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第8話

 幸いなことに4人兄弟の末っ子なんて無事に育ちさえすればもう上等という扱いで、祐樹が何をしていようとうるさく言われないのが救いだ。  上の3人がそれぞれ結婚して子供もいて、そういう意味では恵まれていると思う。結婚に対するプレッシャーなんてかけられたことがない。  ゲイであることに後ろめたさを感じることはあっても、結婚を考えずに済むのはありがたかった。 「…それで、孝弘とつき合うことにしたんだ。達樹が心配しなきゃいけないような相手じゃないよ」  5年前からのいきさつをじっと聞いていた達樹は、祐樹が長い話を終えると、そうかと一言いった。  しばらく黙り込んでいたが、顔を上げるとすこしほっとしたようにも見える表情で「よかったな」と言い添えた。 「ほんとに?」 「ああ。聞いてりゃわかるよ。そいつは本当にお前にとって大切な人なんだって。それに祐樹も大事にされてるんだって」 「うん。すごく大事にしてもらってる」 「ちょっと安心した。会えないのは残念だけどな。でも一時帰国とかあるだろ、そのときは紹介しろよ」 「もちろん紹介する。しばらく先になりそうだけど。きっと達樹と気が合うと思う」 「楽しみだな。でもまあ、祐樹にはいい機会だろ。2年間、大連でじっくりつき合ってみたらいい。いろいろ見えてくるだろうし」 「なんか怖い言い方しないで」  にやりと人のよくない笑い方をする達樹に、祐樹は唇をとがらせた。 「でもどうして急に、おれの恋人に会いたいなんて言い出したの?」  祐樹のいぶかしげな視線に、達樹はちょっと戸惑った顔をした。 「んー、なんていうかな。自分に子供が生まれるせいなのかもしれない。俺が結婚したのが28歳だったからかもしれない」  よくわからない理由に、祐樹は首をかしげた。 「お前が結婚できないのはもうわかってるけど、だれか傍にいてくれる人がいればいいのにとはずっと思ってたよ。でも海外勤務だし、そういう相手を探すのは難しいのかなって気もしてた」  達樹にそんなことを心配されていたとは知らなくて、祐樹はかなり驚いた。

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