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第3話
まだ留学生だった95年に3人で立ち上げた櫻花貿易公司はじょじょに売り上げを伸ばし、人脈とチャンスに恵まれて、上海と北京で民芸品を置く店舗を持たないかという話が出て、去年の秋に本格化した。
取り扱っている商品の質のよさを認められたという意味では喜んだが、店舗経営は初めてということもあって、その打ち合わせや工場との交渉、商品の仕入れなどで3人は中国各地を飛び回って準備する羽目になった。
店については検討した結果、商品販売だけではなくカフェ兼物品販売というスタイルに決定した。今後の外食産業の伸びを考慮した結果だった。
現在の中国には、まだ世界規模のコーヒーチェーン店は進出していないし、街中でいわゆるカフェや喫茶店のようなちょっとお茶を飲んでケーキを食べて休憩するというタイプの店がとても少ないのだ。
外資系ファーストフードのマクドナルドやケンタッキーはそれなりの店舗数があるが、カフェという存在ではなかった。ホテルのカフェにいたっては値段が高いだけで、まともなコーヒーを飲めることはあまりない。
外食産業はこのさきも成長していくのが目に見えていたし、コーヒー文化が根付いていけばゆくゆくは中国人のカフェ利用も増えてくるだろうという考えから、店舗つくりは進んでいった。
そして、その1号店が先月、上海でオープンしたのだ。
上海店は外国人観光客向けの店造りになっているのだが、滑り出しは順調のようだ。
中国みやげなどどこの観光地でも売っているが、商品に妥協しないぞぞむが買い付けてくる商品はそこらの粗悪品ではない。
きちんと技術があって手間をかけた手工芸品がメインで、しかも現地の工場と直接交渉して仕入れているので品質も価格も折り紙つきだ。
流通が整っていない中国では地方の特産品は、直接現地に行かなければなかなか手に入らない。しかも質のいいものとなるとさらに難しくなる。
それが手に入るとあって上海店はかなり話題になったらしく、外国人観光客だけでなく、上海周辺の富裕層がインテリアとして買いつけているらしい。
業者からも引き合いが来ているとぞぞむがメールしてきたのは2週間前のことだ。早速、増産体制を整えにぞぞむは中国各地の提携工場を飛び回っている。
そして一週間後にはここ北京店がオープンする。
その最終チェックにレオンがやってきたというわけだった。
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