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第6話

 孝弘が祐樹にふられたとき、支えたのはこのふたりだった。  精神的にかなり落ちこんで、かろうじて授業には出ていたものの、日常のことには投げやりになっていた孝弘を食事に誘い、寮にこもろうとする孝弘に話しかけては部屋から連れ出した。  あの時期、ぞぞむとレオンがいなかったら、孝弘は立ち直るのにもっと時間がかかっただろう。そんなわけで、孝弘はふたりには頭が上がらないところがある。 「連絡、取ってんだろ?」 「まあね。仕事で毎日、電話してるよ」 「そりゃなによりだ」 「ところで、祐樹さんにはもう話はしたの?」 「いや、まだなにも。祐樹が北京に来たら、ひとまず店に連れていこうかな、と思ってるだけ。急ぐ話じゃないから、いずれ機会をみて話そうかと思ってるけど。……でもどうだろうな」 「なにが?」 「祐樹はいまは大連のプロジェクトのことで頭いっぱいだと思うし、俺の話を聞いてもどう思うか、予想がつかないんだ」 「そうなんだ。…祐樹さんはじぶんの仕事が好きなんだよね?」 「訊いたことはないけど、そうだと思うよ。本社で上司の部長に訊いてみたら、祐樹の社内評価はかなり高いし、今回のプロジェクトではサブマネ扱いだし、大連で結果出してこのままいけばかなりいいコースに乗るんだと思う」 「出世頭ってわけだ。この規模の企業で出世できるとなれば、うちみたいな零細企業に引き抜くのはもったいないかもな」  ぞぞむの冷静な意見に、孝弘も同意する。  入社するだけでも大変な有名企業で結果を出して評価されていて、出世のチャンスを与えられている。大連での評価次第で祐樹は間違いなく出世コースに乗るだろう。  もちろん孝弘だって結果を出す気でこのプロジェクトに入っているわけなのだが。孝弘と組める仕事だと、祐樹が張り切っているのも知っている。  孝弘だって、こんな大企業で専属として大型プロジェクトに関わるのは初めてだから、この仕事は楽しみだし力も入れている。  じぶんにとっていい経験になるだろうし、絶対に成功させるつもりだ。

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