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第12話

「なら俺と組んで、会社やろーぜ。絶対退屈しないから。じつはレオンからOKの返事はもうもらってる」  レオンはすでに香港に帰国してしまっているが、前もって話をつけてあったらしい。  香港のアッパークラスの出身だが、孝弘とは2年間、学生寮の狭い部屋で一緒に暮らした仲だから、金銭に関して彼がシビアなことは知っている。 「へえ、レオンが」  明るく素直な性格で、でも上昇志向の強いしっかり者だ。儲け話に敏感な香港人のレオンが乗るというなら、けっこう勝算があると見込んだのか。  熱々の串焼きを頬張りながら考えてみた。  日本企業に就職してスーツを着て仕事をするじぶんと、ぞぞむのいう商品の買付や交渉をしているじぶんと。どちらがより、やりたいことなのか。  ぞぞむの会社は成功すれば大化けする可能性があるし、もし失敗しても、悪い経験にはならないだろう。  これから経済発展していくのが確実な中国での起業は、留学生の就職として悪い選択肢ではないように思えた。  じぶんが起業するなんていままで考えたこともなかったが、背負うものが何もない今なら、そういうチャレンジもいいかもしれない。商売上手な中国人を相手に、じぶんたちがどこまでやれるのか、試してみたい気持ちもある。  何よりおもしろそうだと、単純にそう思った。 「やってみようかな」  それほど深く考えることもなく、言葉がこぼれていた。 「よっしゃ。じゃ、乾杯しようぜ」  それで決まりだった。  起業はほんの5分で決定した。  なんとも気楽な始まりだったが、それが3年経って頑張っているうちに、会社はそれなりの形になりつつある。  2年後、孝弘が戻るとき、どんな体制ができているか楽しみだと思う。そのとき祐樹は一緒に来てくれるだろうか。  無理強いするつもりはこれっぽっちもないが、もし一緒に仕事ができたら、それはそれで楽しいだろう。

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