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第7話

「そうなんだよな。だからまあ、実際の店を見てもらって、俺からもう少しうちの会社のことを詳しく知ってもらって、話はそれからかな、と」 「うちの会社を知って、それでも祐樹さんがいまの仕事を続けたいって言ったら?」 「それならそれで、仕方ないと思ってるよ」  じぶんはその道を選ばないけれど、祐樹がそこから降りたくないといえば、無理に道を変えさせる気は孝弘にはなかった。  長いつき合いをしていくつもりだから、そういう無理はしたくないし、させたくない。お互い社会人で仕事にはプライドを持っている。  フリーで稼げるじぶんが動けばいいことだ。大連のプロジェクトが終わって、祐樹の任地がどこになったとしても、自由に動けるじぶんが会いに行けばいい。  孝弘が広州で見かけた適当な通訳が祐樹のそばにいるのが許せなかったように、祐樹には祐樹の仕事に対するプライドがあるだろう。  それを曲げさせてまでこちらに引きこむつもりはなかった。  そんなことをしなくても一緒に生きる方法はあるはずだし、より柔軟に動けるのは孝弘だろうから、そうすることに抵抗はない。  もちろん本音をいえば一緒に暮らしたいと思うが、状況的に考えてそれは無理だろう。大連ではたぶん近距離で暮らせるだろうが、祐樹の立場を考えれば一緒に暮らすのはリスクが大きすぎる。  留学生なら通る滞在費削減のためのルームシェアという言い訳は通らないし、駐在員社会は狭い。どこでどんな噂が立つか知れたものではない。 「そうなんだ。…うん、そうだよね」  レオンはちょっと不満そうな顔で、それでももっともだと納得したようだ。 「ただな、なんで俺が祐樹を引き抜こうと思ったかっていうと、祐樹は昨年1年間は東京勤務になってるけど、その原因はストレスによる体調不良ってことで、本人希望による一時帰国だったって言うんだ」 「つまり不調を来すほど仕事上のストレスがあるってこと? …まあ、そうだろうね、中国人相手に毎日やりあってるんだもんね」 「それで、孝弘はどうするつもりなんだ?」 「そんなにもストレスが大きいなら、うちに来るのもありなのかなって思ったりもするけど、どうだろうな? うちの仕事が祐樹に合うか、正直俺もわかってないんだ」  櫻花貿易会社のメイン事業は中国雑貨の卸販売だ。アクセサリーから日用品まで、主に日本の雑貨店に対して販売しているが、中国国内や香港からの注文にも対応している。

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