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第3話 彼の行方

「へえ、じゃあもしかして、中学は新弥刀中?」 「はい。でも親父の仕事の関係で、高校は北海道でした。大学進学で東京に戻ってきましたが、都心に近かったし……この辺りに帰ってくるのは本当に久しぶりです」  話しながらも桐谷の心はひどく痛んだ。思い出の中の彼の涙が浮かんで。 『先輩、やだ。そんなに遠くへ行っちゃうなんて、やだ……!』  俊……。  物思いに沈む桐谷に気づくことなく、秋川がその愛嬌のある顔をほころばせる。 「いやあ、実はオレも新弥刀中出身なんだよ。桐谷くんの先輩ってわけだな」 「秋川さんはずっとこっちなんですか?」 「ああ。大学も実家から通えるところだったし、警察に入ってからもずっとここだよ」 「そうですか……」  あの事件が起きたころ、秋川さんは三十代の前半……もしかしたら……。 「秋川さん、十三年前の、五人家族のうち四人が銃で撃たれて死亡し、一人が重傷を負った事件って憶えてますか?」  桐谷の突然の問いかけに、秋川は一瞬きょとんとしてから、大きくうなずいた。 「勿論。一般市民が銃殺されるなんて事件が、この平和な町で起きたんだからな。当時はオレたちも不眠不休で捜査したよ。……結局、犯人はまだ見つかっていないがね」   くやしさを滲ませる。 「一人生き残った少年のことなんですが」 「ああ。当時中学三年生だった安西俊くんのことか……」  そう言ってなぜか秋川は表情を曇らせた。 「秋川さん?」 「うん。その生き残った俊くんなんだが、ここ数年、うちの署では注意人物のリストにあげられていてね」 「……どういうことですか?」  恵介は戸惑いを覚えた。

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