ勇吾…?オレ、お前とまた手を繋いで踊りたいよ…。ねぇ…ずっと繋いだまま踊れると思う?」 背中の彼は泣いてばかりで答えない。 ため息をついて彼に吐き捨てる様に言った。 「勇吾は口程にも無いな…」 「出来るよ、俺とお前なら…」 オレはその答えを聞いて安心して、鉛筆をまた握って体を起こした。 「そうか…じゃあ具体的にどんな動きを入れるか考えようぜ。」 出た案をメモしていくと背中の彼は泣くのをやめた。なにがそんなに悲しいのか…オレには勇吾の泣くポイントが分からないよ… 片手に鉛筆を持ってメモしながら、反対の手で彼の腕をさすってやる。 勇吾は赤ちゃんだな… 「シロ、こうやって繋いでるのをこうやって繋ぎ直すんだよ…分かる?」 「ん…多分。」 「一緒に手首を返さないとどっちかが逆関節になるから、ちゃんと分かって。」 「んん…分かった。」 手をつなぎっぱなしで踊るって頭を使うの?さっきから説明されてるんだけど、全然よく分からない上に、勇吾がまるで脅す様にリスクを説明するから怖くなってくる。 「ポールはこんな感じで、ステージはこんな感じ…シロ、タイミング覚えた?」 「覚えた!」 「俺、教えないからな。」 こういうのを意地悪って言うんだよ… ずっと手を握っているからじんわり汗をかいてくる。握った手を見ながら勇吾に聞く。 「汗で滑ると思う?」 「多分…滑ると思う。」 2人で踊るって聞くとバレエを思い出す。 勇吾の顔を見ながら聞いた。 「バレエのパ・ド・ドゥでさ、女の人をリフトするのってやっぱり大変だと思う?」 「デブならね。」 もう一度、念のため、手首の話をする。 「こうやって繋ぎ直す?」 「…はぁ。それだともっと変になるだろ…単純にこうすれば良いだけなのに…シロはばかだからこんな簡単な事も出来ないのかな?」 「そこまで言わなくても良いのに…なんで勇吾怒ってんだよ…怖いのやだ!」 「危ないからだよ!ちゃんとやらないと怪我するから!やりたいんだろ?だったら真面目にやれ!」 怖いのは嫌いだ…怒った勇吾も嫌いだ… オレは俯きながら勇吾の手を何回も握り替える練習をした。 メイクをする為、鏡の前に座って手を離すとまた握られた。 「これじゃ顔描けない!」 「俺がやってやる…」 椅子に座って向かい合う様に座る。 オレの顔にベースをポンポンと塗って、アイラインをひいていく。手つきに迷いがなく上手だ。アイシャドウを塗ってチークをつける。 「ねぇ、衣装脱ぐ時、手を離さないと脱げないよ?」 オレがそう言うと、勇吾はオレの唇を見ながら言った。 「反対の手を握って衣装を脱げば良いだろ?」 「あぁ、そっか…」 赤い口紅を塗ってティッシュで押さえると勇吾は顔を近づけてキスして言った。 「かわいい…」 「じゃあ、今度は勇吾にオレがメイクしてやる。」 「オレはこのままで良い。」 「何でだよ~!」 オレの両手を握って向かい合うと椅子ごとオレに近づけて舌をこちらに向けて出してきた。 …お前は本当にこう言うの好きだな… オレはその舌に自分の舌を出して合わせた。 勇吾の顔が傾いて口の中に舌を入れてくるから、オレは反対に傾けて勇吾の舌を入れた。 控え室にクチュクチュといやらしく舌の絡まる音が響く。勇吾が自分のモノに繋いだ手を持っていくからオレも反対の繋いだ手を自分のモノに持っていく。 「勇吾…ん…きもちい…」 「はぁはぁ…シロ…かわいい…」 キスしながら2人で扱き合って勃起させていく。 勇吾が自分のモノを出して、繋いだ手の中にモノを入れて扱くから、オレも自分のモノを出して、同じ様にして扱く。オレのモノからトロトロした液が手について糸を引く。 勇吾が突然手を解いて、オレの股に顔を埋めて口の中にオレのモノを咥え始める。 「あはは!まただ!また勇吾の負けだ!この前も勇吾が負けて、今回も勇吾の負けだ!」 オレが笑ってるのに、勇吾は熱心にオレのモノを咥えて扱く。 「はぁはぁ…あっ…勇吾…したかったの?」 勇吾の髪を上げて聞くとオレの目を見てくる。 その目がすごくいやらしくてゾクゾクする。 すぐに極まって体が仰反る。 「あっ…あっ…!勇吾…んんぁっ…イッちゃう…!はぁはぁ…あぁっ…きもちい!勇吾!だめぇ…!!」 「お二人さん、そろそろ…あっ!」 支配人が声をかけに来たのに…情事を目撃して逃げていってしまった。 「勇吾っ…!始まるからっ…あっあっ!だめぇ!きもちい!あぁっああ!!…あっ…はぁはぁ…」 オレは体を震わせてイッてしまった…もう出番だ…急がないと…!! 震える手でパンツを直して、ズボンを直して、髪を直して勇吾と手を繋ぐ。 オレの顔をうっとりと眺める勇吾… さっき口でイカされて快感の余韻がまだ残り、ほのかに未だ体の芯が揺れてる。 トロンとした顔のオレに勇吾がまたキスしてくる。 頭がジンジンする… 音楽がなり始めてカーテンが開くと、何食わぬ顔でオレの手を引っ張ってステージへ行く。 何だっけ…まずなにするって話したっけ… 賢者タイムなのかぼんやりして頭が働かない。 遠くの桜二と目が合う。 オレを見て何があったのか察してるみたいにオレに手を振る。 「シロ…どこ見てんだよ!」 耳元で怒鳴られて我に帰る。 一気に構成を思い出して踊り始める。 お前が土壇場でイカせるから! 最初が遅れたじゃねぇか! クソ野郎! オレは勇吾と手を繋ぎながらポールに向かう。 チラッとこっちを見る余裕…何なんだよ… ダンサーの客はオレ達がどんなに危ない事してるのか分かるみたいにどよめく。 勇吾が片手を伸ばして飛ぶ。オレと繋いだ手が張る前にオレも飛んでポールを片手で掴んで足で止まる。 なんとか2人で飛び乗ったポール。オレは予想よりも低く掴まってしまった。 恋人つなぎに手を繋ぎ直す。 なんとかもっと上に行けないかな… 足を動かして登ろうとすると勇吾がグンと上に上げた。オレはそのままその勢いに乗っかって両足を上に持ち上げる。恋人つなぎにした手で勇吾がオレを支える。足がポールに着くとすぐに足首に絡めて体を起こし、勇吾よりも上に登る。勇吾は同じように片手で自分の体を上げて太腿でポールを掴んで上に登る。 絶対キツイのに平気な顔でやり切る彼に驚く。 そしてポールを太ももで挟みながら両手を繋いで一緒に回る。 楽しそうな彼の笑顔に見惚れて、素に戻り、この先の踊りを忘れる。 「シロ坊…俺に惚れたのか?」 勇吾にからかう様に言われて我に帰る。 こいつってやっぱり凄い… 両手で掴んでいた手を片方外すと、オレは勇吾の上の服を脱がして手をつなぎ変えて下に落とす。次に勇吾がオレの服を脱がして、手をつなぎ変えて下に落とした。 オレはポールを逆手で掴むと、足を上げて掴んだ手とポールの内側に入れて、足首を捻って掴み、そのまま体を捻りながら外側に体を向けて引き上げていき、膝裏でポールを挟み体を起こした。 ポールを掴んだ手を外して二の腕の裏にポールを添わせて腕で挟む。 片方の足をポールに絡めて固定しながらもう片方の太ももでポールを挟む。 下で勇吾はもっと早く態勢変えを終わっていてオレの様子を見ていた。勇吾の手がグイッと引っ張ってくれて勢いがつき、体を反らしたまま回る。 下で見てる観客が固唾を飲んで静まり返る。 見てて冷や冷やするんだろう… 危ないよな… ポールで踊ってる奴ならこれがどんなに危ないか分かるだろう…手を繋いで踊り続けるなんて、1人がヘマしたら2人とも落ちるか、落ちなかったとしても相手に身体的に大ダメージを与えるから。 繋いだ手で共同なイメージを抱かせつつ、この踊りはお互いの身体能力を信じてなければやろうと思わないだろうし、普通やらない…。 まるで手を繋いでフリークライミングしてる様な…イカれてる…完全にイカれてる。 勇吾はオレがヘマしないと思ってるのかな…既に何回か過剰に彼に負担をかけてるのに… それとも一緒に下に落ちていきたいのかな… 今度は勇吾がオレの高さまで足を使って登ってくる。 「シロ、どっか痛めてない?」 「勇吾…キスしたい」 「はは、お前って本当に可愛いな…」 そう言ってオレの頬を撫でると軽くキスした。 「ここからめっちゃ危ないから気合入れてね…じゃないと俺の肩が死ぬ。」 そう言うと、あははは!と声を出して彼は笑う。 オレは気合を入れてポールを掴む手とポールを挟む足に力を込めた。 繋いだ手を外側に伸ばして恋人つなぎにする。 ここの振り…可愛いな… でもここからがど根性だ… 勇吾が足を真上に伸ばして高くあげる。 早い…、ブレない!! すごく綺麗だ… 勇吾の体を今からオレが持ち上げます! 肘をゆっくり下げながら自分の方に引いて、勇吾の手がねじれない様にオレが肘を下に…下に… あああ!うおおおおおおっっ!! そこから一気に真上へ…… どぅおおおおおおっっ!! 押し上げろーーーーっ!!!! 汗が出る…顔に力が入る… 笑ってなきゃダメなのに…! 勇吾の足が…届いて…掴まった! あああ…あああ…腕がプルプルする… 上で逆さになった勇吾がオレに合図する。 オレは手を繋ぎ直して膝の裏をポールにかけて回る。ポールに体を近づけて真上を見ると、勇吾がオレを見てるから、オレはまたポールを掴んだ方の肘を伸ばして仰け反りながら回る。 勇吾がゆっくり降りてきてオレにキスするから、拍手喝采になる。 観せ方が上手い。さすがだ… どうかそのまま落ちてこないで… 多分お前はそんなヘマしないだろうけど、自分でやってみて分かった。 これは、危険だと! オレはゆっくり下に降りて勇吾と離れる。そのまま勇吾の体に隠れる場所でポールを掴んで両足をポールから離して回る。 勢いがつく様に足で掻いて回す。 回転を弱めて、勇吾の手の合図の後に爪先でポールを挟みながら手を恋人つなぎにする。引っ張り上げる勇吾の力とポールを踏ん張る力で勇吾の反対側に体を持ち上げて、すぐ片足をポールに絡めて固定しながら回る。 両手を掴んで恋人繋ぎして下までゆっくり回る。 体を起こして…肘を曲げて…見つめ合い恋人つなぎしながら…膝の裏と反対の足首だけで固定した状態…なんだ!これは!! もう明日は絶対筋肉痛だ!! キツイ!キツイ!キツすぎる! オレはもうヘトヘトだ… 誰が考えたんだ! こんな…手を繋いだままなんて… 誰が言い出したんだよーーーー!! 汗が滴り落ちる…息が上がる。 オレを見る勇吾の顔が優しく笑っててムカつく! 足が床につく。 下ろしたい。足、もう外して下ろしたい。 でも勇吾が良いって言うまで…耐える。 「シロおつかれ」 ゆっくり足を下ろして勇吾と向き合う… 片手を外してステージに戻りお辞儀すると、拍手喝采を浴びる。あっちを向いてお辞儀、こっちを向いてお辞儀…最後にまたお辞儀して、やり切った…自分の足が震えているのが見ても分かった。 足がもつれそうでさっさとカーテンの奥に退ける。 控え室に戻るとオレは膝から崩れ落ちて倒れた。 足が震える。背中が痛い、腕が死んだ… 「ハァハァ…やばい…ハァハァ…何で…ハァハァ…何であんなにキツイって…教えてくれなかったんだよっ!!ばかやろう!!」 ヘトヘトのオレを尻目にあはははは!と高笑いしてまだまだ余裕の勇吾は、椅子に腰掛けてオレをみてる。 ずっと繋いでいた手をやっと離す。 じっとりと濡れて蒸しあがってしまった… 「もうやらない…もうやらない!」 後悔先に立たず…オレは思い知った! 想像出来てもやっちゃいけない事があるって事を! オレの体を起こしてソファに寝かせると、横に腰掛けてオレの汗を拭いてくれた。 手がプルプルしてるのを見せる。 「勇吾が…勇吾がデブだから…手が死んだ…」 「あははは!お前って本当にすげぇな…やり切るんだもん。やっぱり俺のシロは違うな…」 足がプルプルしてるのも見せる。 「勇吾が…ちんたら降りるから足が死んだ…」 「うん…終わりたくなかったから…」 オレは早く下に着きたかったのに…変わってるよ、お前はドMだ… 呼吸が落ち着いて体の倦怠感が全体に広がる。 オレが押し上げた勇吾の手を持ち上げて手首を触る。 「痛くなかった?」 「…上手だったよ、シロ。100点満点だ。」 そう言ってオレにキスする。 「良かった…」 ポールに飛びつく時、失敗した…そのせいで勇吾はオレをかなり下から持ち上げないといけなかった…。体を反らして回る時怖がって体勢を変えるのに時間をかけすぎて止まってしまった…それも勇吾がフォローして回してくれた。 もしかしたら持ち上げた時も… 100点な訳ない… まだまだだ…足元にも及ばない。 勇吾はオレの指示により、オレのメイクを落として着替えを手伝ってくれた。 そのままおぶられて桜二の席に戻る。 勇吾の友達は拍手で迎えてくれて、大騒ぎする。 オレはヨロヨロと桜二の隣に座って抜け殻の様になった。 「シロ!みんなお前は可愛くてイカれててエロくてすげぇって言ってる!来年は海外からの客が増えるぞ!英語勉強しとけ!向こうで注目されたら俺のところに来て一緒に暮らそうな!」 「ダメだな、シロは家を買ったから…」 桜二がそう言ってオレの髪を撫でる。 「シロは貧乏だから家なんて買えないよ!桜ちゃん、嘘ならもっとマシな嘘つきなよ!」 オレは悲しい顔をして勇吾を見た。 そうか…お前の目にもオレは貧乏に映るのか… 「…本当に買ったの?」 「買っ……て貰った…」 えーーー!と叫ぶ勇吾に反応して勇吾の友達たちはフォーーー!と叫ぶ…狼の遠吠えみたいだ。 「しかも表参道だよ!俺たち3人で住むんだ!楽しみだね、シロ!」 依冬がそう言うと勇吾はフン!と言って友達の方に行ってしまった。 オレは桜二にもたれて、どこらへんが貧しそうに見えるのか聞いた。 もうすぐ12:00だ。終わったらとっとと帰ろう… 筋肉痛が楽になると言う飲み物の作り方を、可愛いお姉さんに片言の日本語で教えて貰ってメモしてる。 「バナナとか臭くて、やだなぁ…」 「シロ、フルーツ、カラダニイイヨ?」 「ん~分かった…」 「シロ、ヤダヤダ!」 勇吾は何をこの人たちに教えてんだろう… 「シロヤダヤダ!タマゴヤキヤダヤダ!」 桜二が顔を背けて背中で笑ってる…! 頭にくる! オレは勇吾のところに行って友達と話し終わるのを傍で待った。 「シロヤダヤダ?ヤダヤダ?」 夏子さんより背の高い女の人が話しかけてくる。 「やだじゃないよ…あんまり言うと無視するからな!」 オレが怒って言うと女の人はオレの頬にキスして頭を撫でて立ち去った。 ヤダヤダってなんだよ…! オレは痺れを切らして話途中の勇吾に声をかけた。 「ねぇ、勇吾」 「おお!俺のシロが来てくれた!ママから離れて来てくれた!みんな見てくれ!シロが親離れして俺のところに来てくれたぞーーー!」 「フォーーーーー!!」 やめろ、そのエフェクト使うな… 「勇吾…みんなヤダヤダとかタマゴヤキとか言ってくるのなんでなの?」 「それは…」 「オーー‼︎ シロ!ミラクルボーイ!アイガッチューウ!!」 突然体を抱えられて上に持ち上げられる。 下を見ると依冬より大きい男がオレを掴んで持ち上げてる…! 「怖い!やだ、勇吾!怖い!!やだぁ!!」 オレが騒ぐと大男が慌てて下に下ろした。 「シロ、ソーリー。ヤダヤダ、ソーリー」 勇吾が大男に怒って英語で何か言ってる。 オレは勇吾にもう一度聞く。 「なんでみんなヤダヤダって言うの!」 「シロがしょっちゅう言ってるから教えてやったんだよ~。シロは毎朝ママの作ったご飯を食べて、文句を言って、やだやだもっと食べたい!って駄々をこねるのがルーティンだって!」 オレは顔を赤くして勇吾の頭を引っ叩いた。 「そんな事教えなくても良いのに!ばか!」 勇吾がオレを前に抱いて1人1人友達に紹介していく。 英語で話すから何を言ってるか分からないけど、背中に感じる勇吾のあったかさが伝わって嫌じゃなかった…。 時折愛しそうに顔を寄せてキスされるのも嫌じゃなかった…。 「シロ?タマゴヤキ、ノーヤダヤダ!」 多分、卵焼きでやだやだ言うなって言われたんだろうな…目の前に顔を寄せて勇吾の友達がオレに行って来たから、オレはフン!と顔を逸らしてやった。 そんなオレを見てみんな笑う。 このまま勇吾と一緒にいられたら良いのにな… もうすぐ年を越すらしい… カウントダウンが始まった。 勇吾はオレを離す気がないらしい。 ギュッと抱きしめて離さない。 「あの絵、どこに飾ったの?」 後ろに顔を少し向けてオレが聞くと、小さい声で耳打ちして言ってオレの頭を傾けて首にキスした。 …あぁそうなんだ… オレもそうだったから、なんとなく勇吾がメソメソ泣いてた理由が分かって胸が苦しくなった。 桜二に会えて見る事が躊躇なく出来る様になった兄ちゃんの写真…それと同じだ。 見ると会いたくて、悲しくなるから、まだ飾れてない… 可哀想な勇吾…

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