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(12) 快楽の先に

先輩は、これでいいか? と床に立ったまま上半身をベッドに突っ伏し、股を開いてお尻をプリっと上げた。 振り返り、オレの方へ熱い視線を向けて来る。 欲しくて欲しくて堪らない。 そんな目だ。 オレはそんな先輩の表情に胸をときめきかせながらも、目の前の光景に息を呑んだ。 美しい……。 男の肉体をギュッと縛るかのように張り巡らせられた黒い紐。 首にはチョーカー、肩から背中にはブラジャー、腰にはガーターベルト。 それらが体中を拘束している。 そして、丸く円を描いて開いたパンティから覗くのは、桃のような果樹。 その中央には可憐な花が咲き、オレに食されるのを今か今かと待ちわびている。 「先輩、綺麗です……」 オレがそういうと、先輩はじれったそうに手を後ろに回してオレの勃起したペニスを掴んだ。 「いいから、ぶっ込んで来いよ! ほら、早く!」 「ふふふ、分かりましたよ、先輩!」 オレは、先輩の腰をギュッと掴むとペニスの先をあてがった。 先輩の、うっ、うっ、という喘ぎ声が上がる。 オレは、ガンガンと力任せで突いていく。 奥に当たると、先輩は体をビクビクと震わせ、ひときわ大きい快楽の叫び声を上げた。 「うっ、はぁあああっ……」 もういった……のかな? きっと小さなメスイキを繰り返し、最後に超絶な快感を迎えるパターン。 だから先輩は、オレの名前を呼びながら、もっともっと、とせがむのだ。 ぬっちゃ、ぬっちゃとピストンの度に擦れる音。 トロトロになった先輩の肉壺は、オレのペニスに吸い付いて離そうとしない。 先輩の勃起したペニスは後ろ向きに折られ、小さなメスイキのたびに亀頭の先からは透明な汁が滴り落ち、それはいつしか、シーツに大きなシミを作り床に水溜りを作った。 オレは、先輩の汗ばんだ背中に覆い被さる。 先輩は快楽に溺れながらも顔を横に向け、オレの突き出した唇に唇を合わせた。 オレはバカだ。 こんなに先輩はオレを求めているのに。 そんな先輩を疑うなんて。 「うっ、うっ、すごいぞ、和希。もっと、もっと、いかせてくれ」 「はい! はぁ、はぁ、先輩!」 オレは、先輩の腰をギュッと掴み、腰の振りを激しくさせた。 先輩は、短く、あっ、あっと喘ぎながら小刻みに痙攣した。 「はぁうっ……はぁああぁ……」 順調にいきまくっている。 白眼を向いてヨダレを垂らす先輩。 オレは、先輩がいくたびに充足感を得ていた。 そして、決意を新たにする。 さらに早く。もっと早く。 大好きな先輩が最高に気持ちよくなってもらうために……。 腰をガンガンに振り、先輩の体を力の限り攻め続ける。 先輩、オレ、これからもずっと先輩を満足させ続けます。 それがオレに出来る愛の全てなのだから……。 オレは腰の突き上げを激しくさせた。 先輩の悲鳴とも言える叫び声。 「はぁあああ……すごい、和希。あっ、はぁああん……お前のペニスは、なんて素晴らしいんだ。さぁ、奥に出してくれ! たくさん、お前の精子を俺の中にぶちまけてくれ!」 「はい、先輩!」 オレは腰を目一杯突き出し、先輩のお尻にピタッと密着させた。 オレのペニスは、グニュグニュとアナルの奥底に潜り込み、一気に先輩の一番弱い性感帯に触れた。 亀頭に激しい痙攣が伝わる。 「はうっあぁあぁぁ……いくっ、いくっ」 先輩は、快楽の声を上げ、よだれをダラダラと垂らした。 体は弓なりに反り、ブルブルと震える。 最後の絶頂が間近な兆候。 次で最後……かな? それにしても、先輩の中ってどうしてこんなに気持ちがいいのだろう。 何度いってもオレのペニスをギュっと咥え込み決して離さない。 そして、肉壁でオレのペニスを締め付け、精子を搾り取ろうとうごめく。 オレは、猛烈な射精の衝動に耐えながら唇を噛み締めた。 絶対に先輩を最高に気持ちよくさせる。 幸せにするんだ。 オレは目を見開き、渾身の突き上げをした。 「うぉー!」 パーン!っと体がぶつかる音がした。 すると、先輩はこれまでにない程大きな痙攣をし、体を硬直させた。 雄叫びが耳に入る。 「はあぁぁ、あーっ!」 それは先輩の絶頂の声。 オレはそれを確認して目を閉じた。 オレもギリギリ耐えていた射精衝動は限界を迎える。 「良かった、先輩……オレもいきます……あっ、あああぁっ……い、いくーっ!」 そのまま先輩を追うように絶頂を迎えた。 薄れゆく意識の中で、先輩の中へ次々と精子が吐き出されていくのを心地よく感じていた。 ベッドの縁に並んで座った。 先輩は、オレの前髪をすくいながら言った。 「……ったく、和希は変態だな。こんな趣味があったなんて」 オレは、少しむくれながら、上目遣いに先輩を見た。 「……いいじゃないですか!」 「まぁ、いいけどよ……」 目は笑っている。 先輩だって、いつもより感じていたのに、と喉まで出かかっていた言葉をグッと堪えた。 「ところで、先輩……」 先輩は、なんだ? とオレの顔を見た。 「変態と言えば、先輩だって変態じゃないですか? こんなディルドまで買って」 「だ、だから、それはだな……」 オレの指摘にあからさまに動揺する先輩。 うしし……。 オレはほくそ笑む。 そして、悪戯心が頭をもたげる。 「先輩、ところでこのディルド、どこで手に入れたんです?」 澄ました顔でオレは尋ねた。 先輩は、取り乱して目を白黒させた。 「えっ、えっと……」 オレの追求は止まらない。 先輩をいじめる、またとない絶好のチャンス。 「ネットじゃ無理っすよね? 宅急便をオレが受け取ってしまうかも知れなかったですし」 「うっ……」 「まさか、自らアダルトショップへ?」 「ううっ……」 「図星ですね? でも、休日はオレと一緒に過ごしてますし……もしかして、仕事中ですか? うわー、いやらしいです、先輩」 先輩は汗びっしょりで口をパクパクさせた。 やばい、焦った先輩めちゃくちゃ可愛い……。 オレは抱きつきたい衝動を抑え言葉を続けた。 「それで、どんな風に買ったんです? きっと、オレのに似ているのを選んだんですよね?」 「そ、それは……」 捲し立てるオレの言葉に先輩は小さくなった。 「店主は先輩が自分のアナルに挿すって察してたんじゃないですか? 変態のお客さんだって」 「ば、バカ! いいんだよ! 俺は!」 ついに、先輩は開き直った。 顔を真っ赤にしてプイッとそっぽを向いた。 超絶可愛い、恥ずかしがる先輩。 オレは、萌えに萌えて、プルプル震えるのを必死に堪えた。 先輩は、そんなオレの様子を伺うように薄目を開けた。 一瞬、目が合った。 もう我慢出来ない。 オレはついに吹き出した。 「ぷっ、プププ、あはははは。冗談ですよ先輩!」 「あはははは、ったく! 和希は!」 先輩は、オレの肩をガバッと組んだ。 そして二人は、じゃれながら大笑いをした。 そのままゴロっとベッドに横になり、戯れるようななキスを愉しむ。 優しい時間がゆったりと流れていく。 先輩の唇に触れているだけで心が休まる。 ずっとこうしていたい。 オレは、そんなまどろみの中にいた。 オレは、ふと声に出して言った。 「オレ、先輩に謝らないと……」 「ん? 何をだ?」 先輩は、ポーッとした表情でオレを見つめる。 頭が働いていない、そんな感じだ。 少ししてから目を見開いた。 「ああ、俺の浮気を疑った事か?」 「それもあります。でも、一番は、先輩が遠慮しているのを見極められなかった事です。オレの不甲斐なさがいけないんです……」 先輩は、無言のままオレの言葉を待っている。 オレは顔を天井に向け、手を真っ直ぐに伸ばした。 「オレは先輩の事をよく知っていると自惚れていました。でも、オレは先輩の事を何一つ知らなかった」 そうだ。 先輩の過去を知ったのだって、つい最近の事。 ミユさんが話してくれなければ知ろうとさえ思わなかった。 オレは手を伸ばしたまま握り拳を作った。 「オレ、もっともっと先輩の事を知って、先輩が安心して甘えられるでっかい男になりたいんです」 ミユさんの話を思い出す。 先輩は、きっとミユさんのお父さんのような頼れる男を求めている。 オレはそんな存在になれるだろうか? いや、ならなくてはいけない。 オレは拳を胸に当てた。 「今はまだ色々と不満もあるかもですが、オレは誓います。先輩の事をきっと……」 オレはそこまで言って、先輩が妙に静かなのに気づいた。 「せっ、先輩?」 慌てて先輩の顔を覗き込むと、スヤスヤと寝息を立てていた。 「ね、寝てる……」 オレは、はぁ、と溜め息をついた。 せっかくの決意表明が空振り終わってしまった。 でも、何という安らかな寝顔。 時折、口をモゴモゴして何やら寝言を口ずさむ。 何とも幸せそうな表情。 「出張で疲れていたんですね……しょうがないです。今はゆっくり休んで下さい……」 オレは先輩の唇にそっと唇を押し当てた。

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