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第9話
「うん、きっと人気出るよね。まずは店長さんとかよくない? 現場スタッフまとめてもらって、エリアマネジャーとかやってくれる人が欲しいよね」
「接客ねぇ。祐樹の顔でにっこりされたら客は喜ぶだろうけど、俺がうれしくないかな」
孝弘の言い分にレオンとぞぞむが吹きだした。
「ほんと、祐樹さんにベタぼれなんだねー」
「うわ、孝弘がそんなこと言うのか。すげーな」
うるさいよ、と孝弘は不機嫌な顔を隠さない。
仕事だったら仕方ないと思うが、やっぱり嫌なものは嫌だ。
でもおかしなもので、祐樹をだれにも見せずに隠しておきたい一方で、俺の恋人だと自慢してまわりたい気持ちもある。
「それはさておき、確かに人材育成は必要だけどな」
今回の新規出店にともなって、上海でも北京でも新しくカフェや販売スタッフを数名雇っている。
上海店はぞぞむの友人でホテル勤務していた日本人を引き抜いて店長にしており、北京店では留学時代の中国人の友人を店長に決めていた。
今後はスタッフを指導育成して、管理できる人材が必要になってくる。
「店舗は今後も増やしていく方向でいるから、スタッフもどんどん増えるし、そうなってくるといずれしっかりしたマネージャーが必要になるよね。将来的にそういうのはどう?」
今の櫻花公司には管理部門がない。経理的な面はレオンがしっかり管理しているが、それぞれがじぶんのやりたいように動いて仕事をしてきた。今まではそれでよかった。
でも今後はそういうわけにはいかなくなる。
「直接の接客はしたことないと思うけど、広州や深圳時代に中国人スタッフをマネジメントしてたはずだからマネジメント経験はあるはず。でも、どうだろうな。それがストレスの元だったのかもしれないし。まあ状況が違うからいけるかもな」
「何でもできるだろ、やる気さえあれば。だいたいが仕事できる人みたいだし、仕入れでも商品開発でも販路開拓でも接客でも、それこそ事務的な仕事でも何かしらやれるだろ」
櫻花貿易公司はそもそもちいさい会社だし、こだわらなければしたいことができる。そうなると問題は結局、祐樹が転職する気があるかどうか、の一点にかかってくる。
「まあそうだな。いずれ祐樹に話をしてみてからだな」
来るなら歓迎するという意見に孝弘はほっとして、そう締めくくった。
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