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(07) 再びフェス

次の日。 オレは、ミユさんの姿でおよそ女性しか入らなそうな、もとい、入れなさそうなファッションビルにいた。 周りは、高校生ぐらいから大学生ほどまでの10代から20代の女性ばかり。 居心地の悪いことこの上ない。 (ミユさん、やっぱり止めにしない?) オレは怖気付いてそう言うのだけど、ミユさんの耳には全く届いていない様子。 いくつかの店舗を巡り、 「ここ! このお店、大人っぽい下着扱っているんだ。コスも扱っているから過激なものあるのよ」 と、水を得た魚である。 オレは、ため息を付いて身を潜めた。 お店の構えは、一見普通のランジェリーショップなのだが、奥には実用性のほぼ無いセクシーな物が取り揃えられていた。 「キャー! 可愛い!」 ミユさんの興奮が伝わってくる。 オレは、ミユさんに声をかけた。 (ミユさんは女性なんだからそんなに興奮する事ないんじゃない?) 「え? 何言ってるの、和希さん? 可愛いの見たらテンション上がるでしょ? 普通」 (そうなの?) 「当たり前でしょ? それに、このお店にずっと来たかったんだから、あたし。高校生の時は流石に入れなかったし、ああ、生きててよかった!」 (なるほどね。生きてて良かったね) 「うん! ああ、あった! オーバック! これこれ」 オレのボケ殺しのツッコミにもまるで動じないミユさん。 嬉々としてエッチな下着を漁りまくる。 きっと、自分が身につけるのではないと言うのもこの状況を気楽に楽しめる要因なのだろう。 ミユさんは、手にした品を広げながら言った。 「ねぇ、和希さん。これなんかどう? お兄ちゃんに似合うと思うけど」 それは、お尻の中央部が丸出しになったパンツと、乳首の部分がわざわざ丸見えになった紐のブラ。 オレは盛大に吹き出した。 (ぶはっ……さすがにエッチ過ぎるんじゃ……) 「こんなの普通よ! でも、和希さんが嫌だって言うのなら違うのにするけど……」 オレは、羞恥心を押し殺して言った。 (……いや、待って、ミユさん。それ最高に好み。先輩に是非着せたい……) 「でしょ、でしょ? 和希さんならそう言ってくれると思った!」 オレの言葉にミユさんははしゃぎだす。 オレの心の中のペニスは既にフル勃起状態。 ミユさんは、顔を赤くして言った。 「……って、和希さん、興奮し過ぎ! エッチな気分があたしにまで伝染してくるから! 止めてよ! あー! もう!」 (ごめん……はぁ、はぁ、でも先輩がこれを着るところを想像すると……あー、先輩! 最高に美しいです!) ミユさんは、大笑いをした。 「あははは! よし! あとは、セクシーなガーターベルトにストッキングってところね。ヒールとかもいる? さぁ、和希さん、ありのままに行きましょう!」 (はい!) オレの脳はすっかりエロに侵食され、欲望のままにそう答えていた。 再びフェス会場へやって来た。 ミユさんは、キョロキョロして会場を見回す。 「……カエデは、いなさそうね……」 ミユさんは、そそくさとミユさん推しのメープル先生のブースに移動した。 お目当ての本は、売り切れを懸念していたのだけど、辛うじて残っていた。 (よかったね。ミユさん。今日は買えて) 「ほくほくよ! あー、帰って読むのが楽しみ!」 ミユさんは戦利品を宝物のように自分の胸に押し当てた。 今度は、ミユさんの超絶ウキウキがオレに伝わってくる。 (ミユさんが喜んでくれて、オレも嬉しいよ) 「ありがとう! そうだ、和希さん、この余韻をもっともっと浸るためにカフェにでも寄って帰らない?」 オレは二つ返事で答えた。 (いいねぇ! ミユさんが行きたいお店に行こうよ) 「やった! あたしの高校時代のご用達のカフェがあるんだ! 久しぶりに行きたいなっと思っていて」 ミユさんは、こっちこっちと足取り軽く目的地へ向かった。 カフェに到着した。 そこは、ピンク色をベースカラーとした『kawaii』を前面に押し出したお店。 クレープやケーキの種類が豊富で、マカロンがお勧めメニューらしい。 という事で、当然ながらお客さんは若い女の子ばかり。 きゃぴきゃぴとした雰囲気で店内は充満している。 オレは、はぁ、とため息をついた。 (やっぱり、こうなったか……) 「何々? どうしたの、和希さん。元気ないよ。あっ、そうだ! パンケーキ食べよう! 絶品なんだ!」 (もう、どうにでもして……) ミユさんは、嬉しそうに注文をした。 一通りの注文の品は食べ終わり、カフェラテを口に運ぶミユさん。 「あー、美味しかった。やっぱり、最高だったわ」 ミユさんは、満足そうにお腹に手を当てて言った。 オレも味覚を共有できる訳で、確かにミユさんの言う通り絶品だった。 (……確かに美味しかったね) 「でしょ? 今度、お兄ちゃんとデートで来てみれば?」 (来れる訳ないじゃん。先輩だって嫌がるよ) 「そっかなぁ? 意外と、お兄ちゃん平気だと思うけど……」 オレは店内を見回した。 ちょうどその時、若い学生風のカップルが入店してきた。 常連のようで、彼氏の方もこの雰囲気にまったく動じていないようだ。 まぁ、カップルなら有かもしれない。 普通のカップルなら……ね。 オレは、ミユさんに言った。 (ミユさん、オレと先輩の場合、男二人だよ? それこそ浮きまくりだって。他のお客さんだって嫌がるよ) 「それよ! 逆に男同士のラブラブを見せつければいいのよ! 間違いなく目の保養だし、みんなウエルカムだと思うな。ああぁ、いいわぁ。最高!」 妄想でいつもの通りうっとり顔になるミユさん。 オレは、どうツッコミを入れようか考えていると、後ろから声が割り込んできた。 「確かに最高ね。BLを見守りながらスイーツを堪能できるなんて」 「でしょ?」 ミユさんは、振り向いて声の主を確認すると驚きのあまり固まった。 その人物は、ミユさんの肩に手を置いて言った。 「捕まえたわ、ミユ。さぁ、話を聞かせてもらえるかしら?」 同級生のカエデさんは、にやりとして言った。

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